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第54話『ミスリル鉱山の攻略』

 あれから二日後。俺たちはミスリル鉱山にまで辿り着いた。鉱山の入り口には【ハイオーク】の群れが蔓延っていた。


 俺たちは鉱山へ突入する前に今度の方針を話し合うことにした。


「それじゃあ。道中の雑魚は俺と舞花でなんとかして、レビアは魔法札を温存。ミスリルドラゴン戦では短期決戦で、魔法札と奥義や魔法の集中砲火で一気に仕留めるそれでいいな?」


「ええ。アタシはそれで問題ないわ! レビアは?」


「うん。わたしもそれで正解だと思う。道中はどうしても二人の足手纏いになるからね」


 俺はレビアの自分への卑下を否定した。


「そんなことないよ。レビアは充分頑張ってくれている。それに君はボス戦の切り札なんだ。もっと自分に自信持てよ!」


 レビアの顔はぱあっと明るくなった。


「そうだね。ありがとう。やっぱりルシフは優しいね!」


 そこで舞花の奴が急に茶化してきた。


「ふぅん。ずいぶんと女を誑し込む腕前が上がったようね。あんなに女性に免疫のない非モテの陰キャだったのに!」


「うっさい! お前はいちいち一言余計なんだよ! そんなだから彼氏できないんだぞ?」


「はぁ? アタシの気持ちも知らないで好き勝手言わないでよね! どこかの誰かさんに惚れたせいで、全部の男をお断りしていただけよ!」


「だったらその何処かの誰かさんと早く付き合えよ! そんなモタモタしてたらその男が別の女性に取られちまうぞ?」


 その言葉を聞いた途端。レビアは怒って俺の脳天にチョップした。


「ルシフのバカァァァァァァ!! この鈍感おたんこなす!」


「いってぇな。今時暴力系女なんて流行んないんだよ。このヤンキー女が!」


 すると、レビアの瞳がなんだか真っ黒になった。


「やっぱりそうなんだぁ……。ルシフってそうやって鈍感気取って何人も女の子を泣かせてきたんだね……。あはは……。これは後でお話しが必要かもね……」


 ぶつくさ言っているレビアの狂気に俺はなんだか恐怖した。やっぱりこの子ためにメンタル病むんだよな。ユニークスキル【嫉妬】恐るべしである。


 とにかく今は余計な会話より目の前の敵だ。俺は舞花と目配せして、一気に攻め込んだ。


「てい!」


「しゅっ!」


 俺たちの不意打ちにより【ハイオーガ】をあっという間に殲滅した。俺はレビアに手を振ってこちらへ招いた。


「おーい! 片付いたぞ~~!」


「うん! いま行くねぇ~!」


 レビアが駆け寄ってきて、俺たちは素材採取や食料にしないので【ハイオーガ】に聖水をかけておいた。帰り際に凶悪モンスターに遭遇とか、それはそれで燃えてくるが、レビアの安全を考えると得策ではない。ここは慎重に行こう。


 そして、俺たちは鉱山へ足を踏み入れた。中を進むと、何故かモンスターが全くいない。何故だろう。俺は気になったので舞花に聞いてみた。


「おい? 舞花。やけにモンスター少なくないか?」


 舞花のそのことに同意した。


「確かにそうね。こんなに少ないなんて可笑しいわ。まるで誰かが狩り尽くた後みたい……」


 そのまま先へ進むと、ミスリルドラゴンの居る部屋へと簡単に辿り着いた。しかし、そこにはミスリルドラゴンの死体と一人の魔族がいた。


「おやぁ? モンスターの魂で補給しようと思っていたら人間さんがやってきましたかぁ!」


 彼女は幼い見た目だが、髪が黒く、目が異様なほどの闇に包まれており、巨大な角が生えていた。町がなくA級の魔族だ。俺はすぐにレビアに指示を出した。


「奴は危険だ。一気に片をつけろ! レビア!」


 レビアはすぐさま大地の大魔法札を使用した。


「魔法札発動! グランドクラッシャー!」


しかし、魔族は片手でそれを受け止めた。そして、絶対なる闇の魔力を解き放った。


「くっ!」


 俺はそれをなんとか【バリア】を四連重ねして、仲間を守った。


 すると、魔族は何か気が付いたようににやりと笑った。


「ふふふ。そっかぁ。ホープ村の英雄ってあんたのことだったんだねぇ。いやぁ。探すのだるかったんだよねぇ。手間が省けたよぉ!」


 俺は突然に自体に混乱した。どういうことだ。何故こんな高位の魔族がこんな序盤の村にいる。しかもその強さは圧倒的だ。あのクッズと同等か。それ以上かもしれない。想定ランクは間違いなくS級だ。しかもこんな奴原作でも見たことがない全くの未知である。


 女性魔族はぺこりとお辞儀した。


「申し遅れました。ウチは魔人軍幹部の一人。憂鬱のベルフーゼと言います。今後ともお見知りおきを!」


「魔人軍幹部だって! くぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ! きたぁぁぁぁぁぁぁぁ! 魔人軍幹部と本気の勝負とか胸熱展開過ぎるだろぉ!」


 俺は戦闘欲求が抑えきれずに、ほぼバーサーク状態で、魔族に剣を向けてから、背後のレビアたちに注意を呼びかけた。


「レビア。舞花。こいつとの勝負は一騎打ちでやらせてくれ! 手出ししたら一生恨むからな?」


 舞花たちはすぐに俺に注意してきた。


「馬鹿言ってんじゃないわよ。あいつは明らかにアタシたちより格上よ? ここは共闘すべきでしょうが!」


「そうだよ。ルシフ一人だときっと死んじゃう。だからここはみんなで力を合わせて行こうよ?」


 それは彼女たちの言う通りだ。ここはみんなと共闘すべきだ。でも俺の戦闘欲求が今まで出会ったことがないくらいの強敵にバリバリに反応してしまっているのだ。


 ここで一騎打ちを避けるなんて、ガチゲーマーじゃないし、バトルジャンキーでもない。


 俺は自分の欲のために、彼女たちに懇願した。


「邪魔するな。頼むから邪魔しないでくれ! こんな楽しい戦いなんてこれからだって何度あるか分からない。絶対に勝つって約束するから! 俺の幸せを奪わないでくれ!」


 俺は本気で涙を流した。それくらいこいつと戦いたいのだ。レビアと舞花はため息を吐いて降参した。


「わかったよ。ルシフがそこまで言うなら止めない。だから泣かないで?」


「全く自分の我儘が通らないなら泣くなんて相変わらずガキね! いいわよ! あのメスガキ魔族にいっちょぶちかましてやんなさい!」


 俺は二人に感謝した。


「俺の傲慢に付き合ってくれてありがとう。絶対に勝つから見ていてくれ!」


 俺は視線をメスガキ魔族へ宣戦布告した。


「待たせて悪かったな! さあ! 思いっきり楽しもうぜ!」


 メスガキ魔族はため息を吐いた。


「はぁ。憂鬱。こういうバトルジャンキー苦手なのよね。マジ鬱だわぁぁ!」


 こうして、俺とメスガキ魔族ことベルフーゼに切っ先を向けて駆け出した。

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