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第51話『道具屋経営の相談』

 俺はレビアと別れて、自宅の屋敷へと帰宅した。新しい屋敷は、紫色の屋根をしており、とにかく大きい。前に住んでいた家の三倍くらいの大きさだ。


 木造二階建てで、一〇を超える部屋があり、キッチンや巨大な風呂場も完備されており、使用人は今のところ、夏木舞花とエナと執事のバッカスだけだ。


 前の使用人はみんな辞めてしまい、執事には、あの新人潰しをしていた冒険者であるバッカスを起用した。何でもバッカスは家事や雑務などのスキルは折り紙つきでかなり有能らしいからだ。


 そして、同じく新人潰し組であるエナも起用した。彼女もダッサイの面倒を一年も看ていただけあって家事スキルが高い。


 だが、二人だけでは、使用人の数が足らないと思っていたところに、ハラグロード村がホープ村へと名前が変わり、そこの新領主の令息が村を救った英雄ということを聞きつけて、駆け込みで、舞花が使用人として雇って欲しいとやって来たのだ。


 その目的は英雄と呼ばれる魔剣士から剣術の手合わせをするためである。そのため日頃から俺は舞花との手合わせが日課となっている。


 そのおかげで剣術方面ではかなり強くなれた気がする。流石は天才剣道少女だ。もうこの生活も二か月は続けているが、まだ慣れた気がしない。


 俺は使用人を呼ぶためにチャイムを鳴らした。異世界の文明水準でこの世界は発達しているため、金持ちの家はチャイムがあるのだ。


 呼び出し機から、舞花の声が聞こえてきた。


『どちら様でしょうか?』


『俺、俺だよ! ルシフだ! 門を開けてくれ!』


『ああ。ルシフ様でしたか。お帰りなさいませ。今すぐ門を開けますので、少々お待ちください』


 待つこと数分で、舞花がやってきた。何故か髪が少し濡れている。どうやらお風呂上りのようだ。


 幼馴染とはいえ、風呂上りの女性というのは思春期男子としては、どうにも色目で見てしまう。レビアよ。すまない。


 門から俺の嫌らしい視線に気が付いたようで、舞花は眉を顰めた。


「ルシフ様。アタシに如何わしい視線を向けるのはお辞めください」


「す、すまない。別にそんなつもりじゃなかったんだ。本当にごめん!」


 俺が頭を下げると、舞花は何故かくすくすと笑った。


「ふふ。ほんっと。昔から女子に免疫ないのは変わってないわね……」


「ん? 何か言ったか?」


「別に何でもありませんわ。それよりご夕食の準備が整っております。着替えを済まされてから、すぐに食堂へお向かいください」


「分かったよ。ありがとう!」


 やはり舞花は優秀なメイドだ。昔から真面目な優等生でしっかり者だったからな。俺は屋敷のエントランスから階段を昇り、自室の扉を開けた。


 貴族と言っても、そんな装飾華美な部屋にはしていない。意外と質素でシンプルな部屋だ。ただ筋トレ器具や、冷蔵庫が置いてあり、そこには異世界人が開発したプロテインポーションが入っている。


 部屋の片隅には木剣が置いてあり、これで舞花とチャンバラ毎日手合わせしているのだ。確かに舞花は強いが、今のところ一度も負けたことがない。前世でもそうだった。舞花に負けたことは初心者の頃から一度もない。


 道場主のおやっさんにも、全国大会へ出場したり、高校の剣道部へ入部したらどうだと勧められたが、ゲームが命である俺はいつも断っていた。


 舞花は明確に俺をライバル視していた。俺を超えることが彼女の目標と言っても過言ではないだろう。


 それが異世界に来てまでその関係が続くとは因果なものである。


 俺はタンスから家着を取り出し、服を洗濯物籠に入れておく。そして、自分の部屋を出て、エントランス右側にある食堂へと向かった。


 そこにはもうすでにたらふく食いまくっているベルゼナの姿があった。父さんと母さんは落ち着いた大人だけあってテーブルマナーを守ってゆっくり食べている。


 俺は自分の食事が用意された椅子に座り、家族に謝罪した。


「あの。遅くなってごめん……」


 すると、真っ先にレビアが食いついてきた。


「それでお兄ちゃんはまさかレビア姉に変なことしてないよね? お兄ちゃんの運命の相手はあたしなんだよ! 他の女に浮気するなんて許せない!」


 暴走する義妹に俺はお馴染みのデコピンを食らわせた。


「あたっ!」


 俺は冷静に事実を突きつけてやった。


「悪いが、俺の想い人はもうレビアに決めているんだよ。お前はもう諦めて他の男探せ!」


 レビアは頬を膨らませて、拗ねだした。


「本当にお兄ちゃんってば最低だよ! こぉんな可愛くてキュートでプリティな義妹がいるのに他の女に目移りしちゃうなんて、最低過ぎ! この浮気者!」


 俺はまたしても歪んだ思想のブラコン妹に現実を突きつけた。


「だぁかぁらぁ。妹を恋愛対象として見るつもりはないってば! 血が繋がってなくても俺たちは兄妹なんだからな!」


 レビアはぷくっとフグみたいに頬を膨らませて、不満を漏らしまくった。


「いいもんね。そのうちあたしの魅力でお兄ちゃんをメロメロにして、あの泥棒猫から、お兄ちゃんを取り返してやるんだから!」


「はいはい。勝手に暴走してろ。俺は腹減ったから飯を食う! いただきます!」


「ちょっとお兄ちゃん話しは終わってないよ?」


「うっさい。はよ飯食え!」


 俺はいつも通りキマイラのステーキを口に運ぶ、やはり牛肉と同じ味だ。キマイラの肉はマジで美味い。


 その時、後ろから「そっか恋人できたんだ……」と舞花の声が聞こえてきた。そんなに主に恋人が出来たのが気に食わないのだろうか。ウチの坊ちゃんは不埒な女たらしとか思われているのかもしれない。俺はレビア一筋なので、誤解なのだが。


 それより俺は母さんにあの相談を持ち掛けることにした。


「ねえ? 母さん。相談があるんだけどいい?」


 母はキマイラのステーキを口に運びながら「なんだい?」と素っ気ない返事を返してきた。俺は勇気を振り絞り、レビアの夢の話しを語り始めた。


「実はさ……。今日レビアに成果物を提出するから、道具屋経営の許可が欲しいって相談されちゃって……」


 すると、母は急に血相を変えてハイテンションで喜んだ。


「それは本当かい?」


 なんか圧が強くて怖いが正直に答えた。


「うん。本当だよ。レビアもそろそろ夢の道具屋経営を始めたいらしい」


 俺の言葉を聞くや否や、母はハイテンションで豪快に笑った。


「がっはっは。いいね。あの子の錬金術の才能は本物だからね! これは物凄く儲かるし、村の発展にも繋がる! いやぁ悪い話しじゃないよ! むしろアタイは大賛成さ!」


 思ったより賛成してくれているみたいだ。そして、母は俺にこう命令した。


「ルシフ。明日レビアをギルドまで連れてきな。そこで今後のプランを考えようじゃないか!」


 俺はなんだか嬉しくてハイになってしまった。


「うん! 分かった! 明日レビアを連れてくるよ!」


 どうやら話しは纏まったようだ。いよいよ最愛の人の夢と努力が報われる時が来た。そのことが彼氏としてとても誇らしかった。

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