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第50話『夢の道具屋経営』

遅くなりまして申し訳ございません。続きです。

 噴水のベンチに座りながら聞く相談とは一体何なのだろうか。レビアは珍しく緊張しているため、俺から話しかけた。


「それで? その相談の内容だけどさ? そんなに言いにくいことなのか?」


「う、うん。実はね……。わたし、そろそろ道具屋を経営したいの!」


「なるほど。道具屋経営か。それは大変そうだな。それで言いにくかったわけか……」


「う、うん。そうなの……」


 道具屋経営か。正直、道具屋を経営するとなると、かなり金が要る。レビアのことだ。お金を貸してくれとは言わないだろう。


 とりあえず話しを聞くために、レビアの話しの続きを聞いた。


「それで? 具体的なプランはあるのか?」


 レビアは少し悩んだが、ポーチから一つの薬を取り出した。


「これはレア・エリクサー。エリクサーの効果をたった一口飲みだけで得られるSランク錬金アイテムなの!」


「マ、マジかっ!?」


 俺はつい驚きのあまりオーバーリアクションを取ってしまった。ゲーム原作知識によると、この薬は一口でエリクサーと同等。つまり六回分くらい生命力、魔力、疲労感全回復の効果が得られるという超レア級の回復アイテムだ。


何せエクストラダンジョンの報酬として貰えるほど貴重な薬なのだ。それをまさかレビアが錬金に成功していたとは、これはもうクリア後に出現するサポート錬金術師と同じレベルである。


 そして、レビアは話しを続けた。


「これを領主であるルシフのお母さんに見せて、道具屋経営の許可を貰おうかなって。お金に関しては、これから考えなきゃだけどね……」


「なるほどなぁ」


 ある程度はプランを考えているようだ。しかし、許可を貰ったところで、いい物件を探すにも、一から建てるにしても、お金が必要だ。


 やはり基本的に引きこもりの錬金術師ということもあり、お金稼ぎという面ではどうすればいいのか分からないらしい。


 そういう意味でも、一度母さんに相談した方がいいだろう。


 俺は胸を叩いた。


「よし! とりあえず今日家に帰ったら、母さんに相談してみるよ! それだけの成果物があるんだ。きっとお金の稼ぎ方くらい教えてくれるさ。なんたってウチの母は【強欲】のユニークスキル持ちだからな!」


 その途端レビアの顔はぱあっと明るくなった。


「ありがとう! ルシフ! 大好き!」


 そう言ってレビアは俺を抱きしめてきた。


「ちょ、ちょっと!」


 俺は思わず動揺してしまい、心拍数が無限大に上昇した。そんないきなり積極的に来られたら困る。思春期男子とは本当に単純な物である。


 しかし、ここは男として恥ずかしさをぐっと堪えて、彼女を優しく抱きしめ返した。


「俺もだ。俺も大好きだよ。レビア……」


「うん。わたしも、わたしもルシフが大好き……」


 俺たちは抱き合いながら、互いの体温を確かめ合っていていた。かなり密着しているせいでレビアの心臓の鼓動まで感じる。かなりどくんどくんと激しく高鳴っているようだ。


 なんてことないが大切な時間。きっと周囲の人間が見たら、このバカップルがと舌打ちすることだろう。


 もう彼女いない歴の非リアは卒業だ。陰キャなのはまだ治ってないが、立派なリア充である。


 まだ一線を越えていないので、童貞ではあるのだが、そこは彼女との絆は大切に育んで行ってから、一つ一つ段階を踏めばいい。


 こんな幸せになってもいいのだろうか。向こうの父さんと母さんは悲しんでいないだろうか。俺と舞花がいなくなって、もう一人の幼馴染である絵美は悲しんでいないだろうか。

舞花の親父さん。道場を経営しながら、男手一つで、彼女を育てていたのに、娘に先立たれて悲しんでいないだろうか。


 そんな罪悪感も同時に覚えてしまう。やっぱり俺って最低なのかもしれない。そんな気持ちもある。


 でもいまはそんなことは忘れよう。この温もりを、この幸せを宝物のように、大切にするのだ。


 数十分は抱き合っていただろうか。互いに気持ちが落ち着き、すっと身体を離し、レビアが無邪気に微笑んだ。


「うふふ。すっごく幸せだねぇ!」


「ああ! そうだな!」


 彼女の言う通り凄く幸せだ。こんな時間が永遠に続いて欲しいとすら思う。そろそろ他の場所も見て回りたいので、レビアの肩に手を置いた。


「なあ? そろそろ他の場所も見てみないか? 何か気になる物があるなら買ってやるよ! 前と違って、俺は金持ちだからな!」


 レビアは少し申し訳なさそうに遠慮した。


「い、いいよ。そんなのぉ……。わたしはルシフと居られるだけで、幸せなんだから……」


 本当によく出来た彼女だ。俺にはもったいなさ過ぎる。それでもなんとか彼氏として恰好をつけたい気持ちが勝り、彼女の手を繋いで引っ張った。


「いいから。いいから。ほら。行くぞ!」


 半ば強引なリードだが、そうしないと彼女はまた遠慮してしまう。レビアは観念したように溜息を吐いた。


「もう! 本当に強引なんだから!」


 俺は彼女と手を取りながら、街中を歩いた。すると、レビアはまたあのアクセ屋を眺めていた。俺はレビアに優しく語りかけた。


「欲しいアクセとかあるのか?」


 レビアはちょっと動揺しながらも頷いた。


「う、うん。実は錬金効果アップの髪飾りが欲しいなって前から思っていたの。でも高いから、なかなか買えなくて……」


 俺はまた彼女の手を引いた。


「なら買ってあげるよ! アクセ屋に行こう!」


「ちょ、ちょっと!」


 自分でも強引だと思うが、それでも俺はレビアの彼氏として、いつもお弁当をくれる彼女にお返しがしたいのだ。


 俺はレビアをそのまま店内に引き連れた。そこでレビアは俺の服の裾を引っ張って頬を膨らませた。


「もう! 強引過ぎるよ! ルシフのバカ!」


 どうやらお怒りのようだ。俺はすぐさま謝罪した。


「ごめん。ごめん。でもやっぱりレビアの欲しいアクセ買ってやりたくてさ。だっていつも俺ばっかりお弁当ご馳走になって悪いし……」


 俺がしょんぼりとすると、レビアはくすくすと笑った。


「うふふ。そっかぁ。なら、ここは素直にルシフの好意に甘えておくね!」


 俺は明るい気持ちになり微笑んだ。


「ありがとう。じゃあ、早速お目当てのアクセを探そうか!」


「うん!」


 俺はレビアに、連れられて、お目当てのアクセのある籠が置いてある棚へと移動した。神の札には【錬金術師の髪飾り】と書かれてある。


 お値段は金貨三枚。確かに高い。でも高難易度クエストをそつなくこなしている俺なら買えない金額じゃない。


俺は店主に声をかけた。


「すみません。これ、ください!」


 店主は女性のおばさんだ。しかもわりと細身で美人だ。大人の色気みたいなものを感じてしまう。店主は俺たちの方まで駆け寄ると頭を下げた。


「これは。これはルシフ様ではありませんか。本日は我がアクセサリーショップにご来店いただき誠にありがとうございます!」


 俺は遠慮がちに手を振った。


「いやいや。そういうのはいいですから。今日は客として来ただけなので……。それよりもこれをください!」


 女性店主は隣にいるレビアを見て、にっこりと笑いながら、髪飾りを手にとった。


「そうですか。それでは本日は特別価格で金貨三枚のところを、二枚にさせていただきます!」


 俺はまたしても手を振った。


「そ、そんな。悪いですって! 通常価格でいいですよ!」


 店主は首を振った。


「いいえ。特別価格にさせていただきます。いつも村の平和を守ってくださっている英雄様に対してのせめてもの感謝の気持ちですわ!」


 なんか押しの強いおばさんだ。ちょっと苦手なタイプかもしれない。でも尊敬してくれているのは正直嬉しい。なので、素直に好意を受け取っておくことにした。


「わかりました! じゃあ金貨二枚で!」


 俺は金貨を二枚支払うと、店主はご機嫌そうに笑った。


「お買い上げありがとうございました! 今後とも当店をよろしくお願いします!」


 店主が頭を下げたので、俺もその礼に応じた。


「はい! また来させていただきますね! 値引きしてくれてありがとうございました! それでは!」


 俺は店主に手を振りながら店を後にした。そして、外に出てから苦笑した。


「あはは。俺、ああいうの、あんまり慣れてないんだよね。今まで平民だったからさ……」


 俺の困っている気持ちにレビアも寄り添ってくれた。


「だよね。なんか場違いみたいな感じがしちゃうよね。きっとわたしも英雄様なんて言われたら、同じ気持ちになっていると思う」


「レビア……」


 俺は感激した。本当にレビアは優しい。俺はそんな優しい彼女の頬にそっと触れた。


 そして、その髪に髪飾りをつけてあげた。


「はい。俺からの気持ちだ。受け取ってくれるな?」


 レビアは髪飾りに触れながら、嬉しそうに笑った。


「うん! ありがとう。ルシフ! 世界で一番愛してる!」


「ああ。俺もだ……」


 その後、俺たちは唇を重ねた。こうして本日のデートは大成功に終わった。

 昨日は投稿を忘れてしまい本当に申し訳ございませんでした。ちょっと色々と体調が悪かったので投稿するの忘れていました。


 お詫びとして本日は52話まで投稿いたします。

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