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第41話『クッズ視点〜ルシフ君が大好き過ぎて融合したい件〜』

 俺様は自宅のベッドで興奮が抑えきれずにじたばたしていた。


「ああ。彼の力が欲しい!」


 そう最初は解体して、彼の力の仕組みを理解して、同じくらいのスペックの転生者を意図的に量産することが目的だった。


 しかし、今は少し主旨が違っている。俺様は彼の、ルシフ君の力が欲しい。彼の力を肌で感じて思った。この強さは本物だ。


 最初は高ステータスや強力なスキルが彼の強さの根源だと推測していた。だが、それは大きな間違いだった。見当違いも甚だしい。俺様は自分のそんな浅はかさを恥じた。


 彼の力の根源は、ルシフという存在以上に、転生前の人物の魂に由来している。俺様も傲慢な自覚はあるが、彼の傲慢さは俺様と比べるのも烏滸がましいほど、気高く、誰にも汚されないような、まるで堕天使ルシファーを彷彿とさせるような、そんな傲岸不遜で孤高の誇りを感じるのだ。


 彼はかつて俺様がなりたかった、堕天使の姿そのものなのだ。


 俺様は抑えきれなくなり、つい叫んでしまっていた。


「ああ。彼は本物だ!」


 俺様はまるで恋焦がれる乙女のように、恍惚状態に陥った。ああ。彼はなんと美しく気高いのだろうか。


 もういっそのこと彼に抱かれたい。いや、殺されたいまである。彼に殺されるのなら、最大級にして最高の幸せを感じられるだろう。


 素敵。素敵。素敵。素敵。素敵。素敵。素敵。素敵。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。


 そんな狂気に満ちた黒歴史になりかねない想いが溢れ出てくる。俺様はベッドから飛び起きて、机に座り、半羊皮紙を取り出し、ペンに黒インクを浸して彼の名前を書き殴った。


「ルシフ。ルシフ。ルシフ。ルシフ。ルシフ。ルシフ。ルシフ。ルシフ。ルシフ。ルシフ。ルシフ。ルシフ。ルシフ。ルシフ。ルシフ。ルシフ。ルシフ。ルシフ。ルシフ。ルシフ。ルシフ。ルシフ。ルシフ。ルシフ。ルシフ。ルシフ。ルシフ。ルシフ。ルシフ。ルシフ……」


 俺様は約一時間で半羊皮紙十枚分も彼の名前を書き連ねた。ああ。ルシフ。なんと美しい名前なのだろうか。


 好き。しゅき。ちゅき。愛している。惚れている。大好き。愛が溢れている。恋慕を募っている。最愛の情念がとどめなく溢れ出し、俺様は彼の名を見る内にたったひとつこんな感情を抱くようになった。


「ああ。彼になりたい……」


 その瞬間、俺様の天才的な頭脳が閃いた。そうだ。彼の存在をコピーして、自分に上書きすればいいのだ。


 そうすれば俺と彼は初めて、本当の意味でひとつになれる。それは彼に抱かれるより、殺されるより、遥かに深い愛だ。


「ああ……。ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


 俺様は閃いた。閃いてしまった。彼の人格や強さをコピーする手段を。レアクリスタルだ。レアクリスタルを使って、異世界人が錬金術で生み出したマジックアイテム【量産結晶】と掛け合わせて、彼を象徴するあの魔剣とコートと同質の物を生み出せば、彼に成るということは可能だ。


 何故ならレアクリスタルは全ての存在を映し出すと呼ばれているくらいの効能を持っており、転写の魔法札を錬金する際にも、使用されている素材だ。


 その映像に量産を掛け合わせると、擬態化の魔法札を開発することが可能だ。映像――魔法名【イメージ】は冒険者カードや、個人端末カードにも使用されている魔法だ。それによりステータスの確認や、自分の姿を立体映像として映し出したり、カメラに移したりできる。それを応用して擬態化の魔法札を作り、彼に触れた瞬間に使用すれば、僕の姿は見事彼になるだろう。魂に関しても、精神干渉系の魔法札と掛け合わせて、擬態化の魔法札と合わせれば、彼と僕の融合体が誕生するだろう。俺様は自分の想いを抑えきることができずに溢れんばかりの愛を発していた。


「成ろうじゃないか! 俺様は彼と融合する!」


 なんという充実感だろう。俺様も自分の天才性と彼の気高さを称賛して、それを肴にしてワインを一本開けて飲み明かした。


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