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第4話『バトルジャンキー』

 キマイラの群れの大量発生。それは俺のゲーマー魂に火を灯すのに、充分過ぎるほどのサプライズだった。


 俺は滾る熱い想いを抑えきれずに、突発的に玄関を飛び出して、キマイラの群れを探し始めた。すると、村の前に大量のキマイラの群れと冒険者たちが戦っていた。


「よぉぉぉぉし! 狩りの時間だぁぁぁぁ!」


 そういえば、この世界の装備はただの武器を肉体に装備するのではなく、魔力空間から魔力を纏う武器【魔装備】を呼び出して戦うはずだ。


 正直、魔力の扱いとかどうやるのか、日本人の頃の記憶ではさっぱりだ。だってゲームではコマンドメニューを用いて、ボタン一つで勝手に操作していたからな。


 そこで、俺はルシフだった頃の記憶を遡り、どう扱えばいいのか思い返してみた。すると、半自動的に感覚が蘇ってきて、すぐに魔装備【無の刀】を手から出現させた。


 真っ黒な刀で最高に格好いい初期装備だ。なんか、男の厨二心が刺激される。俺はその愛刀を構えて、強化奥義【魔力強化】でステータスにバフをかける。これで戦闘準備万端だ。


「もうこれ以上は辛抱できない! うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 俺は目の前の経験値たち相手に、何の策もなしに、冒険者を押しのけて、バーサーク気味に突っ込んだ。


「うりゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 俺は勢いに任せて、次々とキマイラを屠りまくった。しかも一度攻撃する度に、二回切り傷が入る。


 ゲームはターン制だったから分からなかったが、実戦となると、通常攻撃は複数回行われる。つまり一度に二回相手を斬れるということは、ただ剣を振るっているだけでも、けっこうな手数の多さで無双できるというわけだ。


「あっはっはっはっはっはっはっはっは♪ 最高! 面白過ぎる♪」


 俺は獅子の如く、傲慢に剣を振り続けた。まるで原作ルシフのモデルとされていた、神話上の堕天使ルシファーの如き戦いぶりだ。きっとこれもルシフに転生したおかげだろう。


 ルシフの傲慢なバトルジャンキーの気質が、俺にシンクロされているのだ。それになんだかんだ俺もゲームの戦闘やら、対戦は大好物だ。つまりバトルジャンキーだった俺と、バトルジャンキーである設定のルシフが掛け算されて、最強のバトルジャンキーが誕生してしまったというわけだ。


 もうモンスターへの恐怖とか、そんなクソみたいな感情はひとつも沸いてこない。目の前の獲物を狩り尽くす。その闘志だけが俺の剣を突き動かし続けている。そして、敵の親玉らしき【キマイラロード】を発見した。


 早速、異世界に来て初のボス戦である。ああ。わくわくする。これでわくわくしないならゲーマーを名乗る資格なんてない。俺はほぼバーサーク状態で獅子の如く突っ込み、【キマイラロード】に剣を振るった。


「キマイラロード討ち取った!」


 しかし、一撃ではやられず、敵も反撃をしてきた。俺はその攻撃を余裕で回避する。このモンスターは物理攻撃をされる度に、カウンターを仕掛けてくるのも瞬時に思い出したからの対応だ。だったら、物理攻撃は不利になるため、ついに異世界に来たら誰でもやりたいあれをやる時がきた。


「こうなったら攻撃魔法だ!」


 魔法なんて、生まれてから、一度も使ったことがない。でも、ルシフの記憶が、その扱い方を知っている。ルシフのセンスと、俺のゲーム知識が合わさればまるで敵なしだ。


 俺は、無属性初級魔術を発動するべく、無の刀の切っ先を敵に向けた。この世界の魔法は、魔装備を触媒にして、魔法を発動する。本来なら、長い詠唱が必要なのだが、俺にそれは必要なかった。


「行くぞ! キマイラロード! ゲーマーのプライドを思い知れ! マジックショットォォォォォォォッ!!」


 俺の放った初級魔法は、一回目と、ほぼ同時に二発目が発射された。この世界の魔法は属性による相性がある。たとえばこの【キマイラロード】なら、風属性だから、地属性の攻撃に弱い。しかし、この【マジックショット】は無属性魔術。初級とはいえ、けっこう威力の出る、単発火力重視の魔法だ。つまりたった今、高火力の魔法が二連発連続発射されたことになる。ただそれだけではない。ユニークスキル【傲慢】の強さはここからだ。


「ケコオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」


 放たれたマジックショットは、敵にぶつかってから、四回爆発した。そして、敵は一気に生命力を失って崩れ落ちた。勝負ありである。


「よっしゃあああああああああああああ!! 初勝利ぃぃぃぃぃぃぃ!!」


 その瞬間、村から大量の歓声が沸いた。やべ。ちょっと目立ち過ぎたな。後で少々面倒くさいことになるかもしれない。


 なんて、人見知り特有のコミュ障さを発揮しながらも、俺は嬉しくて、心の中で(ステータスオープン)と唱えて、ステータスウィンドウを開いてみた。


 その結果はこうだ。




 ステータス 

 ルシフ

 レベル 10

 ジョブ 魔剣士

 生命力70

 魔力68 

 攻撃力85

 防御79

 敏捷76 

 技術62

 知性10

 幸運85 

 魔力属性 無 

 魔力装備 【無の刀】 攻撃力10 効果 全ての敵に与えるダメージが2倍になる。

 防具 【黒のコート】 防御力10 

 ユニークスキル【傲慢】 一度攻撃すると2回攻撃判定が入る。さらに一度に2回魔法と奥義を放てる。2回目は消費魔力はなし。魔法や奥義も1回につき2回判定が入る。かなり高速魔法を詠唱でき、奥義による硬直時間も無効化する。

 流派 中央大陸流初級 無属性魔法初級 回復魔法初級 

 奥義 

【魔力強化】 魔力を身にまとい、ステータスを20ポイントアップさせる。

【スラッシュ】 効果 飛ぶ斬撃は放つ。

 魔法 

【ヒール】 効果 体力を回復する。

【マジックショット】 無属性の魔力弾を飛ばす。



 いや。おい。ちょっと待て。なんで知性のステータスだけ低いままなんだよ。てか、他のステータス、原作ルシフより上がり過ぎだろう。


 これはもうレベル20くらいの強さだ。レベル一つにつき10ポイント。幸運と敏捷に関しては20ポイント。つまり5レベルアップで、知性以外のステータスが、平均50ポイントくらい上昇しているのだ。


 原作では1レベルにつき、1から5ポイントしか上がらなかったのに、これはどういうことなのだろうか。


 原理は分からないが、おそらく異世界転生物にありがちな転生特典か何かで、成長に補正がかかるとか、そういうことなのかもしれない。


 女神やら、神のアナウンスすらなかったから、正直不明瞭な点が多い。


 それはまあ置いていて、なら、なんで知性だけ上昇しないのだろうか。


 これはあれか? 女神やら神のうんこ野郎が、前世で勉強サボって、ゲームばっかりしていた、罰だとでもいいたいのだろうか。


 正直、納得行かない。俺だってゲーム知識の勉強とか知能なら、わりと凄い方なんだぞと主張したい。


 とほざいたところで、俺の知性は上がらない。こうなったら父親の書斎で勉強しまくってやると誓う俺であった。それにしてもやっぱり戦闘は楽しい。やはりブリファンは最高の神ゲーだぜ。シナリオ以外……。




 母マモ視点。



「これは、一体どういうことなんだい!」


 アタイの前には、キマイラ相手に、たった一人で荒れ狂う息子の姿が見えた。元からあの子は戦いの好きな子だったが、今のあの子は前の時より、明らかに動きが違う。


 知性的な面がまるでなく、まるで獅子のような戦い方だ。まさに傲慢。それを表現するに相応しい戦いっぷりだ。


「やるじゃないかい!」


 これはどうやら、アタイの出る幕はなさそうだ。息子は遂に敵のボスモンスター【キマイラロード】と対峙する。危うくカウンターを食らいかけたが、先ほどまでの知性のない戦いとは違い、まるで来ることを予測していたかのような、見事なほど知性的な対応を見せた。


 そして、敵の弱点である攻撃魔法に切り替えたようだ。さらに、息子の無属性初級魔法【マジックショット】が敵にヒットし、あの子の持つ【傲慢】のスキルの効果により、四連発の大きな火花が飛び散った。


 あの【キマイラロード】を跡形もなく葬り去るとは、アタイの息子はどうやら何かを掴んだらしい。


 世界を救うことを諦めるなんて、所詮この子も、並みの少年かと思っていたが、どうやら、それはアタイの思い違いだったらしい。


 おそらく、あの子のやりたいことに関係しているに違いない。もしかすると、あの子は勇者の仲間にならなかったのは、自分が勇者になりたいからなのかもしれない。そう思うと、あの子の覚醒にも説明がつく。


「流石はアタイの息子だ!」


 アタイは未来の息子の成功に、年甲斐もなくワクワクしてしまった。今夜はたくさんキマイラの肉を食わせてやろう。アタイは早速ギルドに掛け合い、肉の調達に向かった。

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