第39話『日曜日なのでデートをしようと思う』
レビアに腕を掴まれて、街中を闊歩する。今日はいい天気だ。空が澄み渡っている。それに気候も暖かい。しかも、腕に当てられているマシュマロの感触は極上だ。これほど幸せなことがあるのだろうか。
しばらくふたりでゆっくり散歩していると、俺の腹の音がぐうと鳴った。
「あ、あははは……。なんだか腹減ったなぁ……」
レビアはくすくす笑い、口元に手をあてがった。
「ふふふ。ルシフは食べ盛りだもんね。じゃあ。そろそろお昼にしよっか?」
「あ、ああ!」
意見は纏まった。問題は何処で食うかだ。あまり高いレストランなんか行く金がないし、流石に冒険者ギルドの酒場はデートの甘い雰囲気を台無しにしてしまう。
ならば、やはりあそこしかない。俺はルシフの頃によく通った食堂の名を口にした。
「それじゃあ、ダダイ食堂で食べるか!」
レビアはぴょんと跳ねて手を合わせた。
「いいね。ダダイ食堂! あそこのカツカレー美味しいもんね!」
「そうそう。カレーの味付けもだけど、あの揚げたてサクサクのカツが美味いんだよな!」
「よし。それじゃあ、ダダイ食堂へレッツゴーだね!」
「おう!」
俺たちは右斜め上方向に建てられている茶色い屋根の店に向かって歩き出した。レビアはまた俺の腕にくっついてマシュマロを当ててくる。これから飯だって言うのに、飯よりレビアを食べてしまいたい感情に襲われそうになる。
それでも俺は必死に理性を保ち、ダダイ食堂へと辿り着き、その扉を開いた。
ダダイ食堂のインテリアは木造建築ながらも、何処かカフェを思わせるようなお洒落な雰囲気がある。
しかも、人気メニューのカツカレーが、庶民に優しい価格なのだ。だからか、いつも俺たちがデートの時の食事はもっぱらこのダダイ食堂で済ませることが多い。
店の中に入った瞬間、ダダイのおっちゃんの妻である、ババイのおばちゃんが応対してくれた。
「いらっしゃい。まあ。ルシフ君にレビアちゃんじゃないか! 今日はふたりでデートかい?」
俺は気恥ずかしくなったが、いつも聞かれる科白なので、気にせず適当に返した。
「え、ええ。まあ。そんなところです。それより席は空いていますか?」
「ああ! あそこの右の窓際なんかが空いているから、そこへ座っておくれ!」
「わかりました。行こう。レビア」
「うん!」
俺たちはおばちゃんに言われた通り、右の窓際の席に座った。メニュー表が置いてあるが、俺たちが注文するものはもう決まっているので、おばちゃんに声をかけた。
「すみません!」
おばちゃんはすぐにやってきて、伝票を取り出した。
「はいよ。注文は決まったかい?」
「はい。俺はカツカレーで!」
「わたしもそれで!」
おばちゃんは豪快にがははと笑った。
「やっぱりふたりならカツカレーにすると思ったよ。それじゃあ、旦那に用意させるから待っていな!」
「「よろしくお願いします!」」
俺たちは声を揃えて、頭を下げた。おばちゃんがそっと置いてくれたお冷を飲みながら、外の景色を眺めているレビアを見つめた。
神々しい金髪はもう半年以上も経っているので、ボブヘアからミディアムロングヘアまで伸びていた。青いドレスは露出度が高く、目の毒だが、それでもレビアの肌は透明感があってすごく綺麗だ。顔立ちももうすぐ18歳ということもあって少女の顔から、少し大人びた顔立ちへと変化してきている。
体格は相変わらず小柄だが、マシュマロはここ最近さらに成長しているように感じる。
本当にルシフにはお似合いかもしれないが、前世の俺にはもったいない子だ。
俺はレビアに見惚れていると、こちらの視線に気が付いたのか、レビアはちょっと悪戯っぽく笑った。
「ああ! ルシフったら今わたしの胸元ちら見していたでしょ~~?」
俺は顔を赤くしながら誤魔化した。
「そ、そんなわけないだろう。俺はいつだって紳士だっての!」
レビアはにやにや笑いながら、またからかってきやがった。
「またまたそんなこと言っちゃってぇ~~。やっぱり男の子だねぇ。ルシフのえっちぃ!」
俺はますます赤くなり、咳払いした。
「別にそんなことないってば。それより早くカツカレー来ないかな……」
「うふふ。ルシフってば、なんだか今日は可愛いね♪」
「だ、だからぁ! そ、そんなことないってば!」
レビアはくすくす笑っていた。くそう。今日はレビアに翻弄されてばかりだ。恋愛の主導権を握れないのは、俺が陰キャの童貞だからだろうか。
待つこと数十分。ようやくカツカレーが運ばれてきた。おばちゃんが俺たちのテーブルの前に皿を置いてくれた。
「へい、お待ち! カツカレー二つだよ!」
「「ありがとうございます!」」
俺たちはまた声を揃えてお礼を言うと、おばちゃんは「どうぞごゆっくり」とだけ告げてそそくさとカウンターへと戻っていった。
俺は目の前のカツカレーに目を輝かせる。カリカリに揚げられたカツは見事な茶色で、カレーも黒茶色に美味しそうなルーに大盛りのご飯がよそってある。
思春期の食べ盛りに配慮して作られていることがよく分かる。レビアはカツカレーを目にしてはしゃいでいた。
「わぁ! すっごく美味しそう!」
「そうだな!」
俺も全く同じ気持ちだったので、同意した。さっそく俺たちふたりは手を合わせた。
「「いただきます!」」
そして、木製のスプーンを手にして、木の皿に盛られたカツをカレールーに絡ませて口の中へと放り込んだ。
濃厚なカレーの味わいと、サクサクしたカツの感触が堪らない。そのあと、食欲が暴走して、約三十秒で全部平らげてしまった。
それを見て、レビアは笑っていた。
「ふふふ。相変わらず食べるのが早いね! わたしなんてまだ半分も食べてないよぉ?」
俺はやばい引かれたかと思っていたが、レビアは手巾で俺の口を拭いてくれた。
「お口にいっぱいルーがついていたよ。本当にルシフったら子供みたいで可愛いんだから!」
なんだか今日は主導権を握られっぱなしな気がする。親友としか思っていない男をそんなにからかって楽しいのだろうか。
純粋でいい子なのだが、純粋であるがゆえに、たまに好奇心から悪戯っぽくなる。でもそうやってからかわれるのも、なんだか悪い気がしない。
レビアは普段から錬金術を頑張っているのだ。少しでもリラックスしてくれているなら、それでよしとしよう。
数分後、食事が終わり、会計を支払って店の外に出る。すると、レビアに腕を引っ張られた。
「ねえ? 噴水のベンチで日向ぼっこしようよ?」
「ああ。いいよ!」
俺たちは噴水の前のベンチに座った。すると、レビアが俺の腕を掴んだまま、肩に頭を預けてきた。
「うふふ。ふたりでくっついていると幸せだねぇ」
「あ、ああ。そうだな……」
確かに幸せなのだが、俺のチョリソーが暴走しそうになっていることも配慮して欲しい。腕には柔らかなマシュマロ、右隣には魅惑的な脚がそこにあるのだ。こんなのどれだけ理性が保てるが自信がない。
そんなふたりで甘いひと時を過ごしていると、急に貴族の男が目の前に現れた。その人物は俺が原作で勇者と同じくらい嫌っていた男だった。
「やあ。いい天気だね。デートは楽しいかな? おふたりさん?」
その男はこの村の領主であり、魔族アスマデウスに脅されて村を壊滅へと導いた張本人クッズ・ハラグロードであった。
本日は話しはここまでです。いかがでしたか? 昨日は投稿忘れてて本当にすみませんでした(´;ω;`)。
今後はこのようなことがないように努めますが、作者は忘れっぽいタイプなのでないとは言い切れません。
もしまたミスしたらお詫びで連続投稿などしますので、それでご容赦ください。
誤字脱字や誤表記や設定ミスが多いのも、作者がどん臭いからです。
プロットありでこうですからね。もう自分でも自分の詰めの甘さが嫌になります……。
でも、一章が終わり次第改稿していきますので、その辺もよろしくお願いします。
こんなアホな作者の作品でよろしければ今後ともお付き合いいただけると嬉しいです。
ではこの辺で。次回をお楽しみに!




