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第37話『クッズ視点〜同じタイプの転生者〜』

 クッズ視点。


 堕天使ルシファーに憧れていた。そんな孤高の存在になりたくて俺様は研究者になった。俺様の研究者人生は落ちこぼれの一言だった。それでも研究が好きで一生懸命夢中になってやっている内に、それなりの権威のある研究者になった。それでも海外の大学には俺様以上の天才研究者なんて腐るほどいたし、元から知能指数がそれほど高くないこともあり、天才たちに及ばない天才の中の落ちこぼれだった。


 俺様はそれでも研究が好きで、特にタイムリープやタイムマシンの開発や異世界についての研究を行っていた。もちろん学会では馬鹿にされたし、これは科学ではなくただのオカルトだと異端児扱いされていた。


 しかし、俺様は、長年の苦労が実り、ついに異世界へ渡る転移装置の開発に成功した。しかし、その転移装置を使用すると、人が消えてしまい、行方不明になるという代物だ。だって異世界に転移しているのだから。

それを確認するため転移先の異世界で、その人物にスマホで動画を撮影して貰い異世界の存在を証明した……はずだった。しかし、それは転移装置と見せかけたトリックによるもので、この異世界の動画も事前に用意したAIで作成物に過ぎないただのCGだと馬鹿にされた。


 俺様の長年による苦労は水の泡となり、研究成果を捏造した疑いがあるとして、学会から永久追放処分が下された。


 それ以来俺様はアルコールに依存した。酒に溺れている時だけが生きているという実感を得られるのだ。そうやって酒浸りの生活を送っているうちに、俺様はつい自分が作った転移装置を自分でも使用したくなってしまった。


 こんな脱糞みたいな人生を送るくらいなら、異世界に転移して、科学による革命を起こした方が面白い。


 酔っていた勢いで、つい誘惑に負けてしまい、俺様は地球と永久の別れを告げて、転移装置を起動し、異世界へと転移に成功……するはずだった。しかし、半年も動かしていなかったせいで、機械の不具合により、俺様の肉体はひき肉にされて死亡した。


 そして、気が付くと、俺様はこのハラグロード村の領主として転生していたというわけだ。


 しかも、どうやらこの世界には俺様と同じ転生者や転移者が多いらしい。だが、俺様は転移者とは何度か出会う機会があったが、転生者には出会ったことがなかった。


 俺様はこの異世界の原作となるゲームのことはよく知らない。ただ自分が所謂悪徳領主に生まれたことだけは理解していた。記憶と魂が融合されたというのだろうか。科学的視点で自己分析してみたところ、自分の性格特性が本来の物とずれていることに気が付いた。


 俺様は悪徳領主らしく、好き放題やってやろうと決めた。それから前世ではあまりモテなかったので、たくさんの使用人の女に手を出しまくった。


 それから幾数年。この世界で、俺様は人が魔族に堕天するという現象に興味を持った。何故なら人間が人間の限界を超えて新人類とも呼べる存在へ進化を果たすというテーマは科学者としては、物凄く興味深かったからである。


 そして、俺様は異宝石というマジックアイテムに目をつけた。これを改良して、さらに強力な魔族を誕生させてやろう。


 そう心に決めて、幼い子供の奴隷を買い漁り、人体実験を繰り返した。どうせ社会的堕落者の子供だ。そんな命に価値はないから、罪悪感など微塵も抱いたりしなかった。失敗作は殺して処分し、成功した者は魔人国へ売りつけて金にする。


 こんなにも楽しいことが世の中にあるのかと、俺様の脳内は快楽物質で溢れていた。そして、ある日、俺様が異宝石の素材の採取に利用していたダッサイという男がある冒険者の少年の話しを持ちかけてきた。


 話しを聞いている限り、その少年は異世界人級の強さを所有しているらしく、俺様はすぐにその少年が自分と同じ転生者だと気が付いた。


 そして、その少年を殺して、身体を解剖することで、転生者の仕組みが分かるかもしれないし、意図的に転生者を作り出せるかもしれない。


 俺様はワクワクが止まらなかった。ああ。早くその少年を解剖したい。そんな気持ちでいっぱいだった。


 ここ最近俺様はその少年を直接ストーカーしていた。少年がやっているのは地味なフィジカルトレーニングや剣術の稽古ばかり、なんとつまらないことに時間の無駄遣いをしているのだろう。


 しかも少年はよく寝る人物だった。俺様が窓の外からドローンで観察する限り、最低十時間は眠っている。さらに昼間も昼寝までしているのだ。


 まるでやっていることは、一流のプロアスリートである。そして、少年の魔力指数。この世界で言うところの経験値という物を観察したところ、トレーニング時より、睡眠時の方が魔力指数の増加が多かった。つまりこの世界の最強のトレーニングは、身体に負荷を与えてから、質の高い長時間の睡眠を取るということになる。


 俺様は確信した。この少年は自分と同質の転生者だと、俺様は実験に特化しているが、少年は強くなることに特化している。違いはただそれだけだ。


 俺様はますます好奇心が抑えられなくなり、ドーパミンが溢れ出した。このルシフという少年は大変興味深い。


 俺様は決めた。今度の日曜日に少年に接触を図ろう。そして、できることなら、その強さも体感したい。俺様はおそらく簡単に敗北するだろう。それでも少年の全てを感じていたいのだ。


 ああ。早く解剖したい。そんな恋心にも似た気持ちが収まらなかった。

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