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第36話『闇堕ち新人冒険者潰しを分からせた件』

 すみません(´;ω;`)。昨日投稿するのすっかり忘れてました……。というわけで続きです。

 俺は母に頼まれた特別指定クエストをこなしてきた。と言っても【ワイバーンキング】が大量発生しているから、それの討伐という簡単な物だった。しかし、【ワイバーンキング】の素材は高値で売れるらしく、俺も金貨三枚も給料を貰った。


 これで当分の間は働かずに修行に専念できる。なんかダメ人間の思考回路だ。治験のアルバイトを受けまくって大金を稼いで、一か月働かずにゲームばかりしているような奴と全く同じ考え方である。


 正直、あのまま日本に残っていたなら、俺も似たようなことをしていただろう。いや、一人語りだけは得意なので、ゲーム実況者なんてやっていたかもしれない。


 とにかく転生しようが、しまいが、ゲームに夢中なのは、今も昔も変わらない。


 俺は今日から前世で学んだ剣術とこの世界の剣術を応用して、独自の剣術流派の開発を志すことにしていた。


 人の真似をするだけでは、強さに限界が来る。真似をしつつも独自性を見出さなければ、きっと異世界人たちの相手にすらならないだろう。


 だから、今日も剣術の修行に勤めるはずだった。しかし、俺の目の前にあの男が立っていた。


 銀の虎男ダッサイである。


 ダッサイは慣れ慣れしい態度で、俺に語りかけた。


「よう! ルシフ! 今日もひとりで修行とは精が出るなぁ!」


 俺はあくまで謙虚な姿勢でダッサイに応対した。


「何か御用でしょうか? また決闘の申し出なら、もうお辞めになられた方がよろしいかと思いますが?」


 ダッサイは下品なほどがはがはと豪快に笑った。


「決闘だぁ? んなぁケチなガキのまま事なんざぁ。もう昨日で卒業したよ!」


一体この男は何が目的なのだろうか。俺は単刀直入に尋ねた。


「何が目的ですか? この前の決闘で怪我をしたから、金を寄越せというなら、ギルマスに報告させていただきますよ?」


 ダッサイが笑いながら、とんでもない代物を俺に見せびらかせた。


「これはなぁ。食えば異世界人と同じくらいの強さを得られる宝石なんだぜ! へっへスゲェだろう?」


 俺は思わず叫んだ。


「やめろ! それを食らうと取り返しのつかないことになるぞ!?」


 ダッサイは俺の言葉を無視して、宝石を噛み砕いて、飲み干した。


「んなはったり聞くかよ! 今ここでてめぇをぶっ殺せりゃあ、わしはそれで満足だってんだぁ! うがああああああああああああああ!」


 ダッサイは身体がみるみる黒くなり、目が金色に輝き、鋭い牙に、悪魔の一本角に、黒い羽根を生やしている。間違いなくその姿は、魔族そのものだった。


 ダッサイの持っていた石は異宝石。食らうとその者を魔族に強制的に堕天させて、圧倒的なステータスとレベルを付与する禁断のマジックアイテムだ。


 ゲーム内でも、この異宝石を媒体として、ルシフはレビアや家族を転生させて、堕天させたのだ。


 その強さはラスボスのダンジョンの中ボスに相応しく、レベル30台後半のパーティーが四人いないときついレベルだ。


 おそらく単体のレベルは70か80相当。それも主人公たちより、圧倒的に高いステータスを有しての堕天化だったから、ダッサイもそれに近いパワーアップを果たしているだろう。


 つまりダッサイは俺への嫉妬心から、完全に人間を卒業して、闇堕ちしてしまったのである。


 俺は母から聞かされていたエピソードからとてつもない罪悪感を覚えながらも、それでも異世界人かそれと同等の強さを持つ強敵を前にして、好奇心が抑えきれず、脳汁がどばどばと溢れ出した。


「ダッサイ。完全に禁忌を犯したな。ふふふ。あっはっはっはっは!」


 ダッサイは俺を強く睨み怒号をあげた。


「なんだ? 何が可笑しい?」


 俺は素直な感想を口にした。


「これでようやく異世界人クラスの強敵と心置きなくやり合えるんだ! 俺のゲーマーとしての好奇心が疼いているのさ。あっはっはっはっはっは♪」


 ダッサイは恐怖したように顔を歪めた。


「こ、このガキ……。狂ってやがる……。こりゃあ、まるで戦いの鬼じゃねぇか……」


 俺は笑顔で頷いた。


「ああ。そうとも。俺は根っからのバトルジャンキーだ。さあ。戦おうか! 最高の試合を楽しもう♪」


 すると、ダッサイはにやりと笑った。


「甘い。甘すぎるぜ。クソガキャア! これは試合じゃねぇ。本物の殺し合いなんだよ。ごっこ遊びに夢中になっているガキにこのわしが負けるかよ。らあああああああああッ!」


 俺は興が乗ってきて、本気で【魔力強化・改】を解放した。圧倒的な魔力の渦に、周囲の木々が震えている。


 そして、刹那。秒。一刻。つまるところ一瞬でダッサイとの決着をつけた。


「がはぁ!」


 ダッサイは吐血し、その場に倒れた。その内容はこうだ。


 俺が高速で瞬歩を利用してもう接近。そこからの電光石火の居合抜きをみねうちを繰り出し、2度相手の足の骨を粉砕した。


 おそらく高位のポーションや、回復魔法を使わない限り完治は不可能だろう。


 つまり、俺はダッサイの冒険者人生に引導を渡したのだ。新人潰しを新人冒険者が潰すなんて、皮肉な話しだ。


 ダッサイは吠えた。


「貴様ぁ!? このわしの足をぉぉぉぉ! 殺せぇぇぇ! このまま惨めな恥をかくくれぇなら、いっそのこと殺せぇぇぇぇ!」


 まさかリアルくっころをこんな銀虎のおっさんに言われるとは思わなかった。だが、俺はそんな同情の余地を与えるほど優しくはない。いくら日本人としての記憶があるとは言え、心根は傲慢なルシフのままなのだ。


 俺は奴に向かって年下ながらも説教してやった。


「殺せだと? ふざけるな! お前は一体何人の新人冒険者を潰し、同じ目に遭わせてきたと思っている!」


 ダッサイは理性を失うほど吠えた。


「うるせぇ。殺せぇぇぇ。殺しやがれぇぇぇ! こんな惨めなまま終わってたまるかぁぁぁ!」


 俺は冷酷に、傲慢に、そして、今までこいつのせいで散っていった才能ある新人冒険者たちの魂を背負い、断罪した。


「いや。お前はこのまま惨めに終われ。異宝石の使用は大罪だ。このまま一生牢の中で、お前に潰された新人冒険者たちの分まで苦しんで、苦しんで、苦しみ抜いて、一生後悔したまま罪を償え! それが俺がお前にできる罰であり救いだ!」


 ダッサイは急に笑い出した。


「そうか。わしも、いや俺の夢もここで終わりか……。ははは。はっはっはっはっは……」


 俺は惨めなダッサイに同情しつつも、こいつの身柄を衛兵に引き渡した。そして、三日後、ダッサイは王都の牢へと連行されていった。


 その後、三日ほど、母さんはギルドを休んで引きこもったあと、なんてことないように笑いながら職場に復帰した。


 俺も上位プレイヤーに勝てない腹いせで、初心者狩りのようなことをするベテランプレイヤーは死ぬほど見てきた。自分が報われないからって、ゲームを楽しむ者を、人の夢を踏みにじる者を絶対に許してはいけない。


 そして、人の道を踏み外してまで、母さんを傷つけたあいつを、そして、その原因となる根源を生み出した自分の至らなさを、俺は二度と許すことはないだろう。


 さあ。もっと強くなるために修行しよう。もう決して俺の目の前で、新しい芽が摘まれることがないように、もう二度とそんな悲しい想いをする被害者が出ないよう守るために、今日も必死に鍛錬に打ち込むのであった。

 昨日は投稿を忘れてしまい申し訳ありませんでした……。カクヨムみたいに予約投稿機能使ってないので、ついつい忘れがちなんです(´;ω;`)。

 読者様へお詫びとして今日は四話連続投稿します。

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