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第34話『魔剣士無双』

 急な決闘騒ぎで、俺は冒険者ギルドの訓練場に来ていた。正直、面倒臭いことこの上ない。新人潰しの銀虎のおっさんは、木剣をぶんぶん片手で振っていた。どうやら力のステータス自体はかなり高いようだ。


「用意はいいか? クソガキャア!」


「はい。いつでも構いませんよ!」


 そのクソガキャアとか言う、汚い言葉遣いは、本当に辞めて欲しい。今時、そんな言葉遣いするチンピラのヤンキー親父なんて、古い昭和の漫画の世界だけだぞ。


 俺はあくまで魔剣士として礼節を忘れずにお辞儀した。


「よろしくお願いします」


 俺が頭を下げると、相手は礼を返そうともせずに、いきなり斬りかかってきた。俺はそれを半身ずらして回避する。


「ちっ!? このガキャア! やたらすばしっこいのう!」


「お褒めに預かり光栄です」


 俺はあくまで謙虚に礼儀を弁えた態度で接した。相手はこちらに余裕があるのが気に食わなかったのか。いきなり大技を放つべき【魔力強化】を全開にした。


「舐めた口聞くのもここまでじゃい! おんどれなぞ、わしのこの奥義でぶち倒したるわい!」


 相手の奥義は中央大陸免許皆伝奥義【エクストラブレイク】だ。まず食らったら即死は免れないだろう。でもそれは普通のステータスの魔剣士の場合だ。


 俺は特に魔力を練ることもなく、軽く剣を構えずに降ろした。相手はこちらが油断していると勘違いしたらしく、いきり立ちながら、豪快に叫んだ。


「余裕ぶっこいたのが、仇となったなぁ! 死ねやぁぁぁぁ!!」


 俺は敵の【エクストラブレイク】を人差し指二本で受け止めた。


「な、なんじゃこりゃあああああ!? なんでわしの奥義が通用せんのじゃい!」


 俺は指を軽く捻って、木剣をへし折り、自分の木剣を銀虎のおっさんへ向けた。


「もう理由は明白だと思いますが。説明が御入り用ですか?」


 おっさんは窮地に追いつめられて、口笛を鳴らした。


「お前ら、三人がかりでぶっ倒すぞい!」


 すると、後方から茶髪の犬耳男子と紫髪の猫耳女戦士が現れた。


「待ってした兄貴! 俺っちたちが組めば無敵っすよ!」


「あーしのダーリンによくも恥をかかせてくれたじゃんね。すぐぶっ壊してやるから覚悟するじゃんね!」


 今度は斧に、槍に、弓か。敵はそれぞれ武器特有の免許皆伝級の奥義を放ってきた。


「スノウ・インフィニティ!」


「タイラント・アックス!」


「レジェンドアロウ!」


 その三つの攻撃を俺は、少し魔力を纏わせた右腕の手刀を連続で捌き切り、すぐに相手の魔装備を三秒もかからないうちに、手刀で次々と破壊した。


「なんじゃとぉ!?」


「俺っちの斧が!」


「あーしのダーリンからのプレゼントが!」


 俺はすぐさま、冒険者カードで彼らの蛮行を録画した動画をお見せしてやった。


「あなたたちのしたことは、決闘の範疇を超える、れっきとした犯罪行為です。これをギルドに提出したら、どうなるかおわかりいただけますね?」


 俺がなるべく冷静に、謙虚な声音で告げると、三馬鹿はすぐにその場から逃げるように立ち去った。


「お、覚えてやがれぇぇぇぇ!」


 決闘が終了し、ちょうど見ていた観衆の声援が沸いた。


「すげぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! 新人潰しのダッサイたちのパーティーを素手で制圧しやがった!」


「これは規格外だぜ! まさかこんな化け物がこの村にいるなんてな!」


「きゃああああああああ! ルシフ様、素敵ぃぃぃぃぃぃぃ! 抱いてぇぇぇぇぇぇ!」


 またしても目立ってしまった。本気を出さなければあまり目立つことはないと思っていたが、逆効果だったようだ。


 そこですぐに母がやってきて事情を尋ねてきた。


「おい。ルシフ。この騒ぎは一体どういうことだい?」


「いやぁ。実はですねぇ……」


 俺は一連の騒動を軽く母に報告した。ちなみにあいつらが蛮行に及んだ動画もきちんと見せた。


 母はため息を吐いて、頭を抱えた。


「またダッサイのバカがやらかしたのかい……。あいつの本当に懲りやしないねぇ……」


「へぇ。そんなにあの新人潰しの人って、悪さしていたんだ」


 母はまた溜息を吐きながら、困り果てたように語り出した。


「実はね……。あのダッサイは長年Cランクでくすぶっている才能のないベテラン冒険者なのさ! 自分に才能がないから、自分より下の奴を潰す。そういうことを平気で行っているような連中なんだよ」


 母の話しを聞いて、俺は素直な感想を口にした。


「へぇ。やっぱり、とんでもないクズだったんだな!」


 俺の身も蓋もない言い方に母は苦笑した。


「はは。確かにクズには違いないが。あれはあれで、採取系のクエストをやらせたら右に出る者はいないからね。できればギルドとしても手放したくはない人材さ。残りの二人は処分して問題ないけどねぇ」


 俺は右手をポンと叩いて納得した。


「なるほど。非戦闘系要員ってわけか!」


 母も頷く。


「まあ。そういうことだね。だから悪いが、今回ばかりは目を瞑ってやってくれないかい? 奴等にはアタイが非戦闘系の採取クエストを一か月タダ働きさせて反省させるからさ?」


 母さんがそこまで言うのなら、致し方ない。俺はすぐさま動画を削除した。


「うん。わかった。動画も消したし。相手がこれ以上絡んでこないなら、俺も文句はないよ!」


 母はほっと胸を撫でおろし、俺に感謝の言葉を告げた。


「ありがとね。ルシフ。実はダッサイはアタイが世話になった先輩なんだよ。ここは母の顔に免じて許してやっておくれ! あいつにはきつくお仕置きしておくからさ?」


 俺は素直に頷いた。


「まあ。母さんの先輩って言うのなら分かったよ。俺も手加減したつもりが逆に変に相手を煽る感じになってしまったし。俺が調子に乗ってすみませんでしたって謝罪していたって伝えておいてくれ!」


 母さんは穏やかに笑い。俺の頭を撫でた。


「ほんっとうにアタイの息子は大した器だ。こりゃあ、きっと成功者人生確定だね!」


 俺は苦笑いしながら、心の中で、成功者人生とか興味ないしとツッコミを入れていた。


 どうにかこれで丸く収まりそうだが、あんまり積極的に活動して目立つのも、わりとリスキーなんだなと、改めて世の中の厳しさを思い知らされた。


 でも、何故か分からないが、これで終わらない気がする。なんとなくそんな予感がした。

 更新遅れてすみませんでした。決して忘れてたわけじゃありませんよ?

 これは帰宅途中の読者層をターゲットにするという緻密な計算による投稿ですw

 ええ。決して忘れていたわけではありません。というしょうもないジョークは置いておいてw

 いかがでしたか? ダッサイさん勝てなくて残念でしたねw

 あと少しだけダッサイの話しは続きます。

 そして、ダッサイよりもっとやばい奴が現れるので、こいつらが主人公に分からせられるところが見たい方はもう少しだけお付き合いください!

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