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第27話『ラストスパート』

 深部に入ってから、敵の数より質が上がった感じがする。ポップ数はそれほど多くはないが、あきらかにB級相当のモンスター達が数匹ずつ沸いてくるようになった。


 俺のステータスから考えたら、それほど強敵ではない。しかし、このブリファンというゲームは本来、四人一組でパーティーを組むゲームだ。つまり、ソロで挑むということは、純粋に考えて難易度が四倍ほど跳ね上がる。


 そうなれば、おそらく攻略にもっと時間がかかっていたことだろう。しかし、もう俺はソロで戦ってはいない。二人組のパーティーとして連携して戦っている。


「そっち行ったぞ? レビア!」


「任せて! 不死鳥の奥義札発動! フレアフェニックス!」


 炎の不死鳥が敵へと襲い掛かる。燃え盛る劫火に焼き尽くされて、B級モンスター【グレムリン】は命の焔が消え去った。


 続けて、俺も目の前の【グレムリンロード】に、ありったけの奥義を炸裂させる。


「エクストラブレイク!」


 巨大な剣で叩き斬り、二つの十字が敵に交差して敵を八つ裂きにした。俺は血糊を払って剣を肩に収めると、レビアとハイタッチを交わした。


「やったな! 二人の勝利だ!」


「うん。わたしたち息ぴったりだね!」


 この短期間でレビアは本当に強くなった。もう足手纏い扱いなんてできるはずがない。


 それにやっぱりゲームというものは、こうじゃないと面白くない。日本人だった前世でもMMO系のゲームをいくつか遊んだことがあるが、やはり友人と一緒にモンスターを討伐する方が面白い。友人との連携プレイで敵を撃破した時の爽快感は忘れられない思い出だ。


 一人での戦闘も楽しいことは楽しいが、やはり連携プレイでパーティー戦をする方が、ゲームしている感がある。


 まあ。ここはゲームではなく異世界で、今の本当の命と命を懸けた殺し合いなのだが。それでも、俺からしたら戦闘はやはりゲームと同じくらい楽しいのだ。


 いよいよ下層の攻略の大詰め。そろそろボス戦前の中ボスが出現する頃合いだ。気を引き締めていかなければ。俺はある程度の緊張感を保ちながら、レビアに発破をかけた。


「次はいよいよ中ボス戦だ。相手はB級上位モンスター【クリムゾンスパイダー】だ! 相手は炎の糸を飛ばして攻撃してくる。燃やされないように防御と攻撃の見定めを怠るなよ?」


 レビアは堂々と胸を張った。


「任せてよ。わたしだってもう立派な戦力になっているんだから。攻撃魔法札に込められる魔力の量も上がったし、どんな敵だって、へっちゃらだよ!」


 俺を思わず頬を掻いた。


「人間、そうやってイキっている時が、一番危ないんだけどな……」


 余計なことを言ったかと反省したが、どうやらそれが功を奏したらしく、レビアは俺にピースした。


「当然それは理解しているよ。わたしは何処かの、暴れん坊とは、知性のステータスが違うからね♪」


「言うじゃないか。頼りにしているぞ。相方!」


「了解!」


 相方なんて、つい言ってしまったが、ゲームでの相方とは友達以上または恋人の関係を表す。この世界では、そんな常識など浸透してはいないが、好きでもない男にそんなことを言われたと知ったら、きっとレビアは怒るだろうな。


「相方……。相方……。ふふふ……♪」


 なんか後ろでレビアが一人でぶつぶつ言っていて怖い。もしかして、相方の意味を知っていて、怒らせてしまったのだろうか。


 次からはあまり慣れ慣れしい呼び方をするのは控えよう。あまりにも無遠慮な発言はハラスメント行為に捉えられかねないからな。


 俺たちは最新の注意を払い、大空洞をどんどん奥へと進んでいった。その途中に巨大な大穴があり、そこにはボスの部屋らしき扉を発見した。


 しかし、問題はその巨大な空間は炎の糸が張り巡らされており、上を眺めると赤い蜘蛛がもそもそと動き回っていた。そして、その赤い蜘蛛は俺たちを視認すると、猛スピードで落下してきた。


「来る! 構えろ!」


 紅の蜘蛛は、その巨大な図体から焔の糸へと着地した。


「もしゃあああああああああああああああああああああああああああああッ!」


 敵は巨大な鳴き声を轟かせた。あまりにも巨大で大きな振動に、俺たちは思わず気圧されてしまう。なんとか、敵の威嚇を堪えて、俺は挨拶代わりに魔法を放った。


「マジックショット!」



 魔力をある程度は込めたのだが、敵にはあまり有効打にはなっていないようだ。心の中で(ステータスオープン)と唱えると、敵の生命力のゲージは一割しか減っていない。


 それでも痛いことに変わりはなく、敵さんはお怒りのようだった。


「もしゃあああああああああああああああああああああああああああああッ!」


 敵は炎の糸を俺たちへ吐きかけてきた。俺はすぐにそれを回避。レビアも魔法札を上手く使いこなし、敵の糸を防いでいる。


 しかし、やっかいなことに、この炎の糸は地面へ落ちても燃えていることだ。あまりの熱気に俺は思わず汗が滲み出てきた。


 これは長期戦に持ち込むとこちらが不利になる。そう判断して、俺はレビアに指示を出した。


「敵のヘイトを五秒ほど惹きつけてくれ! あの奥義をぶちかます!」


「分かった!」


 レビアはサムズアップすると、すぐに【アンガー】の魔法札を使い、敵のヘイトを自分へと向けさせることに成功する。


「もしゃああああああああああああああああああああああああああああああッ!」


 赤い蜘蛛は憤怒しながら、烈火の如く、紅蓮の糸を何度も何度もレビアに吐き出した。レビアも何重にも防御結界の札を重ねて、敵の攻撃を防いでいる。


 俺は現在魔力を貯めていた。相手を一撃で葬り去るほどの圧倒的な威力の新奥義。あれをアクセル全開で炸裂させてやるのだ。俺は魔力の質と量を限界まで引き上げる。もうこれまでかというほどまで増大に膨れ上がった魔の塊をその身に宿し、俺は高速回転でドリルのように敵に突っ込んだ。


「行くぞ! ゲーマーのプライドを思い知れ! ブラッドネスバースト!」


 俺は巨大な渦巻き状の魔力剣が敵の巨体を貫く。


「もしゃしゃああああああああああああああああああああああああああ……!?」


 巨大な爆炎と共に、B級上位ボスモンスター【クリムゾンスパイダー】は消滅した。


「はぁ。はぁ。はぁ……。ああ。爽快だった……♪」


 俺は全力を出し切り、【クリムゾンスパイダー】の撃破に成功した。敵が倒されると不思議なことに炎の糸はしゅうっと音を立てて消え去った。


 ステータスウィンドウを確認すると、魔力の量が3ゲームしか残っていない。つまりほぼ全魔力をあの一撃に注いだことになる。


 これは思った以上の消耗だ。俺はマジックポーションを六本ほど飲み干した。そして、気力回復のポーションも三本飲み切る。もう水分でお腹がぽちゃぽちゃだが、すぐに消化されて、魔力も全快して、精神的にも睡眠明けのような爽快感がもたらされた。


 後ろを振り向くと、レビアも回復を終えて、こちらに向かって駆け寄ってきた。


「ルシフ! やったね!」


 ハイタッチを交わし、俺も頷いた。


「ああ。これで、いよいよ下層のボス戦だな!」


「うん。これで最後だね……」


 名残惜しそうなレビアの肩に手を乗せ、俺はにかりと盛大な笑顔を見せた。


「ああ。だからこそ全力で楽しまないとな!」


 レビアは少し間を置いてから、すぅと息を吸い込み、美しくも精緻に微笑んだ。


「うん。そうだね。最後だからこそ全力で楽しもう!」


 俺はレビアと大笑いして、手を繋ぎ、楽しく爽快に叫びながら、巨大な蜘蛛の巣の穴の遥か下へとダイブしていった。


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