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第23話『無数のトラップ』

 中層の折り返し地点。そこから先は数々の罠が張り巡らされており、うっかりしているとあっという間に死亡ゲームオーバーになってしまう。


 むしろこのダンジョンはそういう謎や罠の困難さでエンドコンテンツ級として遊ぶことが前提となっているのだ。


 レベル的には雑魚敵ばかりなのに、その圧倒的な初見殺しの罠や謎により、ゲームオーバーとなって脱落した者は数知れない。


 そんな超高難易度ダンジョンへ挑むわけだから、俺もゲーム知識のおさらいのつもりで、このダンジョンを既に攻略したことのある異世界人の動画やブログなどで研究済みだ。


 レビアはあまりそういうことに疎いため、このダンジョンの危険な罠にあっという間にかかってしまう可能性がある。


 というわけで、俺はレビアにある提案をした。


「なぁ? レビア? おんぶしていいか?」


 事情を知らないレビアは顔を朱色に染めて慌てふためいた。


「えええッ! いきなりどうしたの? わたし怪我なんてしてないよ?」


 一々説明するのが面倒臭いので、簡単に伝えた。


「この先は罠が多い。つまりその罠の情報を知らないレビアの身が危険というわけ。おーけい?」


「う、うん。そういうことなら、いいよ。むしろ好都合だし……」


「何か言ったか?」


「ううん。何でもないよ。気にしないで……」


「ん? まあ。よく分からないが、それじゃおぶるぞ?」


「う、うん。優しくしてね……」


 俺はレビアをおぶると、なるべく【魔力強化】を最大値まで強化して、それをレビアにも纏わせた。それからレビアに俺はある指示をした。


「いいか? 俺が使えと言ったら、すぐに防御結界の札を使え。レビアはそれさえ守ってくれたら安全だからな?」


「う、うん……。わかった!」


「よし! じゃあ、行くぞ!」


 俺は高速で通路を駆け出した。その途中巨大な岩が落ちてきたので、俺はすぐに指示を出した。


「レビア、使え!」


「了解! えい!」


 すぐに防御結界が展開されて巨大な岩は俺たちの目の前へと転がり落ちた。俺はそれを全力で斬り飛ばした。


「はあ!」


 四つの十字に切り刻まれて、巨大な岩はあっけない崩壊した。俺はここで一度レビアの生命力を冒険者カードでチェックした。やはり防御結界を使用したといえ、一割ほど生命力が減っている。俺はおぶっているレビアにポーションを手渡した。


「一応、飲んでおけ。ここから先はこんな罠だらけだからな!」


「ふえぇぇぇ~~。わたし何だかもう心が折れそうなんだけど……」


 俺は弱音を吐くレビアに喝を入れた。


「何言っているんだ! いい錬金術師になるために最高のアイテムを作るんだろ? ならこんなところでくじけてどうする? お前の夢はその程度の物じゃないはずだろ?」


 俺の喝にレビアはむっとなって、きつく言い返してきた。


「そんなの当たり前じゃない! わたしだって本気で凄い錬金術師を目指しているんだから。こんなことでくじけてなんかいられないもん!」


 流石はレビアだ。好きなことに対しては一生懸命。俺はレビアのそういうところを凄く気に入っている。


 俺はレビアの意気込みを称賛した。


「それでこそ俺の幼馴染だ。じゃあ、一気に攻略するぞ!」


「おお~~!」


 二人の心が一つになり、俺たちは次の罠に向けて駆け出した。数秒進むと、次は無数の針が飛んできた。俺はすぐにその針を全て剣で捌ききる。


「うわ!」


 レビアは驚いて目を閉じているようだが、この程度の速度の針を捌くくらい、俺の技術ステータスの高さや、中央大陸剣術を極めている身からしたら余裕だった。

しかし、そのあと、壁が自動で動き、俺たちを挟み込もうとしてきた。俺はすぐに壁に挟まれてぺたんことなる前に、超特急でダッシュした。


「ひえええええええッ!」


 壁を抜けてから、俺はすぐにレビアに解毒ポーションを手渡した。


「これを飲め。あの針は液体がかかっただけでも軽い毒状態になりかねないからな」


「わ、わかった……」


「よし。ここからは飛ばしていくぞ!」


「うん……」


 背後を振り返ると、彼女はもう瞳が死にかけている。当然だ。これがエンドコンテンツ級ダンジョンの厳しさである。ゲーム本編なら、軽いダメージを受けるトラップはあっても、即死に繋がる物は存在しない。だから本編はぬるいと馬鹿にされがちなのだ。それはストーリーをメインに楽しむライトユーザーに配慮した結果だろうが、そのシナリオで失敗しているのは、如何な物かという不満を抑えつけて、今はこのピリピリの緊張感を全力で楽しむことにした。


 先へ進むと、次は炎のトラップ。水のトラップ。雷のトラップ。風のトラップ。数えきれないほどのトラップをくぐり抜けて、俺たちは最終関門へと差し掛かった。


「来た。最後の難所だ!」


 そこにはクリスタルで生成された巨大な壁は道を塞いでいた。これは冗談抜きで、破壊することができない。何故ならこの鉱石はレアクリスタルという作中でもかなりのレアアイテムだからだ。


 伝説級の功鉱石を目にして、さっきまで死んでいた瞳をしていたレビアが背中の後ろで急にハイテンションに叫び出した。


「うわああああああああッ! あれって伝説のS級素材のレアクリスタルじゃない! ねえ? ルシフ。あれも持って帰ろうよ!」


 やはりそう来たか。絶対に言うと思ったんだよな。俺は興奮するレビアを宥めるように言い聞かせた。


「まあ。待てって。まずはあのトラップを破壊しないことには入手は不可能だ。それにあのトラップは絶対に破壊できない」


「ええ!? それってあのレアクリスタルは入手不可能ってこと?」


 残念がるのが背中越しに伝わってくる。しかし、俺はすぐにレビアの絶望を希望に変えた。


「大丈夫だ。このトラップは簡単な方法でクリアできる。クリアさえすれば、報酬として三つだけレアクリスタルが手に入る」


 レビアは残念がるような声を響かせた。


「ええ。三つだけなの? できれば十個は欲しいんだけど?」


 これはとんだわがまま錬金術師様だ。でもなんだかんだ身内に甘い俺は、つい恰好をつけてしまった。


「じゃあ。またこのダンジョンを何度でも周回すればいいだけだろ? それに、これもそれなりにだが、他の高難易度ダンジョン攻略の訓練にもなるからな!」


 つい甘やかすような発言をしたため、レビアは浮かれてとんでもない発言をした。


「やったぁ。わたしルシフ優しいから、大好き!」


 またそうやって思わせぶりな態度で男を惑わす。俺はすぐにレビアに注意した。


「お前さぁ。気もない男に大好きとか簡単に言うなって。勘違いしちゃうだろ?」


 すると、レビアは俺の背後で何かぶつぶつ呟いた。


「勘違いじゃないんだけどな……」


「ん? 何か言ったか?」


「べ、べっつにぃぃ! それより早くトラップ解除に集中しようよ!」


 ド正論をぶつけられて、ぐうの音も出なかった俺は、眼前のトラップに意識を集中した。


「じゃあ。壁を破るぞ?」


「うん。ゆっくりしてね?」


 俺は言われた通り、ゆっくりと麻痺毒ポーションをぶっかけた。すると、壁はあっという間に、小石サイズの三つの石へと変化した。


「す、すごい! 本当にレアクリスタルが手に入っちゃった!?」


 俺は軽く笑いながら、レビアに祝福の言葉を贈った。


「伝説級アイテム入手おめでとう。この次はいよいよボスの部屋だぞ? 準備はいいか?」


「うん。覚悟ならとっくに出来ているよ。でもその前に作戦会議するんでしょ?」


 どうやら彼女もダンジョン攻略というものがわかってきたらしい。俺はすぐに声を張り上げた。


「じゃあ。早速作戦会議を始めるぞ?」


「うん。よろしくお願いします」


 なんとか中層のボス部屋に辿り着いた俺たちは、この先の強敵相手の作戦をなるべく分かりやすく伝えることを意識して、レビアに語り始めた。

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