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第21話『ハラグロードダンジョン中層』

 中層は比較的モンスターの出現率が多い。俺は守る対象がいるのにも関わらず、半分バーサーク状態に陥っていた。


「あっはっは。面白い。面白過ぎる♪」


 俺は次々とリザードマンを屠り、一匹ずつ撃破する度に脳汁がドバドバと溢れ出てくる。もう止められないと言った感じで、気が付けば戦闘が終わっていた。


 そんな俺にレビアに近寄りマジックポーションを手渡してきた。


「もう! さっき自分で、神経がすり減るからペースに気をつけろよとか言っていたばかりじゃない。中盤からそんなに飛ばしていたら、魔力が持たないよ?」


「平気。平気。戦うことは俺にとって最高の娯楽だから!」


「はぁ。ルシフって昔から戦い好きだったけど、最近は度が過ぎている気がする。わたしちょっと心配だなぁ……」


 その発言を聞いて、上層での緊張感を思い出す。そうだ。今、俺は自分一人で戦っているわけじゃない。レビアを守らないといけないんだ。彼女を不安にさせるなんて幼馴染失格だ。俺は反省して、レビアに頭を下げた。


「ごめん。レビア。今は君を守らないといけないのに、いつもの悪い癖が出てしまったよ。次からは気を引き締めていく!」


 レビアはぱっと明るく笑顔を見せてくれた。


「ありがとう。やっぱりルシフは優しいね!」


 俺はそんなべた褒めされると、ちょっと恥ずかしいので、つい素っ気なく答えた。


「べ、別にそんなことないってば。ほら、さっさと先に進むぞ!」


「うふふ。はぁい♪」


 全くレビアは気のない男を持ち上げ過ぎじゃないだろうか。幼馴染だからこそ、そこまで気を遣う必要ないのに。


 それから茶色い石壁だらけの通路を進むと、またしてもモンスターが出現した。相手は【オーク】だ。


 皆思うだろう【オーク】なんて大した敵じゃないだろうと。しかし、ブリファンの【オーク】はかなり強いモンスターだ。


 序盤の雑魚的討伐クエストの中でも、かなりの難所であり、実質ルシフのチートがなければ突破するのは難しいと謳われているほどである。


 それでも、俺はルシフ抜きでもプレイしてクリアできたので、おそらく勇者ミカリスたちも苦労はするだろうが突破できるだろう。


 奴等に魔人サタナスを倒して貰わないと、尻拭いをするのは、俺だからな。


 まあ。魔人サタナスを討伐しても、魔人アスマデウスがどう出るかだが、勇者パーティーに加入していない俺の故郷を狙う可能性はほぼ零と断言できる。


 あるとするなら、よほどイレギュラーな事態に発展した場合のみである。


 思考が逸れてしまったが、俺は目の前の経験値を見つめて、目を輝かせた。


「さてと。レビアに気遣いつつ、戦闘を楽しませてもらうとしますかぁ!」


 俺はあえて【魔力強化】を使用しなかった。魔力の消費節約もあるが、通常の力で挑む方が面白いと思ったからだ。


 舐めプすんなよという話しだが、戦闘内容に関して妥協するつもりは毛頭ない。俺は無の刀を構えると、【オーク】相手に煽りをかました。


「さて。デカ豚さんたち。ちょっとは俺を楽しませてくれよ?」


 まるで原作ルシフそのもののセリフだが、オークは憤りを覚えたらしく、全てのヘイトが俺に向けられた。


 よし。これでレビアの安全を確保しつつ、戦闘を楽しむことができる。俺は目の前の大きな豚たち相手に気持ちを昂らせた。


「行くぞ! らあああああああああああッ!」


 まずは一匹目、首を連続で瞬時に斬り落とす。二匹目、胴体を斜め十字で切断する。三匹目、唐竹割からの二重の切り口で両断する。四匹。五匹。六匹目は二連続の回転斬りで一気に屠る。ラスト七匹目は思いっきり腹部に横蹴りを入れて、二連続で腹部に蹴り込みが入り、壁までぶっ飛ばして、頭部をぶつけてあっけなくダウン。


 今、確信した。下手に【魔力強化】するより、こっちの方が面白い。まるで格ゲーで遊んでいる感覚だ。


 俺は聖水をオークたちにさっと振りかけて、灰に変えた。当然、血糊がついた刀や俺の身体にも聖水を振りまき、汚れを落とす。


 背後にいたレビアが、俺に駆け寄り、無邪気に興奮していた。


「凄すぎだよ! ルシフ! 魔力強化を使わないで、敵を圧倒しちゃうなんて、なんか戦いの達人みたい!」


 俺ははははと控えめに笑って、頬を掻いた。


「そんなことないよ。これも修行の成果さ。誰だって努力すればこれくらいできるようになるさ。まあ。正しい努力をした場合だけどね……」


 俺の含みを持たせた発言にレビアは首を傾げた。


「それってどういう意味?」


「それは企業秘密さ。そのうちみんなが強くならないと、世界がやばいみたいな事態が来たとしたら、特別に教えてやるよ!」


 俺がにやっと悪戯っぽく笑うと、レビアはがっくりと肩を落とした。


「そんなぁ~~。興味を持たせておいて秘密とかずるいよ……」


「ははは。まあ。そんな事態はきっとこないさ。来たとしても俺が全力でみんなを守るよ!」


 俺は目力を込めて、堂々と断言した。これは覚悟だ。いくら破滅フラグを回避したと言っても、ここから先はシナリオにはない不測の事態が待ち構えている可能性が高い。その時に俺がしっかりしなくてどうする。そういうことだ。


「流石ルシフだね。頼りになるなぁ~~!」


 俺は軽く微笑して、レビアの肩に手を置いた。


「さあ。先へ進むぞ。おそらくもう少しで、楽しいイベントがあるからな!」


「へ? そうなの? じゃあ、早く行こうか! なんだか好奇心が刺激されて気になっちゃうよ!」


「ははは。レビアらしいな。じゃあ行くか!」


 流石はレビアだ。錬金術師というだけあって好奇心旺盛だ。と言っても、子供騙しみたいなイベントなので、それほど面白いかどうかは人によるが、ゲーム内であれをクリアするのにけっこう苦労した覚えがあるけど、これから彼女の手腕を確かめるためにも、最初はレビアにやらせてやろう。


 そう決めて、俺たちは中層の先へと進んだ。



 歩くこと数十分。そこには巨大な鉄門と、そのちょうど前に竜の銅像が建てられていた。そう、ここが、中層の最初の難問。【竜の試験】である。


 隣で竜の銅像を眺めているレビアは、なんだか嬉しそうに笑っていた。


「へぇ! あの銅像すごくよく出来ているよね。昔の人の技術力ってやっぱり凄いなぁ!」


「全くだ。俺もそう思うよ」


 そりゃなんたってマップデザインを担当しているグラフィッカーたちの命がこもっているからね。遊ぶ側として制作スタッフへの最大の敬意は払って当然である。


 まあ。ここは異世界だし、作成したのは、おそらく神話の神的な存在なのだろうが。


 俺たちは竜の銅像の前に立つと、銅像は渋いおっさんボイスで囁いた。


「汝ら。この先へ進みたくば。我が試験を突破せよ!」


 ようやく来た。中層の難問【竜の試験】開始だ。

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