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第17話『ハラグロードの遺跡攻略クエスト』

 レビアとのデートは失敗に終わった。もう二度と口を聞いて貰えないだろう。何せ、理由はよく分からないが、彼女を怒らせてしまったのだから。しかし、そう考えていたのは、俺だけだったようで、彼女はけろりとした態度で、今日も俺の家を訪ねてきていた。


 そして、俺にとっても好都合な依頼を持ちかけてきたのだ。


「ねえ、ルシフ? 錬金素材を集めるために、ダンジョン攻略に付き合ってくれない?」


 ダンジョン。そのワードを聞いただけで、ゲーマーとして断る理由など、一つたりともなかった。


「もちろんいいよ。でも、何処のダンジョンへ向かうんだ?」


 レビアは冒険者カード。要するにスマホを取り出して、地図を表示させた。


「ここ。この近くにあるルシフと勇者様が攻略した、ハラグロードの遺跡ってところ!」


「ああ。あそこね……」


 まあ。予想はしていたが、またあの低レベルダンジョンへ向かうことになるとは。しかし、彼女の発言は俺の予想を大きく裏切るものだった。


「今回はルシフと勇者様たちが攻略した上層だけじゃなくて、Cランク冒険者でも困難と言われている、下層まで攻略するつもり。そこでしか作りたいアイテム素材が入手できないの」


 下層。つまりはある程度骨のあるボスとも戦えるというわけだ。俺は胸のワクワクが止まらず、二つ返事で了承した。


「いいよ。行こう。今すぐ行こう。一応、ギルドにはダンジョン攻略の手続きはしておいて、早速攻略に向かおうか!」


 レビアは嬉しそうにその場で跳ねた。


「流石ルシフだね。頼りになるなぁ!」


 どうやら彼女は思ったよりも、昨日のことを引きずっていないらしい。よく考えたら俺みたいなお友達としてしか見られない男子に、何かしらの心の地雷を踏まれたくらいどうってことないのかもしれない。なんだか、自分だけへこんでいて、損した気分である。


 それはそうと、ダンジョン攻略である。それも勇者と攻略した上層ではなく、下層だ。これで燃えなきゃゲーマーじゃない。俺は居ても立っても居られず、席を立ちあがった。


「早速ギルドにクエストの受注へ向かおう。俺はダンジョン攻略が楽しみで仕方ないんだ!」


 レビアは少しポカンとした表情をしたあと、軽く微笑して、頷いた。


「ふふ。それでこそルシフだね! じゃあ早速、冒険者ギルドへ行こうか!」


「おう!」


 俺たちはすぐさま自宅を出て、冒険者ギルドへと駆け出した。


 ギルドへ辿りつくと、今日も義妹のベルゼナが真面目に働いているようだ。最近は俺もよくキマイラ討伐クエストや、ワイバーン討伐クエストなどをして働いているため、兄としての引け目はない。


 それに今回の仕事はダンジョン制覇だ。勇者ミカリスといた頃の俺では不可能だった領域への挑戦。これは兄としての威厳を示すには、充分過ぎると言ってもいいだろう。


 俺たちは、順番を待っている冒険者たちの列に並ぶと、一人、また一人とクエストの受注が処理されていった。そして、待つこと三十分。ようやっと俺たちの出番が回ってきた。


「ようこそ冒険者ギルドへ。本日はどのようなご用向きでしょうか?」


「これだ!」


 俺は冒険者カードの依頼一覧を見せた。そこにはハラグロードの遺跡の完全制覇希望が選択されてある。思わずベルゼナは声を荒げた。


「ええ! お兄ちゃん。あのダンジョンをソロ攻略するつもり!?」


 つい私語が出てきてしまっていたが、今回は注意せずに、話しを進めた。


「いや、違う。レビアも同伴する。こう見えても、レビアもレベルは12。しかも俺と同じCランク冒険者だ。ダンジョン攻略の条件を満たしている。文句ないと思うけどな?」


 そうレビアのジョブは錬金術師。つまり錬金術を必死にやっていれば、勝手にレベルが上がるのだ。しかも、錬金術師として冒険者登録もしており、街中の依頼をコツコツとこなしている。その成果によって、レビアは試験なしでもCランクのライセンスを所持しているのだ。


 それにレベル12といったら、原作ゲーム本編なら、序盤の二番目のボスを討伐できるくらいの強さだ。錬金アイテムさえちゃんと補充していけば、そう簡単にやられるレベルではないだろう。


 ベルゼナはしばらく黙考したが、諦めたかのように微笑した。


「そこまで言うなら、分かったよ。レビア姉も冒険者カード提出して!」


「はぁい。お願いね。ベルゼナちゃん!」


「任されました! じゃあ、ちょっと待っていてね!」


 ベルゼナは俺たちの冒険者カードを受け取り、マナコンを操作して手続きしてくれた。そして、俺たちそれぞれに冒険者カードを返却した。


「これで二人組でのパーティーでのクエストの受注は完了ね。まあ、あそこは今アレだから、無理だと思うけど、このダンジョンを制覇出来たら、二人ともBランクに昇級できるから頑張ってね!」


「おう! 任せとけ!」


「そうそう! わたしとルシフが組めば百人力なんだから!」


 俺たちはベルゼナにぐっと親指を突き立てて笑った。ベルゼナも同じように、にかっと笑い、俺と同じ仕草を返してくれた。


「それでは、冒険者様方の無事なご帰還をお祈りしております。頑張ってくださいね!」


 レビアはすぐにマニュアル対応に戻り、礼儀正しく頭を下げた。


 俺たちはベルゼナに手を振りながら、冒険者ギルドを後にすると、レビアが今後の方針を話そうと、例の噴水のベンチまでやってきていた。


 そして、レビアは簡単な手順の説明を開始した。


「それじゃあ。ダンジョン攻略に向けて、わたしはポーションは沢山とマジックポーションをたくさん。あと魔宝札を沢山に、寝袋に、六日分の食事と、とっておきのマジックアイテムを用意しておくね?」


「了解。ポーションとマジックポーションについては、俺の方でもいくらか用意する。それと俺は知性のステータスが低いから、状態異常や魔力属性耐性のアクセをいくつか装備しておくよ!」


「了解!」


 そう知性のステータスはただ頭が悪くなるだけがデメリットではない。状態異常や魔力属性などの耐性を数値化したものでもあるのだ。


 つまり、俺は魔法攻撃と状態異常にはすこぶる弱いということになる。最低でも30パーセントくらい全ての状態異常を軽減する効果があるアクセと、全魔法攻撃に対して30パーセントくらい耐性のあるアクセが必要となる。

 

 こんな序盤の村でも、オーダーメイドならいくらでもアクセを作成してくれるだろう。当然、自身の弱点にはゲーム知識があるおかげで、前から気が付いていたので、素材だけは集めている。問題は金だが、こればかりは貯金を切り崩すしかないだろう。それにダンジョン制覇はかなり儲かる。きっと元は取れるはずだ。


 今後の対策が固まったところで、俺はレビアに手を差し出した。


「今回のクエストはかなり大掛かりになると思う。だから、その、よろしくな!」


「うん! それに言い出したのはわたしだし、こちらこそよろしくお願いします!」


 俺たちは固く握手した。その瞬間より、ハラグロードの遺跡制覇のクエストが本格的に始動した。


 今日のお話しいかがでしたでしょうか? 明日は32話まで投稿します。そこからは毎日一話投稿です。今度とも拙作とお付き合いいただけると嬉しいです。ではまた。

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