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第142話『本当の戦い』

 俺は思わず笑ってしまった。なぜなら懐かしいという気持ちの方が強かったからである。


 俺はミカリスに語りかけた。


「久しぶりだな。ミカリス!」


 ミカリスはくつくつと嗤った。


「こっちはもう何週間もお前の顔を見ているというのに、お前は全く気が付かない」


 そして、少し悲し気な瞳で呟いた。


「僕はまるで自分だけ取り残されているみたいで悲しかったぞ。ルシフ!」


「それはすまなかった……」


 俺は少し目を伏せた。


 そして、ミカリスをきつく問い詰めた。


「そんなことよりも、なぜ闇に堕ちた? 答えろ! ミカリス!」


 その言葉を聞いた途端、ミカリスはくつくつと嗤った。


「あっはっはっはっはっはっはっは。何故、闇に堕ちたかって?」


 次の瞬間、ミカリスはありったけの感情をぶつけてきた。


「そんなの決まっているだろうが! 裏切ったお前への復讐のためだ!」


 憎悪に満ちた瞳にたじろぎながらも、俺はなんとか聞き返した。


「復讐だって? 俺が一体お前らに何をした!」


 ミカリスは憎悪に燃えながら、言葉責めを始めた。


「したさ! お前は僕らにたくさんのデメリットを与えた!」


 思い当たる節はあるが、俺は苦し紛れに、聞き返した。


「じゃあ、その理由を言ってみろよ!」


 ミカリスは淡々と理由を述べた。


「まずひとつお前は僕らのパーティーに入らなかった。そのせいで僕は苦戦した!」


 ミカリスはさらに責め立てた。


「さらにふたつ。お前は僕らが苦労している間に自分だけのしあがった! そのせいで僕らはお前に激しく嫉妬して苦しんだ!」


 そして、トドメを刺しにきた。


「最後に三つ。お前が努力チートとかいう、くだらない情報を伝説の動画配信者に流したせいで、魔王軍はさらにパワーアップして、僕らは魔人王戦で全滅した!」


 これは俺も言い逃れはできない。しかし、俺は自分の正直な気持ちも述べた。


「それは違う。あの努力チートはお前らを助けようとして出した情報だったんだ!」


 かつての俺は知性が低かった。だからミカリスが追いつめられる結果になるなんて予想もしていなかったのだ。


 しかし、ミカリスは完全に残酷な現実を突きつけた!


「でも僕らは死んだ。その復讐心から魔王に堕天化した!」


 ミカリスは人差し指を突き刺した。


「つまり勇者パーティーを全滅させ、僕という魔王を生んだのはお前の責任なんだよ! ルシフ・ホープゥゥゥッ!」


 その瞬間、会場はミカリスへの同情が集まった。


「そんなのあんまりだろ! これが元仲間へすることか!」


「ルシフなんて原作じゃ魔王だろう? 絶対にあいつも魔王に違いない!」


「そうだ。そうだ。あの強化奥義だって魔王特有の物じゃないか!」


「お前なんて死んでしまえ! 偽英雄!」


 大ブーイングが巻き起こり、会場が騒然となった。ミカリスはにやにやと嗤っていた。してやったと言った感じだ。


 あまりの大ブーイングに、俺のイライラはマックスになり、強化奥義【傲慢の魔王・弐式】を発動させ、この会場を壊してしまいかねない、魔力と解き放ち、最大な叫びで会場を黙らせた。


「黙れ!」


 俺の一声で、まわりは一瞬にして静まり返った。そして、俺はたった一言告げた。


「いま本当のことを話す! だから黙ってくれ!」


 この【傲慢の魔王・弐式】の姿は、黒い髪に、赤い瞳、女顔だが、いまいち冴えない高校生である倉杉卓也をベースにしている。


 服装の色も黒いままだ。魔力の羽は赤。天使の輪も赤だ。


 そして、俺は本当のことを話した。


「俺はルシフ・ホープであり、ルシフ・ホープじゃない!」


 どういうことだと会場が騒然となり、俺は自分の正体を告げた。


「俺の前世は倉杉卓也。ただこのブリファンという世界が大好きなだけのただのゲーマーだ!」


 その答えに、ミカリスも驚いていた。俺はありのままを語った。


「本来、魔剣士ルシフは勇者ミカリスが手を抜いたせいで、故郷を滅ぼされて闇堕ちする運命だった魔王だ!」


 俺は続けた。


「それがなぜか分からないが、猫を助けてトラックに轢かれた途端、俺はこの世界の魔剣士ルシフと魂の融合を果たしたんだ!」


 そして、俺は持論を述べた。


「この世界のゲームをプレイした人なら分かるだろ? 自分の家族や大切な幼馴染が闇堕ちまでして、自分も人間じゃなくなり、世界を敵に回して破滅する悲しい結末を!」


 俺は本当のことをはっきりと告白した。


「だから俺は、勇者パーティーを離脱して闇堕ちした魔王に転生したから、初手から破滅フラグをぶっ壊すために、勇者の仲間にならないことにしたんだ!」


 周囲が騒然とするなかで、俺は本音を語った。


「俺は大切な家族や幼馴染を守れて、ゲーム世界を楽しみながら、田舎に引っ込んでいたらそれでよかったんだ。でも、それは違った――」


 俺は周囲に分かるようにこの世界の真実を口にした。


「あくまで推測だが、この世界は女神によって操作されている。俺が転生したのも、英雄になったのも、その一端だ。真の黒幕は勇者でも魔王でもなく、女神なんだよ!」


 周囲はざわつき始めた。俺は大切なことなのでもう一度言った。


「いいか? 俺たちの敵は魔王ミカリスでも、魔王ルシフでもない。女神だ! 女神はこの世界をめちゃくちゃにしようとしている! それはあの伝説の動画配信者や、多くの異世界人と遭遇した腹黒貴族であり転生者クッズ・ハラグロードによる証言でもある!」


 俺はその時に会話したことを【リプレイ】の魔法札で立体映像として映しだした。この魔法は俺が体験したことを再生する魔法をマジックアイテム化した物だ。


 俺はミカリス対策に、もしものことを考えて用意しておいたのだ。


 解き放たれた思い出からは、全ての事実が明らかになった。これで俺が嘘を吐いているという証拠はなくなったはずだ。


 そして、師匠との邂逅も、【傲慢の魔王】を習得した時の映像も、全て映し出した。


 当然、俺の前世もだ。これで周囲の人間は納得したように騒ぎ出した。


「あれって対戦RPG全国大会優勝者の倉杉卓也じゃねぇか?」


「しかも、あの伝説の動画配信者が言っているなら、信ぴょう性もあるな!」


「まさか女神が敵だとは、転生者も俺たち現地人もみんな騙されていたってことか!」


 周囲が騒然とする中で、俺は再び言い放った。


「だけどな! そんなことは関係ない! 俺は、俺はな……!」


 俺は瞳を輝かせながら、熱く語った。


「俺はこのゲームが、戦いが大好きなんだ!」


 さらにその熱さをヒートアップさせた。


「俺は勇者ミカリスと、こいつと全力で戦いたい。それこそが俺のゲーマーとしてのプライドなんだ!」


 俺の言葉に周囲は黙り込んでいた。しかし、共感して「それでこそゲーマーだ!」と拍手してくれるものもいた。


 だから俺はミカリスへ刃を向けた。


「だからやろう。ミカリス。俺は、お前と命を懸けて、本気で戦いたい!」


 刃を向けながら、俺はこう言い放った。


「俺と一緒にこの戦いを全力で楽しもうぜ!」


 俺の発言にミカリスは膝をついた。


「嘘だろ? お前はルシフじゃないのか? 偽物なのか?」


 ミカリスはショックを受けながら、立ち上がり、俺にこう告げた。


「お前が偽物というのなら、殺してやるぅ! 殺してその魂を食らい尽くし、最大の友であるルシフを魔王として復活させるんだ!」


 どうやらミカリスは勘違いしているようなので、はっきり言ってやった。


「違うぞ? ミカリス。俺もルシフと混じった本物のルシフなんだよ!」


 ミカリスは俺に憎しみの瞳を向けた。


「関係ない。僕を騙したのに、違いはない!」


 ミカリスは刃を向けた!


「お前には死んでもらう。行くぞ! ルシフ・ホープ!」


 意図は違ったが、それでも全力で戦えるというのなら、それで本望だ。


 俺も魔剣を構えた。


「来い! 魔王ミカリス!」


 こうして、俺たちの本当の戦いが始まった。


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