第141話『決勝戦』
今日はいよいよ決勝戦だ。期待と不安が混じりながら、俺はステージの上に立っている。
同じく金髪の男もステージの上に立っており、嗤いながらこちらを見下している。
俺はレビアから受け取ったサブウェポン【黒不死鳥のグローブ】と【黒不死鳥のグリーブ】を装着している。
さらに【傲慢の魔剣+3】も【傲慢の魔剣・改+3】へと進化を果たしている。
合わせて攻撃力は八万オーバーだ。伝説の動画配信者さんと並んでいる。
俺が試合はまだか、まだかと待ちわびていると、金髪の男が語りかけてきた。
「ずっとこの日を夢に見ていた。ようやく君と殺し合えるこの日がね!」
相変わらずの厨二病サイコパスっぷりにどん引きなのだが、それでもこいつは試合相手には違いない。俺は敬意を払って発言した。
「いい試合にしよう!」
俺の言葉に金髪の男は皮肉っぽく「ふっ」と嗤っていた。ここで審判のルール説明が入る。
「ルールは第一試合や第二試合同様、相手を気絶させるか殺すかした方の勝ちとなります!」
やはり殺しはありのルールか。これはなかなか厳しい戦いになりそうだ。
審判は真剣な面持ちで続けた。
「それでは両者準備はよろしいですか?」
俺は不本意ながらも頷くと、金髪の男も愉快そうに頷いていた。奴は俺をまるで積年の恨みでもあるかのような視線を送っている。
やはりとんでもないサイコパスである。そして、審判は合図を出した。
「両者構えて!」
俺たちはそれぞれの片手剣と刀を構える。こちらは黒と赤の刀。むこうは黒と青の片手剣だ。同色だが、刺し色は正反対。
俺は愛剣を納刀して構えると、審判は盛大に手刀を切った。
「それでは試合開始!」
ゴォォォンとゴングが鳴り響き、俺たちは魔力を解放した。
「強化奥義――【傲慢の魔王】!」
その瞬間、俺の姿が全身真っ白になり、白い天使の魔力羽と白い天使の輪が浮かぶ、その姿に会場は沸いた。
どうやら金髪の男も何かの強化奥義を使用したらしく、青黒いオーラが漂っていた。白と紫のオーラと、黒と青のオーラそれぞれが迸り、最高潮に達した。
その刹那。俺はたちは一歩足を踏み入れた。全力の懸け足とともに、互いの剣をぶつけ合う。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」
「てやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
激しいぶつかり合いの後、金髪の男は憎しみに満ちた瞳で嗤っていた。
「殺してやるぞ。魔剣士ルシフゥゥゥ!」
俺はその憎しみに対して純粋な想いをぶつけた。
「金髪の男。俺は楽しいよ。こんな強い奴と戦えるなんて♪」
俺は久しぶりにバーサークモードに突入した。楽しくて、楽しくて、仕方がない。
そして、極大まで魔力を高めて、鍔迫り合いからバックステップで距離をとった。
金髪の男もそうしていた。
俺はあまりの楽しさに目を輝かせた。
「さあ。もっともっと楽しもう! 金髪の男!」
金髪の男も憎しみを込めて狂気に満ちて嗤った。
「ふっふっふ。僕も君を殺せるとなると、これほどの愉しみはない!」
どうやら別のベクトルで、金髪の男も愉しんでいるようだ。
俺は楽しさのあまり最大に叫んだ。
「行くぞ! 金髪の男!」
「来い! ルシフ・ホープ!」
そのあとは壮絶だった。互いに電光石火に一撃を浴びせて、一歩も引かずに剣をぶつけ合う。
互角のギリギリの戦いだ。こんなに苦戦したのは、勝負を心ゆくまで楽しめたのは閻魔大王以来だ。
俺はワクワクが抑えきれずに面白くて、楽しくて、ひたすらに胸の高揚感を抑えられずに、剣を格闘技を振るった。
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
しかし、そのどれも金髪の男はいなしてくる。残念なことに奥義や魔法はタイムラグがあるので使う暇がない。
スキルも発動していないということは、相手のスキルでこちらのスキルを封じられているのだ。
まさに圧倒的に不利な状況で、俺は楽しくてにやついた。
「ふふ。はっはっは♪ 楽しいな! 金髪の男!」
金髪の男も狂気に満ちたように頷いた。
「ああ。ここまで苦戦したのは魔人王サタナス以来だ! 僕も愉しいよ! ルシフ・ホープ!」
その言葉だけで、俺は金髪の男が誰なのか理解した。
「はっはっは。そうか。いまので、やっとわかったぞ!」
俺は金髪の男に笑いかけた。
「お前だったんだな。勇者――いや、魔王ミカリス!」
金髪の男はニヒルに嗤いながら答えた。
「ようやく気が付いたみたいだな……。鈍感過ぎるぞ。ルシフ・ホープ!」
金髪の男はパチンと指を鳴らした。そこには黒い角が生えた黒い髪に赤メッシュの入った紫の瞳の独善の魔王ミカリスの姿が現れた。
突然のラスボスの出現に、俺はテンションが更に高まった。




