第138話『新装備とデート』
俺たちは、王城を急いで飛び出したあと、異世界人が経営しているサイバーな感じのする店に入った。
そこには様々な種類の武器や防具が置かれており、非常に興味を惹かれてしまう。
しかもステータスウィンドウで確認すると、どれも攻撃力500オーバーのとんでもない武器ばかりだ。
そこでレビアが早速お気に入りを見つけたらしく、俺に無邪気に見せびらかしてきた。
「ねえ? ルシフ。わたしこれが欲しい!」
レビアが選んだ武器なら、とてもいい物に違いない。そう期待して、武器のステータスを確認したが予想外のシロモノだった。
武器 【不死耐性の剣】 攻撃力1 効果 攻撃を受け、怪我や病気で死亡する確率、不死耐性が50パーセントの確率で減らせる。
「おいおい。マジか?」
俺があまりのステータスの低さの武器を目にして、レビアの正気を疑った。
こんなクソ武器が錬金術の実験になるのだろうか。
しかも、不死耐性50パーセントの装備なんて、家の父さんがいつも身につけている服だ。
それも徹夜疲れで、過労死するリスクを避けるためらしい。
しかも50パーセントということは運ゲーだ。
こんな物が何の役に立つのか、錬金術に関しては凡人の俺にはさっぱりだ。
しかし、レビアは欲しそうにねだってきた。
「ね? いいでしょ? 銀貨十五枚だし!」
確かにお財布的にもリーズナブルだ。ジンクの店でアクセを依頼してから、手持ちの残金は金貨300枚と銀貨200枚と銅貨200枚しかない。
あまり無駄遣いすると、緊急の時のお金が要り様になるので、歯痒い想いをしたくないため、無駄遣いは避けたい。
無駄な屁理屈を並べて考えるだけ、レビアを不安にさせてしまうだけだ。それは俺としても非常に不本意である。
何でも買ってやると言ったのだから買ってやるのが彼氏の筋という物だろう。
俺はしぶしぶ頷いた。
「わかった。買ってやるよ!」
「わあ。ありがとう! ルシフ!」
どうやらすごく喜んでいるようなので、これでよしとしよう。俺はカウンターへ行く前に次は自分の武器を選ぶことにした。
「ギャラクティカナックルとギャラクティカグリーブにするか!」
強度や威力を考えても、これが一番良さそうだ。しかも鉱石が散りばめられているだけで、実際は地竜の子供の皮を使用して使っている武器だ。
格闘戦で金髪の男に対抗するには、ちょうどいいと感じる。
値段もふたつ合わせて、金貨五十枚と買えないこともない。
これはもう買いだ。俺はレビアの武器と自分の武器を持って、店のカウンターに向かった。
店員さんが淡々と商品をスキャンすると、セミセルフレジに、金貨五十枚と銀貨十五枚と表記されたので、セミセルフレジに金貨を投入した。
そして、レシートが発行されて、店員さんは愛想良く頭を下げた。
「ご購入ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております!」
俺たちは戦利品を手に入れると、レビアは俺にとんでもないことを言い出した。
「ねえ? その武器と今の武器や防具に、不死耐性90パーセントまで追加してあげよっか?」
まさかのサプライズだった。レビアは自分が買って貰ったプレゼントを、俺のために活用するというのだ。
なんと健気なのだろうか。しかし、俺はちょっと悪い気がして、遠慮してしまった。
「別にいいよ。なんだか悪いし……」
俺がやんわりと断ると、レビアは暴走したように俺にお願いした。
「ルシフ。お願い。やらせて? わたし新しいアイテムが作りたくて、錬金欲が止められそうにないの!」
どうやら暴走モードに入っているようだ。こうなったら止められないのは、自身の体験で深く理解している。
俺は肩をすくめて、レビアに自分の装備を全て渡した。
コートだけは一張羅なので、手放すわけには行かない。ここで脱いだら犯罪者だからな。
俺は愛剣といま買った装備を全て、レビアに託した。
「よろしく頼むよ。金髪の男なら、即死系の魔法とか、隠していても可笑しくないからな」
レビアも俺と同じ考えだったらしく、深く共感して頷いた。
「その通りだよ。何してくるか分からないからこそ、不死耐性を上げておくに越したことないと思うの……」
レビアの表情は何処か不安げだ。俺はなんとか安心させたくて、少しだけ手の内を見せることにした。
「実はこんなステータスになっている……」
俺の大会仕様で覗き防止用になっているので、冒険者カードでレビアにステータスやスキルを見せた。
レビアは安堵の息を吐き出して、穏やかな表情で微笑んだ。
「これなら、きっとルシフも大丈夫だね!」
本音を言うとそれでも不安要素は数えきれないくらいある。魔法や奥儀をスキルなしで放たないといけない。
それは奴との戦いで一秒のラグが命取りになるので、純粋なステータス強化と剣術と格闘戦を交えた戦いをする必要があるだろう。
明日は一日、舞花に習って、様々な格闘術について学ぼう。
俺の吸収率なら、一日でプロレベル以上に昇華できるだろう。
ふたりで武器屋を後にして、宿へ向かった。
その途中でレビアは魅力的な一言をはにかみながら発した。
「恋人同士なんだから、ルシフの好きなようにしてもいいんだからね?」
俺はその言葉にときめいて理性が飛びそうになった。
そして、俺たちは宿で深く愛し合って、無事にデートを終えた。




