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第135話『ルシフVSタカネ』

 師匠の夢の特訓を終えて、目を覚ますと、隣でレビアが穏やかな表情で微睡んでいた。


 俺はその姿がとても愛おしくなり、髪を優しく撫でた。


 さらさらとした感触の髪が、俺のがらんどうの魂を満たしてくれる。


 俺はレビアを起こさないように、ゆっくりと起き上がると、部屋を出て、夢の成果を試すために訓練場へ向かった。



 ☆☆☆



 全ての準備は整った。俺は【水黽メガネ】をかけて、闘技場の左のコーナーへと向かった。


 本日の対戦はタカネ・サエキだ。右のコーナ―から現れたタカネは、鬼気に迫る表情を見せた。


 まるで憎悪に満ちた瞳をしている。よほどフラれたことを逆恨みしているらしい。


 相手がどうであれ、俺は彼女に手を差し出した。


「タカネ。今日はいい試合をして楽しもう!」


 タカネはばしんと俺の手を払いのけた。まるで親の仇を見るかのように、俺に牙を向き出して、怒号を上げた。


「ふざけないで! 私をフッたくせに! 絶対に公開させてやるから覚悟しなさい! あとそのアクセサリーの眼鏡クソダサいわよ!」


 クソダサいと言われると思っていなかったので、少しだけ胸の奥に針を刺す痛みが走った。


 それでも俺は笑顔を崩さずに、魔装備を取り出して、愛剣を構えた。


 タカネも専用のナックルグローブを取り出し、まるでボクサーのような姿になった。


 そこでお決まり通り審判によるルール説明が開始された。


「ルールは一回戦の時と変わりません。相手を気絶させるか、殺すかの二択です! よろしいですかな?」


 俺たちは頷いた。審判は合意のものとみなして、手刀をかざした。


「それでは両者構えて!」


 俺は剣を納刀し、タカネは小声でスキルを発動させた。


 審判は両者が戦いの準備が整ったと判断したようで、思いっきり手刀を切った。


「それでは試合開始!」


 カーンというゴングの音を聞き、タカネは先手必勝と言わんばかりに高速で飛び膝蹴りを繰り出してきた。


 だが、俺にはそれは普通に走って攻撃しているくらいの速度なので、簡単に見切って、相手の攻撃を回避した。


「あたっ!」


 とびひざげりを失敗したことにより、足を地面にぶつけたようだ。


 タカネは苦悶の表情を浮かべている。俺はすぐさま魔力を全力で解放した。


「行くぞ! タカネ! ゲーマーのプライドを思い知れ! 真・究極覚醒!」


 まさかの先代と同じ技を繰り出した俺に、周囲からざわざわとした歓声が聞こえてきた。


 俺はそれを気にも留めずに、目の前の試合を全力で楽しむことにした。


 おそらくタカネも、次は自身の最大の奥義で応戦してくるだろう。


 それに備えて、俺も自身の得意奥義をチャージし始めた。


 当然相手の生命力が、一割残るように計算してある。


 タカネも魔力を高めて自身の最大の魔力を拳に集めた。


「いくわよ。クソ男! アクロバティックアクション!」


「来い! タカネ! ゲーマーのプライドを思い知れ! ダークネスブレイカー!」


 互いに必殺技を解き放ち、俺の【ダークネスブレイカー】を回避したタカネは俺に怒涛の百連撃を浴びせようとしてきた。


 それに対応するために、俺は高速で敵の攻撃を回避しつつ、剣に【ダークネスブレイカー・エンチャント】を付与した。


 相手の怒涛の百連檄が、まるで猛虎のように襲いかかる。


 しかし、その攻撃は俺にはただの通常攻撃のようにしか見えない。


 タカネの動きに対応して、全ての攻撃を回避した。そこでタカネに大きな隙ができた。


「し、しま――ッ!!」


 相手が言葉を発するより速く、俺は【秘剣・絶の太刀】を繰り出した。


 高速の横一閃がタケネを斬り裂いた。


 剣に【ダークネスブレイカー】がエンチャントされているのでダメージは途方もない。


 あっという間に生命力が残り一割を切って、タカネは気絶した。


 その瞬間、審判は手を挙げた。


「勝者! ルシフ・ホープ!」


 その瞬間、観客席が沸いた。やはり注目されるというのは気が気ではない。


 だが、俺は愛想よく観客に手を振り返した。そこには幸せそうに微笑んでいるレビアの姿もあった。


 それにしても、異世界人相手に、前世で習った秘剣で対処するとは思わなかった。


 まあ、それだけタカネが強いという証拠だろう。流石は世界冒険者ランキング八位の冒険者だ。


 俺は担架で運ばれるタカネに頭を下げた。


「対戦ありがとうございました!」


 そう言い残して、俺は会場をあとにした。

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