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第129話『ルシフVSミズキ』

 翌朝、俺は闘技場の控室からステージへと向かっていた。


 今日はいよいよミズキ・シジョウとの戦いだ。


 俺は闘技場の左コーナーの前で呼びかけられるのを待った。


「レディース・エン・ジェントルメン! さあ。いよいよ勇者選別武術大会も本戦だ!」


 わあああああという観客の声が聞こえる。


 こういうのってゲームの世界大会以来だなと、ちょっとだけワクワクしてしまった。


 でも、あまり目立つとまた敵を作るので、早めに終わらせよう。


 俺はミズキに対するシミュレートを高速で始めた。


 戦闘やゲームのことに関してだけの知能は、天才級だからな。


 そして、ミズキを呼ぶ実況の声が聞こえた。


「まずは右コーナー。巨大な剣を豪快に操り、敵を瞬殺する。その魅惑的な衣装は観客を魅了するだけでなく、ガードも固い。聖剣士ミズキ・シジョウ!」


 わああああとまた声援が聞こえてきた。


 なんか男の声の方が、若干多い気がする。


 俺は左コーナーの入り口からミズキが登場するのを見ていた。


 その姿はツンと澄ましており、全く媚びる気配を見せていない。


 まあ、中身はあの腹黒で嫌味なメスガキ具合だからね。


 そりゃ、観客に愛想を良くなんてことはしないよな。


 今度は実況のおっさんが俺を呼び出した。


「そして、目玉はこの人! 数々の強敵を打ち倒し、英雄の称号を持つ傲慢の魔剣士。ルシフ・ホープゥゥゥゥゥゥゥッ!」


 俺はステージへ向かうと、観客に一応、申し訳程度に手を振った。


 観客席を見るとレビアや舞花や父さんの姿がある。


 呑気にポップコーン食べながら手を振っていた。


 本当に彼女たちらしい。


 俺は手を振り返して、ステージの階段を登った。


 目の前のミズキはこちらを親の仇のように睨んでいる。


 よほどカズキがやられたことを根に持っているらしい。


 ミズキは俺に語りかけた。


「魔剣士ルシフ・ホープ! カズキを傷つけた貴方だけは、このミズキ・シジョウが必ず倒します!」


 その瞬間一気にギャラリーが沸いた。


 いやいや、なんかこれじゃ、俺が悪者みたいじゃないか。


 こちらは何も悪いことなんてしてないのに。


 俺も何か言い返そうとしたが、やめた。


 これから楽しい試合が始まるっていうのに、喧嘩腰になる必要はない。


 俺はペコリと頭を下げた。


「対戦よろしくお願いします!」


 こちらの態度が気に食わなかったのか、ミズキは「ちっ!」と舌打ちした。


 まあ、いいさ。


 相手の態度が悪いのも想定内。


 必要以上に感情を乱すこともない。


 俺はこの勝負負けることはないと思っている。


 今日はタカネに手の内がバレないように、【水黽眼鏡】ではなく、【水黽コンタクト】を使用している。


 ミズキは俺にこう言い放った。


「何を企んでいるのかわかりませんが。私の【物体操作】の敵ではありません!」


 なんかはっきり言い切った。


 俺は感情的にならずに誠意を持ちながら、相手に言葉を返した。


「ああ。楽しみにしているよ。お互い試合を思いっきり楽しもう!」


 ミズキはまた気に食わなかったのか、顔をぷいと背けた。


 そして、審判がルール説明を開始した。


「ルールは至ってシンプル相手を気絶させるか、命を奪った方の勝ちとします!」


 その瞬間、またしてもギャラリーが沸いた。


 いま思うと、これって事実上デスゲームみたいなものだよな。


 命を懸けているわけだし。


 まあ、そんなことはどうでもいい。


 俺は思いっきり試合を楽しむだけだ。


 俺は魔装備を取り出した。


 

 【傲慢の魔剣・極+3】 攻撃力1000(1500) 効果 傲慢のスキルを強化する。追加効果 攻撃力500アップ。


 この黒い刀身の刀は、今の俺の最高の愛剣だ。


 今後さらにパワーアップさせる予定だが、ベースはずっとこれで行く。


 俺はそいつを握りしめて、居合のポーズで構えた。


 ミズキも【物体操作】を発動して、聖剣を浮かせている。


 互いの準備が整ったので、審判は手を前に突き出した。


「準備はよろしいかな?」


 俺は頷いた。


 審判も俺たち両者を見て、頷くと、さっと手を挙げた。


「では試合スタート!」


 試合開始と共にミズキは叫んだ。


「これで秒殺です! セイントソード・フライ・ストライク!」


 ミズキの聖剣が俺に向かって猛スピードで飛んできた。


 はずだった。


 俺の目にはゆっくりとスローモーションで聖剣が見える。


 迫りくる魔力を帯びた聖剣を、身体を反らして回避した。


「なっ!? もう一度です!」


 ミズキは何度も、何度も、聖剣を飛ばしてきた。


 だが、どうあがいても、俺に攻撃が一発も当たらない。


 俺は回避し続けながら、一気に魔力を解き放った。


「ミズキ。そろそろ本気で行くぞ! 真・限界覚醒・改――ッ!」


 俺はあえて【傲慢の魔王】は温存しておいた。


 仮面の男や、タカネに対策されないからだ。


 俺は今まで納刀していた刀に魔力を込めて一気に抜き放った。


「行くぞ! ミズキ! ゲーマーのプライドを思い知れ!! 大魔法――マジックバーストォォォォォォォォォォーーッ!」


 俺の刀から放たれた無の大砲は一気にミズキの生命力を刈り取った。


「せ、せめて!」


 ミズキは悪あがきにもう一度だけ聖剣を飛ばしてきたが、俺はそれを【ダークネスブレイカー・エンチャント】で無効化した。


 ミズキは絶望に染まった瞳のまま断末魔を上げた。


「いやああああああああああああああああああああああああああああッ!」


 そして、生命力を10だけ残して、ミズキは倒れた。


 その瞬間、ゴングが鳴った。


「勝者! ルシフ・ホープゥゥゥゥゥゥゥッ!」


 俺は思わず雄叫びを上げた。


「よっしぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」


 わあああああああとギャラリーの声援が沸き、俺はもうこんなに目立つのは嫌だなと思いつつ、軽くぎこちなく手を振った。


 そこにはレビアの姿が映っていた。


 彼女はうっとりした顔で俺に微笑み手を振ってきた。


 なんだか気恥しかったが、俺も彼女へ手を振り返した。


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