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第127話『異世界人のスキル対策』

 ハンバーガーショップで久しぶりのジャンクフードを堪能したあと、王城の客室で一夜を過ごし、俺はレビアと共に、ルイナとジンクの店へとやってきていた。


 店の扉を開くと、ジンクが対応した。


「いらっしゃいませ。お二人様でしょうか? って、おい! 兄弟とレビア嬢じゃねぇか!」


「久しぶり。ジンク。元気にしてたか?」


 俺が軽口で語りかけると、ジンクは頷いた。


「そんなのモチロンだぜ! それより今日はどんな用があってきたんだ? 観光か? それとも王都支部の視察か?」


「違う。実は相談があって来たんだ」


「相談。つまり異世界人への対策アイテムの作成とか、そんな感じか?」


 こいつなんでこっちの考えていることがここまで分かるんだよ。


 ジンクのとんでもない才能が空恐ろしくなってくる。


 内容を語ろうか迷っていると、外からミズキの視線を感じた。


 どうやらこちらの対策を盗み聞きするつもりだ。


 別にミズキへの対策については、ばれようとも、ばれまいとも関係ないが。


 ミズキがタカネに言いふらす可能性もゼロではない。


 なので、俺はジンクに自分のアイデアをチャットで送りつけた。


 ジンクはそれを読んで頷いた。


「なるほどね。たぶんルイナだけじゃ無理だから。レビア嬢も手伝ってくれるか?」


 俺の隣にいたレビアは頷いた。


「うん。もちろんだよ。彼氏が困ってるんだもん。わたしだけ手をこまねいていられないよ!」


「そりゃそうだ。それで料金なんだが……」


 俺はドンと袋詰めの金貨を置いた。


「俺の二カ月分の給料だ。これを全部支払うよ」


 ジンクはパチンと指を鳴らした。


「流石は兄弟だ。ならとっととおっぱじめようぜ!」


「ああ。よろしく頼むよ」


 俺たちはジンクに案内されてルイナの研究室へと案内された。


 そこには大量のアイテムと大きな錬金釜が置いてある。


 周りはゲーム後半で見かけた高級なアイテムばかりだった。


 ルイナはこちらに気が付くと、ぱあっと明るい顔をした。その雰囲気は紺色の髪と赤い瞳に紺色の服を着た長耳のエルフという暗い見た目の印象と相まってとても幻想的だった。


「まあ。レビアにルシフやないか。どないしたん? もしかして例の武術大会で予選突破したから、打ち上げに誘いに来てくれはったんか?」


 ジンクは首を振った。


「ちげぇよ。仕事だ。仕事。客としてやってきたんだよ。金貨一〇〇枚だぞ? 大型の客だ!」


 ルイナは金貨一〇〇と聞くときゅぴーんと目を輝かせた。


「ええやんか! めっちゃ奮発してくれとるやん! よっしゃ! ええもん作ったるから、具体的なアイデアを教えてくれへんか?」


 流石に店の中まで来たら、ミズキの心配はしなくて大丈夫だろう。


 俺は自分の中のアイデアを話した。


「動体視力と反射神経を上げる眼鏡を作って欲しいんだよ。高速の物体や動きを予測できるような、そんな眼鏡だ!」


 そのアイデアを聞いた瞬間、ルイナは目を輝かせた。


「なんや。それ。めっちゃおもろそうやんか。ええで! やったるわ! レビアも手伝ってくれるやろ? 悪いけどウチひとりじゃ無理や!」


 レビアは頷いた。


「もちろんそのつもりで来たんだよ。じゃあわたしとルイナでアイデアを練るからルシフはお店の中で待っていてね!」


「ああ。分かったよ!」


 ジンクは俺を連れ出し、こう語った。


「こんな大型の客が来たんだ。今日は店終いだな。じゃなきゃあの外でうろちょろしているミズキって異世界人が店に来られちゃ兄弟も困るだろ?」


 流石はジンクだ。


 こちらの事情にも完璧合わせてくれている。


 俺はなんだかとても申し訳なくて、彼に聞いた。


「いいのか? たった金貨百枚だぞ? 店を経営してれば、もっと儲かるはずなんじゃ……」


 すると、ジンクは俺の背中をばしんと叩いた。


「馬鹿言ってんじゃねぇよ。兄弟とおらの仲じゃねぇか。余計な心配なんてしてっとぶっ飛ばすぞ? まあ。おらは喧嘩よえぇから無理だけどな。あっはっはっは!」


 俺はジンクの言葉が嬉しくて、照れ隠しに語った。


「全く相変わらずお人好しな奴だな。それで上手い儲け話になると騙されないのが不思議なくらいだよ!」


 ジンクは豪快に笑った。


「ちげぇねぇ。まあ。おらの場合はスキルの恩恵が大きいんだ。それに商売ってのは信用が第一だ。それも本店店主の将来の旦那となれば、無碍にできるわけねぇだろ? 全く打算がねぇってわけじゃねぇぞ?」


 本当に正直な男だ。


 でもその正直さが逆に信頼感を生み出している。


 ジンクは商人なのに、深く付き合うと胡散臭くないのだ。


 俺は頷くしかなかった。


「分かった。じゃあジュースでもご馳走してくれ。できればお菓子もつけてくれると助かる!」


 ジンクは笑った。


「その図々しさ嫌いじゃないぜ。流石は兄弟だ。一緒にポテチ食おうぜ! オレンジジュースもあるからよ!」


 ポテチと聞いて俺は目を輝かせた。


「流石は王都。ポテチまで置いてあるんだな。よし。早速ふたりでお菓子パーティー始めようぜ!」


 俺がそう口にすると、ジンクは微妙な表情を見せた。


「なんかお菓子パーティーなんて、なんか女子会みたいな言い方で気持ちわりぃから、ここは男の魂と魂の菓子のしばきあいにしとこうぜ!」


 男らしさに拘るとは流石はジンクだ。


 男たるものなよなよしていちゃ駄目だ。


 ゲームだって現実逃避でやる層と、男の全てを賭けてやる層の違いがある。


 俺は後者だ。


 男の全てを賭けてゲームをしている。


 ならお菓子パーティーはちょっとないよなと俺も思う。


 だからジンクの言葉に同意した。


「ああ。確かにお菓子パーティーは男らしくなかったな。よし。思いっきりふたりで菓子をしばくぞ!」


 ハイテンションな俺に合わせて、ジンクは面白い提案をしてきた。


「いいね。どっちが多くポテチ食えるか競争でもするか?」


 まさか競争と来たか。


 面白そうなので俺は受けて立った。


「いいぞ。言っとくが俺は食うのが早いからな。なんせ大食い大会で優勝したこともあるレベルだからな!」


 そう前世ではゲーム代を稼ぐために近所の大食い大会に参加して数十万円を稼いだことがある。


 そんな俺がジンクみたいな瘦せ型の商人に負けるわけがない。


 この肉体になってからほっそりと筋肉だってついているし、毎日パワフルな妹に胃袋を鍛えられているのだ。


 そう簡単に負けてたまるか。


 俺がそう意気込んでいると、ジンクは笑った。


「あっはっは。流石は兄弟だ。じゃあ。ポテチ用意するわ!」


「ああ!」


 その後、俺たちは店の中のポテチを全部食い散らかして、晩御飯の時、ルイナにお説教されたのであった。


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