第125話『予選Hブロック』
選手控室の戻るとタカネが他の男と楽しそうに話していた。
どうやら相手はカズヤ・イチミヤらしい。
あと金髪の男は控室にはいなかった。
ローグのじいさんは相変わらずアルコールを嗜んでいて、ミズキは機嫌が悪そうに売店で買ったサンドイッチを食べていた。
またぼっちになれてホッとする。
俺はひとりぽつんと、座ると、スクリーンには本日最後の試合が始まろうとしていた。
注目の選手はナナミ・ナナミヤとか変な名前の異世界人だ。
見た目は黒髪お下げがよく似合う可愛い系の真面目ちゃんといった感じだ。
その手に持っている魔装備は禍々しいほどの輝きを放っている。
ステータスウィンドウでステータスを確認するとこんな感じだ。
ナナミ・ナナミヤ
ジョブ 神官
レベル400
生命力28950
魔力59876
攻撃力21140
防御力19508
敏捷33794
技術75948
知性64389
幸運62833
魔力属性 無
魔力装備 【?】 攻撃力5000(2500) 効果 ?
防具 【?】 防御力3000(2000) 効果 ?
スキル 【?】
流派 東大陸流剣術免許皆伝。無属性魔術免許皆伝。回復魔術免許皆伝。防御魔法免許皆伝。補助魔法免許皆伝。
奥義。
【魔力強化】 効果 魔力を身に纏い、ステータスを1・2倍アップさせる。
【魔力強化・改】 効果 魔力を身に纏い、全ステータスを最大1,2倍上昇させる。
【新魔力強化・改】 効果 魔力を身に纏い、物理系か魔法系のステータスを2倍に上昇させる。
【限界突破】 効果 魔力を身に纏い、全ステータスを3倍に上昇させる。
【限界突破・改】 効果 魔力を身に纏い、全ステータスを5倍に上昇させる。
【新限界突破・改】 効果 魔力を身に纏い、物理系か魔力系のステータスを6倍に上昇させる。
【限界覚醒】 効果 魔力を身に纏い、全ステータスを7倍に上昇させる。
【限界覚醒・改】 効果 魔力を身に纏い、全ステータスを8倍に上昇させる。
【真・限界覚醒】 効果 魔力を身に纏い、全ステータスを9倍に上昇させる。
【真・限界覚醒・改】 効果 魔力を身に纏い、物理系か魔力系のステータスを10倍に上昇させる。
【ファーストブレイド】 東大陸流初級剣術。魔力を剣に纏わせ、敵に大きさ袈裟斬りを放つ。
【セカンドブレイド】 東大陸流中級剣術。魔力を剣に纏わせ、交差するような袈裟斬りを放つ。
【サードブレイド】 東大陸流上級剣術。魔力を剣に纏わせ、四連続で交差して敵を斬る。
【フォースブレイド】 東流秘伝の剣術。魔力を剣に纏わせ、十二連続で交差して敵を斬る。
魔法
【マジックショット】 効果 無属性の魔力弾を飛ばす。
【マジックバスター】 効果 無属性の魔力砲撃を放つ。
【マジックボム】 効果 無属性の巨大な魔力爆撃弾を放つ。
【マジックバースト】 効果 無属性の巨大な魔力砲撃で大爆発を巻き起こす。
【ヒール】 効果 怪我や体力を回復させる。
【キュア】 効果 状態異常を回復する。
【リヒール】 効果 一定時間自動で体力が徐々に回復する。
【リザレクション】 効果 瀕死や身体欠損を治す。
【エクスヒール】 効果 完全に傷や体力を全快させる。
【バリア】 効果 敵の攻撃を防ぐ魔法障壁。
【プロテクト】 効果 敵の攻撃をほぼ完全に防ぐ魔法障壁。
【ガードウォール】 効果 壁のような魔法結界により一度だけ敵の攻撃を完全に無効化する。
【パーフェクトプロテクション】 効果 巨大な魔法結界を生み出し、敵の攻撃を言って一時間完全に防ぐ。
なんていうか、神官というより、神官剣士じゃねと思うのは俺だけだろうか。
こいつもおそらく秒で試合を制するだろう。
どんなスキルで魅せてくれるのか楽しみである。
それにしてもあの魔装備の剣。
なんか普通の武器とは少し違うような。
俺が思考を巡らせているうちに、試合が開始された。
他の異世界人が一斉に乱闘する中、何故か一番標的になりやすい少女を狙ってこない。
可笑しい不自然なくらい目立つというのに。
とそこでさらに不可解な現象が起きた。
「了解しました!」
そう言って異世界人は次々と自分の首を切って自害し始めたのだ。
これは一体どうなっているのだろう。
なんて馬鹿なことをするのだと思っていたが、どうやら少し様子が違う。
まるで誰かに操られているような。
まさかあの剣の効果か。
よく目を凝らすと、あの剣から無数の粒子が流れ出ていることに気が付いた。
そこで全ての参加者が自害して、審判は試合の結果を告げた。
「しょ、勝者ナナミ・ナナミヤ!」
考えていた以上だ。
ナナミは精神操作系のスキルを有している。
それはあの剣による粒子が元となっているだろう。
これはまた対策を考える必要がありそうだ。
そして、全ての試合が終わり、審判のおっさんが意気揚々と解説し始めた。
「本日の試合はこれにて終了です。本戦は三日後となります。それでは国王陛下より閉会のスピーチがありますので、ご清聴ください!」
王が観客席から前に出ると、はっきり告げた。
「会場に集まりし民よ。そして、選手の者共よ。よくぞ試合を盛り上げてくれた。わしはルシフ・ホープだけが圧勝だと軽んじておったが、これはもう誰が優勝しても可笑しくないと己の浅はかなる見識を恥じておるところだ。とにかく皆、骨のある選手ばかりで、わしは喜ばしい限りじゃ。まあ。一部の選手は不祥事を起こして残念な運びとなってしまったがな……ぶつぶつ」
なっがと俺はドン引きしてしまった。
どうして偉い人のスピーチって、こんなにも長いのだろうか。
本当にくだらない。
俺はそう見下しながらも、必死に対策を考えていた。
当面の相手はミズキとタカネだ。
ミズキの【物体操作】もタカネの【神速】も侮れない。
ミズキには自力で対策できる範囲だが、タカネはアクセサリーがないとちょっと難しいだろう。
レビアやルイナに相談するか。
俺はそう決めて選手控室から立ち去ろうとすると、今頃やってきた金髪の男がやってきた。
すれ違い様に、奴は空恐ろしい発言をしてきたのだ。
奴は『あと少しで殺し合えるな』とそう口にした。
俺は背後を振り返ると売店でジュースを買う奴を睨んだ。
一体何者なんだ。
この大会で一番警戒しないといけない奴はミズキでもタカネでもない。
俺はそのことを思い知り、控室を後にした。




