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第119話『予選Bブロック』

 次の試合は予選Bブロック。


 俺は試合が終わったので、選手控室にいる。


 なんだか憩いのルームとなっており、ベッドや売店や自販機まで設置されている。


 俺は売店で買い物をするためにおばちゃんに話かけた。


「すみません。サンドイッチとコーラください」


「はいよ。銅貨六枚だよ」


「はい」


 俺は言われた通りに銅貨を六枚支払った。


 そのあとおばちゃんは営業スマイルで微笑んだ。


「毎度あり。それよかあんた魔剣士ルシフ・ホープだろ? ファンなんだ。サインしてくれ!」


「ええ。構いませんよ」


 俺はおばちゃんからペンと色紙を貰い簡単にサインした。


 するとおばちゃんはとても喜んだ。


「ああ! ありがとよ。家宝にするよ!」


「あ、あははは……。どうぞご自由に……」


 なんというかミーハーなおばちゃんだ。


 そういうところは王にそっくりかもしれない。


 王都の人間はこんな人ばかりなのかな。


 それよりそろそろ予選Bブロックが始まる。


 俺はサンドイッチを食べ、コーラでそれを流し込みながら、控室に設置されたスクリーンから予選Bブロックの試合を見ることにした。


 画面のドアップで映されているのはやはりミズキ・シジョウだった。


 彼女は茶髪ボブヘアの至って何処にでもいるような美人の女性だった。


 その身体にはビキニアーマーのような露出度の高い白銀の鎧を纏っている。


 装備しているのは大剣それもかなり銀の刺繍が施されており、見た感じとても美しい。


 ムチムチのナイスバディの体格をしており、まさに女剣士と言ったところだ。


 それにしてもぷりっとした桃がとても魅力的だ。


 思春期男子らしく可愛い女の子に鼻の下を伸ばしていると、すぐに戦闘が始まりそうになった。


 審判はこの前と全く同じルールを説明し、試合開始時刻を待った。


 残り五秒。


 四秒。


 三秒。


 二秒。


 一秒。


 そして、審判は腕をチョップするように下した。


「試合開始」


 ゴングが鳴り響き、当然冒険者たちはミズキを狙う。


 すると、ミズキはなんと大剣を空高くに放り投げた。


 どういうつもりだ。


 こんな雑魚共素手で充分ということなのだろうか。


 ミズキは空に舞う大剣を睨み、はっきりとした口調でコマンドを唱えた。


「スキル【物体操作】発動。聖大剣よ。斬り刻みなさい!」


 ミズキが命じるとなんと白銀の大剣は空を舞い、暴れ狂うように回転して、次々と冒険者たちを斬り裂いた。


「ぎゃああああああああ」


「いやあああああああああ」


 冒険者たちの断末魔が鳴り響き、あっという間にステージの冒険者を半分近く一掃してしまった。


 これはなかなかのチートスキルだ。


 こんなの俺の奥義【ルシファー】と同等かそれ以上の力があって、正直焦っている。


 しかし、他の参加者も馬鹿じゃないミズキに隙が出来たのを確認してから、おそらくアダマンタイト製のナイフで露出した肌の部分を突き刺した。


「へ。スキルごり押しばっかりで、背中ががら空きなんだよ。色仕掛けで惑わそうとビキニアーマーなんか装備したのが仇となったな。って、はぁ!?」


 しかし、彼女に突き刺そうとしたナイフはバチンというエフェクトと共に弾かれた。


 どうやら彼女のあのビキニアーマーはただの色仕掛けのための代物じゃない。おそらく完全に物理攻撃を無効化するのだ。


 つまり奥義による攻撃で倒せないことは確定した。


 そして、ミズキは自分を突き刺した男に大剣を飛ばし、逃げ惑う男の首をちょんぱした。


 さっきから思っているのだが、この女どうも人を殺し過ぎている。


 どうやらけっこうクレイジーサイコ系の女だと判断しておいた方がいいだろう。


 その後も彼女の圧倒的な無双でBブロック予選も終わりかけたその時だった――。


「もうこれ以上お前の隙にはさせないぞ! エクスプロード!」


 どうやらある異世界人の男が無詠唱でエクスプロードを放った。


 その威力は通常の十倍近くを超えている。


 その魔法に巻き込まれて、ミズキは悲鳴をあげた。


「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 どうやらかなり効いているようだ。


 つまりミズキの弱点は魔法攻撃。


 突破するには魔法による圧倒が必要となってくる。


 しかし、無属性魔法しか使えない俺に何処までやれるだろうか。


 そんな不安を抱きながら、ミズキの行方を見守った。


 会場は防御結界で守られているみたいで観客に被害はない。


 禁断魔法【エクスプロード】の発動が終わり、ミズキの姿がゆっくりと現れた。


 どうやらボロボロにはなっているものの、なんとか生きているようだった。


 ミズキは表情に怒りの色を表して、鋭く魔術師の異世界人を睨み、こう告げた。


「貴方だけは私が直接倒します。行きます。奥義――エクストリームブレイク」


 彼女の放った【エクストリームブレイク】はどの冒険者より巨大で強力な一撃だった。


 その暴力的な剣撃を前に魔術師は悲鳴をあげた。


「ひ、ひええええええええええ!」


 そして、魔術は命を落とした。


 その瞬間にゴングが鳴り、審判が試合結果を告げた。


「予選Bブロック勝者はミズキ・シジョウ!」


 どうやら試合が終わったようだ。


 試合から察するに思った以上に勇者候補たちは強い。


 師匠に鍛えて貰ってなければ、おそらく一回戦すら危うかっただろう。


 でも師匠曰く元からレベルを鍛えていたからこそステータスを最大効率で伸ばすことが可能だったわけだ。


 そもそも俺はステータスの限界突破機能を知らなかった。


 どうやら俺が死亡してから追加されたDLC第5弾の要素らしいからな。


 その情報は強者の異世界人だけが独占していたらしいからな。


 あとミズキとの戦いは厳しい物になりそうだ。


 これは覚悟を決めないといけない。


 俺は油断しきっていた気を引き締めるのであった。

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