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第114話『勇者選抜武術大会の前日』

 意識が覚醒すると、そこはもう中世ヨーロッパ風の大都会だった。


 どうやら無事フレイア王国の王都に辿り着いたようだ。


「着いたね。みんなここがフレイア王国王都だよ!」


「「うわぁぁぁぁぁぁぁ~~!」」


 レビアと舞花の方を見ると感心したように瞳を輝かせている。


 本当に単純だなと思う。


 それにしても初めて王都に来たが、なんというか所々中世ヨーロッパらしからぬ、現代的な施設も建ち並んでいる。


 どうやら異世界人の介入によるものみたいだ。


 街をぽかんと眺めていると、父から注意喚起があった。


「ほら。みんな。まずは王様に謁見しないといけないんだろ? 寄り道してないで王城へ向かうよ?」


「「「はーい」」」


 俺たちは思春期の子供らしく父の言うことに従った。まあ。もう俺と舞花は成人なのだが、まだ如何せん日本なら高校三年生だからな。


 とにかく王都には仕事で何度も来ている父の案内で俺たちは王城へと向かっていた。


 しかし、ガシャポンやら、ポテトチップスに、ハンバーガー屋や、ラーメン屋まである。


 中世ヨーロッパの中に現代日本でよく見る光景が混ざっているかのようだ。


 とぼとぼ歩くこと数十分。


俺たちはようやく王城へと辿り着いた。


 しかし、ゲームで見るのと違い実際はここまで大きいんだな。


 俺は放心していると、城の門兵たちに尋ねられた。


「動画配信で見ましたが、もしや貴方はあの魔剣士ルシフ・ホープ殿では?」


「え、あ、はい。そうですけど……」


 え、え? 俺っていまそんな有名人になってんの? いや待ってよ。


 伝説の動画配信者さんの動画に出演しただけだよね?


 なのに、どうしてこんなことになってんの?


 俺は動揺を隠せなかったが、兵士たちはぱあっと顔を明るくした。


「いやぁ。お待ちしておりました。あ、あとベルフゴル殿も魔剣士様のご引率お疲れ様です!」


 父はちょっといじけたように苦笑した。


「あれだけ若い頃にマモと王都を救ったのに、この扱いは酷くない?」


 兵士はすぐに恐縮したように頭を下げた。


「こ、これは大変失礼致しました」


 へぇ。父さんってそんなに偉い人だったんだなと俺は感心した。


 というか、父さんがまともに戦った姿を見たことがないんだが、やはり母さんとタッグでハラグロードダンジョンを制覇したり、王都を救ったりしたくらいだから強いのだろうか。


 これは今度父さんとも試合を申し込むしかないなと俺はワクワクしていた。


「では皆さまを王の間へとお連れします。王はあなた方のことを大変心待ちにしておいででしたからね!」


「は、はあ……。よろしくお願いします……」


 どうもこういう堅苦しいのは慣れない。


 俺たちは兵士の引率で、王城内へと足を踏み入れた。


 豪華なシャンデリアに、歴代国王の壁画、レッドカーペットに敷かれた床など、如何にもRPGの王城と言った感じだ。


 ゲーム内で何度も見ているはずなのに、あまり感動はしてない。


 何故なら、今は感動より、緊張の方が勝っているからだ。


 そのまま流されるように階段を上がり、いつの間にか王の間へと辿り着いていた。


 フレイア王十五世は俺たちを見ると大袈裟に手を広げた。


「よくぞ。来た。魔剣士とその一行よ!」


 俺たちはすぐさま王の前に跪いた。


 しかし、王はなんてことないかのように手を掲げた。


「よいよい。畏まるのは辞めてくれ。ベルフゴルには何度も命を救って貰ったし、これから世界を救うかもしれん勇者候補殿に跪かれるのは、どうも落ち着かんのだ!」


 王がそうおっしゃのならと俺たちは跪くのを辞めた。


 そして、王は俺のもとへ近寄り、手を握ってこう宣言した。


「魔剣士ルシフ・ホープよ。そなたの数々の功績とその凄まじいまでのステータスはもう調査済みじゃ。お主に敵う者など異世界人でもおらんじゃろう。期待しておるぞ!」


 俺はどう接したらいいか分からなかったが、一応形式に従った。


「はっ! ありがたき幸せにございます!」


 俺の返答に気を良くしたのか、王は俺へ色紙を渡してきた。


「のう? 良ければサインしてくれんか? わしはそなたのファンなのじゃよ! なんせあの伝説の動画配信者以来の天才冒険者なのじゃからな。わっはっはっはっは!」


 なんていうか思っていたより気さくな人のようだ。


 俺は「は、はあ……。畏まりました」と呆気に取られたまま、王へのサインを済ませた。


 王はそれを受け取ると子供のようにはしゃいだ。


「おお! やった! やったぞい! これはもう我が王家の家宝じゃな! ありがたく自室に飾らせて貰うぞ?」


「ええ。是非ともお飾りください。全ては王のお気に召すままに!」


 俺がそういうと、王は子供のように大はしゃぎした。


「わっはっは。やった。やったぞい♪」


 そして、隣にいた大臣の咳払いにより、王は急にはっと我に返り、俺たちにこう言い放った。


「そなたらは客人じゃ。今日はこの城へ泊まり晩餐へと参加してくれ!」


 王の言葉が終わると、俺たちは兵士にそれぞれの部屋へと案内された。


 それから王城の訓練場で舞花と明日の武術大会に向けて最終調整をしたり、王にお呼ばれした晩餐などを楽しんだ。


 宮殿の風呂にも入れたし、俺は大満足で自室へ戻ろうとすると、変な仮面をつけた青いマントの男とすれ違った。


 その男は俺にこう告げた。


「ルシフ。ようやくだ。ようやくお前と戦える……。明日を楽しみにしているぞ」


 と謎の言葉を残して立ち去った。あれかな? 厨二病でも拗らせた人かな。とにかく放っておこうと俺は自室へ戻って、明日へ向けてたくさん睡眠を取ることにした。



 ~~ミカリス視点~~


 

 ああ。久しぶりに奴の声を聞いた。


 どうやら奴はこちらの正体にまだ気が付いていないようだ。


 そうだ。それでいい。この魔王ミカリス様が、まさか勇者選抜武術大会に紛れ込んでいるなど誰も気が付かないのだからな。


王を脅すのは簡単だった。息子のウリエスは生きている。殺されたくなければ僕を勇者選抜武術大会へ参加させろと。


 王はお前など真の勇者であるルシフにやられてしまえと余計な無駄口を叩いたが、俺は無視した。


 何せあれから俺も途方もない修練に励んだ。


 西大陸の最難関ダンジョンに籠りレベルを上げて、今やレベル350に到達しているのだからな。


 その数値は最新で公開されたルシフより50も上だ。


 そして、独善のスキルにより、奴はユニークスキル【傲慢】を封じられる。あれさえなければ奴などただのステータスが多少高い凡人だ。


 死闘で磨いた僕の剣に奴が届くはずもない。


 しかし、奴に魔法攻撃は通用しない。


 ならば全力の物理一択で叩き潰すのみだ。


 僕は勝利を確信し、牢屋の隅でくつくつと嗤うのであった。


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