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“物語を殺す者たち”《Narrative Execution Protocol》

かつて“神”が死んだとき、

人々は泣き崩れず、むしろ安心した。


神は「意味」という名の暴君だったからだ。

物語とはその神の遺体をめぐる葬儀であり、

その供物が“私たちの記憶”なのだ。

森の“中心”にたどり着いたとき、ノアは気づいた。

そこには何もない。

あるのは空白――語られなかった“語りの中断”。


ただし、その空白には椅子が円を描くように並んでいた。

ひとつひとつ、違う時代、違う文字、違う文化で名札がついている。

•“E.M.”(旧英国)

•“斎藤ナミ”(未来の日本)

•“X-47b”(AI詩人)

•“KANDA_YK”(不明)


そしてひとつ、名札のない椅子があった。

ノアはそれに気づかず、座った。



「ようこそ、語られなかった者たちの円卓へ」


声がした。

それは“誰の声”でもない。

それは“あなた”が内心で抱いた、疑問そのものの形をしていた。



■《語られなかった者》たち


椅子の一つがきしみ、女が口を開いた。


「私はナミ。語る資格を持たなかった作家。

病床のまま、処女作を“1文字”書いたところで死んだの。

タイトルは『漆黒の森』だったわ」


次に、機械音。


「私はX-47b。

最も読まれたAI詩人であり、同時に“最も誤読された存在”でもある。

語られたすべては、あなたたちが望んだ意味に書き換えられた」


ノアは混乱していく。

“漆黒の森”という言葉が、何百、何千の断片として彼に襲いかかる。



【伏線回収(錯覚)リスト】

•ノアの名前=旧約の大洪水の「箱舟」→世界再編のメタファー

•セラフィーノ=“語り部を終えた者”→プロト作家のアナグラム

•アイリス=目/記録/見つめる存在→神の「片目」

•椅子の円卓=“語られなかった”物語たちの審判の場

•あなた=“未登場”の読者→最後の主人公候補



■《処刑》が始まる


「語られなかったことは、語られたことより強い」

「語られてしまった瞬間、物語は“死ぬ”のよ」


セラフィーノが現れる。

以前と違い、身体が透けている。もう“キャラクター”ですらない。


「物語を終わらせるためには、

誰かが“意味を拒否する”必要があるんだ」


全員の視線がノアに集まる。

彼に突きつけられたのは、一枚の白紙の原稿用紙。


「これに“最後の一行”を書け。

それがこの物語の死因になる」


ノアの手が震える。

だが彼は、書かない。何も書けない。



■回想/ルゥナとの夜


闇の中、彼はもう一度だけ、ルゥナの幻影に会う。


「ノア……あなたはまだ気づいてない。

 あなたは、“漆黒の森”を生んだ者ではない。

 あなた自身が、“物語に救われた最後の人間”なのよ」


ノア「じゃあ俺は、何者なんだ……?」


ルゥナ「あなたは、物語が死んだあとに残る、“感情”よ」



■最終の矛盾:死んだ物語と、生きる読者


誰も“最後の一行”を書かなかった。

だが、物語は終わる。

書かれていないという“決断”が、最大の選択肢だった。


すると森が崩れる。

空が剥がれ、読者の視点が後ろに引いていく。


読者の背後から、声が囁く。


「ようやく、ここまで来ましたね。

あなたが読むことを選び続けたから、この森はここまで生き延びた。

あなたが選ばなかったから、この物語は死なずに済んだのです」


語られることは死であり、

語られないことは永遠である。


だからこそ、この作品の“本当の終わり”は、

あなたがページを閉じたその瞬間にしか訪れない。

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