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3.授かりもの

 入学前の制服採寸やガイダンスも終わり、とうとう入学式がやってきた。


 青藍のブレザーに袖を通し、胡桃色の髪を高めでひとまとめに結ぶ。学院性の証である星と梟がモチーフになったバッジをつけ、リザベルは入学式へ向かった。


 入学式が行われる大講堂ではすでに半分ほどの生徒が揃っており、賑やかな声が聞こえていた。

 リザベルは空いている席に座り、建物や生徒の様子を見る。ふと前に座っていた女子生徒たちの声が耳に入ってきた。


(決して盗み聞きではないのよ、情報収集するだけなんだから......)

と苦し紛れの言い訳をして、会話に聞き耳を立てる。



「今年入学する生徒の中には第二王子のクラレンス殿下がいらっしゃるみたいなの!」

「クラレンス殿下だけでなくリオ・ブラックウェル様の入学されるらしいわ!」

「確か、四大貴族で属性を2つお持ちになるのよね。顔立ちがとても麗しくて、私学院に通う間に一度はお話してみたいわ......!」

「一度お見かけしたとき、お顔のかっこよさと紺色の髪が揺れて凛とした姿に私ときめいてしまったわ」


(そんな尊き方が同じ学年で入学されるのね......平凡な令嬢である私がお近づきすることは一生ないかしら)


 そう思いながらリザベルは周りの生徒たちに目を戻したのだった。

 いつの間にか大講堂には全員集まっており、学院長が前に登壇していた。


「この度は入学おめでとう。この学院で自分が授かったものを十分に伸ばし、知識を吸収してくれ。そして身分の上下関係など無しに大いに交流してほしい。皆の成長を応援している。」


 学院長の祝辞をいただいたリザベルは、気を引き締めるように背を伸ばすのだった。

 入学式が終わると、リザベルが待ち侘びていた属性鑑定と魔力測定の登録が行われる。一人ずつ別室で行われるため、待ち時間に本を読もうとしたのだが、数分経っても1ページも進まないくらいにリザベルの頭の中は自分の授かりもののことについていっぱいだった。

 登録を終えた生徒が折り返しを過ぎた頃、リザベルの順番が回ってきた。結局2ページほどしか進まなかった本を閉じ、興奮を顔に出さないよう指定された部屋へと向かう。

 ドアをノックし「失礼します」と扉を開ける。部屋には神官と学院の教員が座っており、目の前には2つの水晶が並んでいた。


「リザベル・ウェストと申します」

「はじめましてリザベル、そんなに緊張しなくていいわ」


 教員の言う通り、リザベルは緊張と紅葉で体が強張っていた


「リザベル嬢は鑑定は初めてかい?」

「えぇ、初めてになりますわ」

「では、鑑定と測定の前に少しだけ説明をしておこうか」


 神官は小さく咳払いをして説明を続ける。


「まずは属性について説明しよう。このイヴレイシャルクリスタルでは自分の持つ属性を鑑定する。水晶が青に光れば水属性、赤だと炎、緑は風、橙は木、黄は雷、紫は音、白は光、黒は闇という風に自分の持つ属性によって示す色が違う。特定の属性だからといってその属性の魔法しか使えないなんてことはない。ただ自分の得意とする魔法が分かるというだけだ。学んでいけば自分の持つ属性以外の魔法も使えるようになる。自分の属性魔法よりは少し感覚をつかみづらいかもしれんが、練習していくうちにコツをつかんでいけるだろう。次に魔力測定について説明しようか。魔力測定とはその名の通り自分の持つ魔力を測ることだ。これは、こっちのクインテティクリスタルで測定する。水晶の光具合で自分が持つ魔力が分かるというものだな。持つ魔力が多ければ光が強くなる、逆に少なければ弱く光る。どちらも手をかざすだけで調べられるから、難しいことは何もない。急ぎ足で説明してしまったが、なにかわからないことはあるかい?」

「いえ、神官様のご説明でよく分かりましたわ」

「そうか、それはよかった。それではまず属性から調べよう。肩の力を抜いてこの水晶に手をかざしてみてくれ」


 神官の指示通り、リザベルは水晶に手をかざす。すると透明だった水晶がだんだん色づき始め、一色に染まった。


「ほう、リザベル嬢は緑か。風属性を授かっていたのだな」

「神官様、風属性というものはどのような特徴があるのですか?」

「風は空気や自然に溶け込むのに優れている属性だ。物理的に風の流れを作るだけでなく、自分自身にかければ気配の強弱を調整することもできる。ただ、自分の魔力を感じることが重要になってくる。わしは、属性魔法を扱うことにおいて風魔法が一番基礎になると思っているんだ」


(風魔法を習得すれば、ほかの属性魔法も掴みやすくなるのね。感覚がつかめるようになったら量の抜け道も楽に行けるかもしれないわ......)


 少し邪な考えを思いついていたリザベルに、神官は次の推奨へと促す。リザベルが2つ目の水晶に手をかざすと、今度は中心が眩く光った。


「魔力は中の上くらいか、平均ぐらいだな」


(ここでも私は平均なのね......」


 もちろんそう言われることは予想していたのだが、リザベルの心の中ではすごいものを持っているかもしれないという、淡い期待がどこかにあったのだ。だが結果として表れてしまったので、淡い期待は打ち砕かれてしまった。


「だがリザベル嬢、これはわしの勘でしかないが、お前さんは魔法使いとしての素質があると感じている。この5年間どう過ごすかはお前さん次第だ。たくさん学び、技を磨いていくのを期待しているぞ」

「私も、リザベルが楽しく学んでいけるよう助力するわ」

「神官様、先生、ありがとうございます。この学院でめいいっぱい学びますわ!」


 初めて”平凡”やら”平均”やら以外の評価をもらったリザベルは、嬉しさで緩んでしまう顔を何とか引き締め、少し早歩きで大講堂に戻るのだった。


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「しかしイアン大神官長が助言なさるなんて、よっぽどのものをお持ちだったのですか?」

「いや、彼女自体は実に平凡であった。だがあの目は素晴らしいものだ。良き魔法使いはしっかり観察ができる者から成る。これからが楽しみだなトレイシー副学院長」

「えぇそうですね」


「いやぁ、この代は素晴らしいな」


 そういいながら神官は自身の顎髭を撫で、穏やかながらも先を見据えた目をしていたのだった。

説明が多い回になります。ファンタジーがましましです。

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