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1.令嬢は王都にいく

初めて書く小説になります。


至らぬ点多々ございますが、見守っていただけると幸いです。


 

 リザベル・ウェストは“ド”平凡令嬢である。



 家庭教師からの評価は「可もなく不可もなく平均的」、容姿も「この国に10人は似てる人がいる」と言われるくらい特徴的な部分がない。



 しかし、彼女はそれらを特に悲観的に捉えはせず、むしろ妥当であると思っている。



 リザベルが住むこのレノンディア王国では、王国の貴族は12歳から5年間、王都にあるファルクスタッド学院で魔法についての知識や実践、また王国について学習をすることが義務付けられている。


 平凡であるが伯爵令嬢であるリザベルも今年から学院に入ることとなっていた。



 ウェスト伯爵領は王都から遠く離れているため、領地で過ごしていたリザベラは寮での生活を送ることになる。


 出発に向けて、王都での生活のためにたくさんの荷物を馬車の御者と使用人が台に積んでいた。




「お嬢様、くれぐれも私がいないからといって朝だらしなくならないでくださいね。夜のお菓子のつまみ食いなんて絶対にダメですよ。夜中の大脱走祭りなんてしないでくださいね。」


「もう12歳なのよ!ニナがいなくてもちゃんとできるし...って、そんな祭り開催しないわよ!」


「お嬢様は容姿も作法も秀でてないですけど、行動力が素晴らしいですからね。令嬢らしからぬことをされないか...学院からお呼び出しされたときは頑張ってください」


「始まる前に諦めないでよ」




 侍女であるニナが言うように、リザベルはとにかくお転婆で令嬢らしくなかったのだ。


 幼少期は、堅苦しいことが嫌で作法講習をサボるために屋敷から3時間歩いて脱走したり、従者の仕事がしてみたいと掃除や洗濯、ディナーの下拵えを手伝って一通り出来るようになっていたし、領地での秋の収穫祭に参加して綺麗なワンピースにお構いなく畑に突っ込んでいったりと伝説を残していた。



 だから、逃げていたマナー講習や座学は平凡止まりであったのだ。



 容姿も、服装を華美に飾りすぎずどこにでもあるようなデザインでまとめ上げていたのは、主の性格を考えて窮屈にならないようにとニナが調整していた。



 貴族に対してはそれなりに令嬢として目立たず慎ましく振る舞っていたリザベルだったので、事情を知らない者がリザベルを見た時に「特に秀でていない平凡な令嬢」だと印象を持つのは当然である。



 令嬢としては至って平凡で平均であったが、自由でお転婆で向上心に溢れている少女、それがリザベル・ウェストである。



 彼女の近くにいる者はありすぎる行動力に頭を抱えつつも、それこそ我がお嬢様であると誇りにも思っていたのである。




「5年も離れるなんて寂しくなるわ、定期的に帰ってきてちょうだいねリズ」


「おばあさま!もちろんぜーったいに帰ってきますし、お手紙も送りますわ」




 屋敷の門まで見送りに来ていた祖母エリーザと別れの抱擁を交わす。




「リズ、学院生活を楽しむことも大事だけれど、学生としての役目も忘れないでね」


(おばあさま、いつにも増して圧がすごいわ…)


「......いってきますわ!」



 幼い頃から大事にしてもらっている大好きな祖母の圧に気圧されながらリザベルは王都行きの馬車に乗り込んだ。



 屋敷の皆に見送られ王都へと出発したリザベルは、自分が育った故郷の風景に目をやる。

 王都までは馬車で3日、リザベルは慣れ親しんだ皆と離れるのが少し寂しくなった。



――――――――――――――――――――――



 馬車に揺られながら寝ていたリザベルが目を覚ましたのは、今日泊まる宿の前だった。


 御者に宿まで案内され自分が過ごす部屋へ入ると、リザベルはすぐさまソファに傾れ込んだ。長時間揺れる馬車に乗って、体が悲鳴をあげていたのだ。


 軽く伸びたあとシャワーを浴び、夕食を軽く済ませることにした。



 食べ終わると同時にドアからノック音が聞こえ、リザベルが扉を開けると御者を務めていたロイが訪ねてきてた。


 ロイも屋敷の従者であり、ニナと同じくリザベルが幼い時から側に仕えている。リザベルにとって歳の近い2人は兄姉のような関係である。




「お嬢様、少し失礼します」


「あらロイ、どうしたの?」


「お嬢様にこれを」




 ロイから渡されたのは、3cmほどある分厚い封筒だった。

 その中身はこれからリザベラが通うファルクスタッド学院から送られてきた案内資料だった。


 リザベルは礼を言い、ソファの座って中身を確認する。


 渡された資料には、制服採寸の日程や魔属性の鑑定について、クラス分けに教員の紹介、他にも5年分のカリキュラム案内などが書かれている。


 リザベルは資料に目を通しながら少し不安を抱いた。




「ねぇロイ、私にも魔法が使えるようになるのかしら」


「えぇ、これから学院で学んでいけばお嬢様も使えるようになりますよ」


「今まで認識していなかったものが使えるようになんて、なんだかお伽話みたいだわ」




 リザベルは令嬢としての座学やマナーなどは一応知識として学んでいたが、魔法知識についてはほとんど学んでこなかったのである。


 人は必ず「水・炎・風・木・雷・音・光・闇」の8つの属性から少なくとも1つの属性を持っており、それによって自分の得意とする魔法が分かれるのだ。

 自身の持つ属性や魔力量を知るには、属性を鑑定する「イヴレイシャルクリスタル」と魔力量を測る「クインテティクリスタル」の2つの水晶が必要であり、大神殿や王宮などといった大きな場所でしか測ることができない。



 通常は5歳になると属性鑑定を行うものだが、リザベルが住んでいた長閑な土地には鑑定できる場所がなかったため、リザベルは自分がどの属性を持つのか知らないのだ。




「私どんな属性を持っているのか、鑑定日が少し楽しみだわ」


「魔法を使えるようになると、お嬢様の世界が広くなりますね」


「そうね、私魔法が使えるようになったら、小さい時に綺麗な魔法を見せてくれた人みたいに、すごい魔法使いになって、旅してみたいわ!」


「おてんば娘のお嬢様がそんな魔法使いになれるよう応援しております」


「おてんばは余計よ!私だって最低限令嬢らしくいられることぐらいできるわ」


「社交界でのお嬢様は頑張って令嬢らしく振る舞ってますけど、びっくりするくらい目立たないですからね」


「いいのよ、平凡やら特徴がないやら言われてもニナやロイ、おばあさまたちが私のことをわかっていてくれたら十分だもの」


「そんなお嬢様を、僕や屋敷の者だけでなく領地の皆様も応援されてますよ」


「えぇ、期待に応えられるくらいの、ひとりでなんでもできちゃうほどの知識と技を学んで帰ってくるわ」




 グレージュの瞳を輝かせながら意気込む妹分を見ながら、これから遠い地で成長していく姿に少し寂しくなるロイだった。




 馬車はその後何事もなく2日、3日と移動しリザベルはとうとう王都にやってきたのであった。

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