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0007ケンザンの初ミッション

起稿20240306

改稿20240520

0007ケンザンの初ミッション

2月9日金曜日 帰宅後

いつものように夕食を作って食べて、ネット番組を見る。見終われば、サクッと夕食を片付けて親に電話。明日帰るよと伝えて、軽い近況報告をし、電話も終えると、椅子に腰掛けてVRセットを取り付ける。


「アクセスログイン。」

「音声確認、認証クリア、網膜確認、認証クリア、コントローラー接続確認、クリア。お帰りなさい。リカイ。」

VRセットの女性音声が流れる。

「サバイバルネット、オープン。ログイン。」

「サバイバルネット、オープン。ログイン…。クリア」

俺が呟くと、VRセットの女性の音声が復唱し、目の前にゲームの世界が現れる。

「ようこそ、お帰りなさいませバウト様。」

今度はゲームの女性音声が入り、大勢の人が行き交う街中に視界が変わる。

「ギルドアイテム ワープゲート 帰還」

街中からギルドルームに移ると、すでにみんな揃っていて、見知らぬプレイヤーもいる。

「リカイ。おつかれ。ケンザンもこっち参戦ね。説明は私がしたから」

「お、ありがとう。スンカ。助かるよ」

「これからよろしく。えっと、リカイ」

「よろしくケンザン。呼び捨てとか、いらいろ慣れないかもしれないけど、このギルドのルールだから、慣れて欲しいな」

「そうだね。なんか気が引けてしまうけど、努力するよ」

「よろしく。で、今の話題は?」

「あぁ、これからミッションに行こうかって話をしててね」

「ミッションって、チームミッション?個人ミッションじゃなく?」

「ケンザンは、サバイバルネットは初参戦らしいけど、それなりにVRゲームはやってたらしくてさ。」

「あぁ、お試しでチームプレイしようぜって感じ?けどチュートリアルはこなしたの?」

「えぇ、一通り。昨日のうちになんとか」

「あぁ地味に機能が多くてチュートリアルが長いのに良く終わったなぁ」

「で、チームミッションを受けよう!」

「ま、良いんじゃない。全く知らない人とチームを組むわけではないし。初期のチームでのミッションなら、ギルドの制限をかければ乱入の心配もない」

「なんかぁ、ぬるくない」

「ぬるくは無いな。プレイの好みを知らないのは他のプレイヤーと同じだし。連係とろうとすると、お互いに遠慮したり、予想外の行動をされて上手く動けないからもどかしいし」

「まぁいいや、じゃぁ行こっか」

今日のスンカはヤケに乗り気で焦っているようだ。

「なんか焦ってる?」

「焦ってはいないけど?」

「せめて前提知識くらいもらいたいな。ケンザンは、どんなVRゲームやってたの?」

「あ、始まった。」

スンカが妙なことを口走っているけれど、気にせずケンザンに質問する。

「ファンタジー系というか、中世ヨーロッパ風の魔法ありのRPGとかは、よくやってたかな」

「職業は?」

「戦士系が多かったけど、アタッカーが多かったかな。タンクも場合によってはやってたけど」

「操作はどう?変な癖とか感じない?」

「特別感じないかな」

「ここのチュートリアルで、合うなって感じた武器種は?」

「単発撃ちだとアサルトライフルとグレネードかな」

「マシンガンでガンガン撃ち込みたい?」

「いや、どっちかというと確実に狙って撃ちたいかな」

俺の質問にも丁寧に答えてくれるケンザン。もう少し質問しよう。

「近接はどう?距離感とか」

「慣れるまで難しいかな、ナイフの距離感がいまいちね」

「あぁ分かる。身長設定しても微妙に手の長さが自分と違うからタイミングが合わないんだよね」

「そうそれ」

「うん。それは残念ながら慣れるしかないね。ちなみに近接でガンガン攻めたい?」

「どっちかというと、近すぎたらハンドガンで撃つ方が良いかな」

「了解。じゃ、初心者向けのチームミッション行こうか」

「ん?どういうこと?」

ケンザンがキョトンとした声を出していて、戸惑っているのが良く判る。

「とりあえずの事情聴取できたから、たぶんそれ程苦痛になるミッションにはならないと思う。やっぱ慣れないから、戸惑うかもしれないけどね」

「初心者向けのチームミッションは変わらないんだな」

「だな。少なくともフォローできる状態は作りたいし、最低限しか聞いてないからね。明らかに複雑な行動を要求するのは俺は嫌だよ」

確認か、難色か判らない調子でトウハが聞いてきて、理由を説明する。

「さて、戸惑いを減らすために作戦を組もうか」

「どのミッションにするの?」

「殲滅ミッションあたりかな。やりすぎOKとなると、ゲリラ探索にしようか」

「やり過ぎOKか、耐久戦にしたらどうた?」

「初心者向けのミッションでもフォローがキツいと思いますよ」

耐久戦というのは、時間経過とともに次々と敵が増えるミッションが多くて、防衛戦をテーマにしたミッションが比較的多い。初心者向けでも敵の数が多くて、単調になって油断をすると、他の方向から攻められて対処が間に合わなくなる。そういう系統が多い。初心者でもある程度慣れてこないと、誰かのフォローに頼りきっていると潰される。

「ゲリラ探索って、どんなミッションなんですか?」

「敵は参加人数と同数なので。今回は6人いるから6人ですね。舞台は森。視界の見通しが悪くて、遠距離で当てるのは難しくなります。遭遇戦になりやすいので近すぎることもありますが、こちらはレーダーで相手の場所が丸わかりだから、ちゃんと身を隠せば相手の攻撃をガンガン食らうことは殆ど無いので、倒されることはほぼ無いと思います。」

「だな。まずはレーダーを気にして、木にちゃんと身を隠すこと。出来る限りだけど、先にこちらから攻撃できれば申し分ないかな」

「よし。リカイ。ルーム作成よろしく」

「はいはい。ルーム作成するぞ。」

俺はハンドメニューのミッション選択をして初心者向け項目の殲滅ミッションを立ち上げる。設定として、森林フィールドで、同じギルドの人のみ、乱入無しを選択して立ち上げる。

「パスを送るぞ。ケンザンもメニューを開いて待ってくれ。解らなければシコウに聞いて欲しい。」

「はい。」

俺はギルドメンバー全員にパスを送ると、すぐさまミッションルームを選択する。

目の前の景色がギルドルームから、森の中に切り替わる。


ミッションには、大まかに遭遇ミッションと定例ミッションとレイド系ミッションの三つが存在する。これ以外には特殊なミッションとして、シナリオ由来のミッションがあったりする。

遭遇ミッションは、時間で発生するミッションが多いが、フィールドにいないと参加すること自体が不可能。これは砦などの防衛だったり、街中のNPC(ノンプレイキャラクター)からの依頼だったりとある。基本として、乱入されることが多く、護衛任務とかだと、護衛の妨害等の正反対の達成条件のミッションが存在するので、ミッションの未達成も発生する。

この前やった砦の防衛戦はこれに当たる。

ちなみにミッション未達成だと報酬無しの場合も有る。さらに違約金も設定されている場合、支払いが発生する。

定例ミッションは、今回のような、仲間内で制限をかけたりできるミッションで、どこにいても作成可能で乱入を防ぐことが可能。たまに乱入設定を忘れて、誰かに乱入されることがある。

レイド系のミッションは、遭遇ミッションの一部で、世界ミッションだったりする。それこそ所属国からの依頼という形で、巨大な敵をギルドとかソロとか関係なく責め立てて殲滅するとか、かなり大掛かりなミッションとなっていて、こちらは運営主導のイベントでしか発生しない。


さて、みんな揃ったかな

「一応だけど、レーダーを確認出来るようにしてくれ。あと気付いたことがあれば教えて欲しい」

「敵は6だね。丁度12時、真北の方向。真正面だね」

「距離は500か、少し遠いな」

「途中に隔てる山や川はなし、木々で遠くは確認しにくいから注意」

「さぁ行こう!」

スンカの号令で俺達は一路、敵のいる方向へ向かう。その道中で俺は、いつものようにレーダー用のドローンを飛ばす。

「そのドローンは?」

「レーダーの補助用。普通のレーダーよりも情報が多いんだ。」

「敵に見つかりませんか」

「たぶん見つかるけど、相手もこちらの位置が分かってるはずだから問題ないな。自動追尾で俺を追いかけてくれるから囮作戦もできないわけではない。引っかからないとは思うけど」

「高性能レーダーってところですか?」

「まぁそんな感じ。だけど、何かがいるっていう常備レーダーよりは、敵味方をしっかり判別してくれて、地形情報も比較的正確なのをくれるかな」

「常備のレーダーで敵判別は?」

「出来ない。今見えているレーダーに俺達も入っているだろ?」

「中心の近い部分の点ですね」

「そうそれ、敵と同じ色をしてるから乱戦だと判別がつかないんだ。」

「視認できる距離なら問題ないだろ?」

「トウハ。味方の登録してないと味方を間違えて撃つぞ。」

「味方なら当たらないから大丈夫。」

「スンカ、あれを想定して話してるんだが。」

「あ、あれね。確かに良い感じはしないかも」

「まったく。全員。あれを想定して動いてくれ、味方に当てるな。」

「「「「「了解。」」」」」

あれが何を意味するのかは言わない。壁に耳あり障子に目ありだ。ちなみに、あれとはメカニカルアーマーリーグを指す。

さて、あと数分は、ひたすら前に進むかな。

「いつも思うけどさ」

「トウハ。どうした?」

「いきなり接敵とかダメなのかね」

「シチュエーションとしてはあると思いますけど?」

「いや、こういうミッションで」

「駆け引き込みだからなぁ。より良い場所を取って、相手を迎え撃つのが常套手段だし」

「そうなんだけどさ」

「まぁ、待ち時間が長いとは思いますけどね」

「まぁ退屈は退屈かもな。もうそろそろ、木々の密集地帯を抜けるぞ。隠れやすそうな場所を探してくれ」

「接敵まで時間がありますから慎重に」

「「「「了解」」」」

俺の指示にシコウが付け足し、太めの木を探す。身を隠すのは、この状況では草むらか木しかない。

相手の向かってくる速度が落ちてきた。少し木々の間隔の広いエリアに入ったせいだろう。このまま膠着状態になると無駄に長引くのに手が打てなくなる。

「敵視認。数3」

「レーダーだと、その後ろにもいるね」

「シコウとシクミ。敵の監視は任せた。迂回方向の確認と報告よろしく。そのまま突っ切って来るようなら迎え撃ってくれ。トウハとスンカは時計回りに回り込んで、閃光弾を相手に撃ち込んでから突撃。グラサン忘れるな。タイミングはスンカに任せる。俺とケンザンは反時計回りに回り込む。スンカ達が突撃したら、こっちも最短ルートで突撃する」

「「「「「了解」」」」」

「スンカ。」

「うん」

「こっちも行こうか」

「了解」

敵の方はこちらを警戒しているのか、1カ所に留まっている。ただの銃撃戦ならある意味悪くないようにも見える。ただ、グレネードや閃光弾、手榴弾が使える状況では、時間経過と共に動きにくくなる。

「リカイ…さん。」

「呼び捨てで良いぞ。」

「なかなか慣れないな。閃光弾は何で使うんだい?」

「相手が盲目状態になってくれれば、防御行動が遅れるし、反撃が当たる可能性が大幅に減るからかな」

「僕たちが反対方向に向かっているのは、逃走経路の遮断?」

「完全ではないけどね。人数的には妥当だと思う。敵からすれば、遠ざかる方向に逃げれれば生還率は上がるけど、目がやられていれば動きが限定的でも鈍るから、こちらとしては追撃しやすくなる。」

「目が問題なければ?」

「こっちが不利になるかな。その意味でも俺とケンザンの突撃には意味が出てくる。」

「後ろからプレッシャーをかけて自由に行動させないため」

「そうそう。こちらの都合に相手が乗ってくれれば、とても楽になるけれど、じっくり攻めさせてくれるなら、俺達とスンカ達で北側に回り込めれば、シコウ達と挟み撃ちが出来るんだが、待ちきれないだろうなぁ。主にスンカが」

パンパパン

「さて、どっちが撃ったか」

まだ閃光弾は投げられていない。そうなると、シクミかシコウか敵か。

『敵がトウハ達を狙ってきた。こっちは援護する』

『了解。継続して。』

視認しようとは思うものの、まだ敵が視認できない、待ちきれずにスンカ達が撃ち始めたら、こっちも突っ切るしかない。

「ケンザン。アイテムにサングラスあるか?」

「アイテム…。移動しながらだと、操作が難しいね」

「なら敵の方は見ないでくれ。閃光弾で周りが見えなくなる」

「りょ、了解」

狙われているなら、距離によるけど閃光弾を使っても効果はある。

俺はサングラスはつけずに視界の端に留めつつ進む。

ビカッ!!

「行こうか」

「了解」

スンカ達も打ち始めたようだ。

俺とケンザンは、迂回していたのをやめて、直進で、まばらの木々の間を敵に向かって突き進み始める。

「出来るだけ木を盾にしてくれ、ただ突っ走ると程良い的になる。」

「了解。」

ケンザンは真っ直ぐ敵に向かわず、若干斜めに走る。真っ直ぐ向かわない分、あの進み方なら、的にしにくいはずだ。

「まだ気付いてない?」

「気を抜くな、まだ留まってるのが2ついる。」

レーダーではすでに3つ消えている。

2つは留まり、1つは12時方向へ動き出した。

俺達が進む間に留まっている2つの内1つが消えた。

あ、見えた。

「太めの木に隠れろ」

自分も太めの木に狙いを定めて身を隠す。

ケンザンも隠れたみたいだ。

「見えた?」

「見えてる。狙えるか?」

「狙ってみる」

敵はスンカ達を気にしているようでこちらを警戒していない。撃つなら今のうちだ。

ダダダダ。

ケンザンのアサルトライフルが数発放たれる。

ちゃんと当たったみたいでレーダーの反応が消えた。

「初キルおめでとう」

「ありがとう」

「あと一つか」

「シクミとシコウが動き始めたね」

「スンカとトウハも向かってる。こっちも行こうか」

「了解。」

このミッションは、時間経過で無限増幅してくるタイプのミッションではないため、ここまで来れば、ほぼ消化試合だが、手を緩めたら終わらない。俺達もひとまず追いかけ始めたらすぐに敵の反応が消えた。たぶん位置的にもスンカ達だろう。

「おつかれ」

「あ、レーダーが」

「あぁ、俺達だけになったから終了…だよな」

いつもならミッション終了のアナウンスがかかるはずなのだが、アナウンスがない。

『全員聞け。距離と場所的に俺とケンザンのところに集合。まだ何かあるかもしれん』

「「「「了解」」」」

音声操作の無線通信でメンバーに呼びかけて、周囲を警戒しつつ歩き出す。

「ケンザン。周りを警戒してくれ。」

「何が起きたんだい?」

「ミッション終了のアナウンスがない。まだ何かあるのかもしれない」

「わかった」

「レーダーに反応が無いから、周りを特に警戒してくれ。出来れば銃は構えたまま、いつでも撃てる感じで」

「うん。わかった」

シコウとシクミの場所は、トウハ達より距離は短いこともあり、シコウとシクミが先に到着した。

「アナウンスがないね」

「何も無ければ良いけどな」

「よくあることなんですか?」

「いや、初めてだ。『各自レーダーの反応と視認での異変があったら報告。』」

『リカイ。特に何も無いけど?』

『とりあえず周囲を警戒してくれ。終わってないのが何故か判らん。俺達もスンカ達の方に向かう。』

『わかった。』

それから数分間。特に何も起こらず、急にミッション終了のアナウンスが入って強制終了のカウントダウンが始まった。

「何がキッカケだったのかね」

「まったく判らん。」

「特に異常無し。帰るよ」

「了解」

スンカの号令にメンバーが応じて次々と戻っていく。

「まだ残る?」

まだ周囲を警戒している俺にシクミが問いかける。

「ギリギリまで残るから先に戻ってくれ。アッチで反省会か第二ラウンドだ。」

「うん。わかった」

俺はそのまま強制終了まで残り、周囲を警戒したが、特に何も起こることもなく、強制的にギルドルームに戻された。

「おつかれ」

「おぉ」

「あれから何か起きたか?」

「何も起きなかった。」

「まぁ、サーバーエラーかなんかだろ」

「かな。よく判らん。こっちは?」

「次どこ攻める?」

俺がこちらの状況を確認しようとすると、今日は終始戦闘モードのスンカ。

「反省会が先。手応えは無かっただろうけど」

「物足りない?」

「いや、物足りないっていうかね」

スンカがシクミに問われて言葉に詰まっている。

「良いところを見せたいなら、次はスンカの指揮でミッションを受けてみたらどうだ?」

「あぁ、俺、明日出掛けるから、次はパス」

「そうね。他に次ぎ行けない人は?」

スンカが聞くが返答無し。次のミッションは俺抜きの5人体制のようだ。

「さて、次の話は後で考えるとして、ケンザンはどうだった?」

「チュートリアルよりは操作に慣れたかな。まだハンドメニューとか、知らないことが多すぎるけど」

「大丈夫。あれだけ動けていれば問題ないよ。細かいところは、準備だったり普段の置き場を決めておくとすぐに操作が出来たりするから、そこは追々だね。あと初キルおめでとう」

「お、良いね。命中率は?」

「えっとどこを見ればいい?」

「あ、ごめんごめん。ハンドメニューのミッションの中に戦闘履歴っていうのがあるから、そこの一番上に今回のミッションの履歴があると思う。」

「ハンドメニュー、ミッション、戦闘履歴、あったこれだね。弾数4、命中率100%」

「おぉ、100%出たか!」

「たまたまだよ」

トウハが驚きの声を上げ、ケンザンが謙虚に応ずる。

「いや、撃つタイミングが無かったとしても、誇って良いと思う」

「100%は、正直なかなか出ないから」

「まぁ撃つ量にもよるけどな」

「少なくて100%は美学」

「あぁシクミのこだわりだな。」

「うん。順当な滑り出しということで、次は作戦か、被弾者はいるか?」

「被弾はどうやってって!」

「見つけたかもしれませんが、戦闘履歴の続きですね」

「被弾2」

「く、被弾3、スンカに後れを取るとは」

「トウハ、大げさ。順当よ」

「もうちょっと慎重でもよかったか。配置変えるか?」

「ダメ。」

「いやいや気が早い。スンカを前線から外すって話じゃなくて、ケンザンも前線に加わってもらったらどうかなって話。」

「また一人で別行動?」

「言い方はあると思うけど、概ね間違いじゃない。後方からじっくり狙うことも考えたけど、前線は、人が増えるだけで相手の狙いが分散するからさ。純粋に被弾率は減る傾向になる。」

「あとはソロを見据えると前線慣れした方が、つぶしがききますからね」

「それな。特にケンザンは、サバイバルネットに関しては初心者だからさ。どうよ」

「俺は問題ない。ケンザンさえよければ」

「私も大丈夫。」

「僕も大丈夫。」

「よし。なら今度はそれで試してみよう。前線の手ほどきはトウハとスンカに任せた。」

「は~い。」

なんとか駄々を踏まれかけたのを回避できたようだ。

ちょっとしたイレギュラーはあったものの、たいしたことにはならなかった。

後何か忘れているような…。

「被弾数の隣に損傷結果があるんですが、これっていったい」

「被弾数が多いと装備が損傷する仕組みになっているんですよ。被弾の場所によってはいっぱつで、強制退場させられることもありますね」

「装備が劣化するってことですか?」

「いや、ある程度の損傷はミッションが終わると元に戻るんだが、報酬から修繕費として引かれる。それに、損傷が激しいとその道具、防具、武具がミッションの後、使えなくなる。」

「だから上手く回避しないとね」

「そうだな。努力して欲しい」

「前向きに検討します。」

スンカが妙に畏まった言い方をして、シクミのツボを刺激したようだ。クツクツと笑っている。

「そんな感じか?」

「そうだね。僕も命中率を上げるのを頑張るよ。今日は0キルだし」

「2キル」

「お!てことは最多キルは俺とシクミだな」

「くぅ~」

「まぁ、次で頑張ろうか。俺抜けるけど。」

「そろそろ砦の防衛戦の時間じゃないかな」

「あぁそんな時間か、キル数上げたいならシコウに指揮を変えるか?」

「大丈夫!」

「大丈夫?」

「大丈夫!」

「わかった。ほどほどにな。さて俺は上がるよ。」

「おうおつかれ。」

「おつかれ」

俺はハンドメニューでログアウトを選択すると、

「ログアウト。お疲れ様でした」

ゲームの女性音声が流れて、ゲームの世界から現実の世界に戻ってきた。


VRセットの接続もきって片付け、寝る準備に入る。明日は家に帰るし、動画でも見てから寝ようかな。



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