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怪物の狩人  作者: RYO
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第8話 学園3

 学園生活の授業は、教会組織直下の特殊な事件を対策しうるための訓練学園ならではの授業となった。その授業の二限目は怪物についての講義だ。

 「ですから、漫画やアニメなどで伝わってる吸血鬼では夜しか吸血鬼は活動できないということが描かれておりますがそれは間違えてある解釈だと思ってください」

 ここはやはり教会組織管理下でハンターを育成する学園なんだなと思わさせられる。

 ここまで当たり前のように怪物についてを講義することなど他ではない。

「実際の吸血鬼は日中も活動をしますが基本的には日光にただ弱いだけであり、ひどい日焼けをするくらいです。では、吸血鬼には何が対抗手段としてよいのかわかる人はいますか?」

 数人の生徒が手を挙げる中、勇気はそっと隣の女子生徒を見た。

 名倉佳奈美は気まずいような表情で手を挙げずにいた。

 だけれど、ノートにはしっかりと『銀』と『首を落とす』などと記載がしてあった。

 たいして、隣の香織はノートに何も書いておらず、じっと名倉佳奈美のノートを見ていただけであった。

 なのにもかかわらず堂々とわかるようにと手を挙げている。

「では、香織さん。答えてくれるデスか?」

「はい、シスターハーシア。それは銀で相手にダメージを与えることですわ。それによって、吸血鬼を弱らせて、そのあとに首を切り落とすことで相手は死にますわ」

「正解デス」

 ハーシア先生が香織の答えに正解を出したが勇気は笑い声をあげた。

「いいや、違いますよ」

「あら、特別生徒の勇気さん、何かおっしゃいましたか?」

「わるいですけど、口を出させてもらいます。吸血鬼にとって確かに銀は友好的手段です。でも、実際は銀よりより有効手段があります」

「まさか、勇気さん、それはにんにくとかでもおっしゃるのかしら?」

 後ろの彼女の取り巻きを筆頭にクラス全体で笑いが上がる。

 勇気は名倉佳奈美のノートを手にする。

「ここにいる人たちで唯一これに気づいているのは名倉さんただ一人だけに見えますね。最も有効な方法は、死体の血ですよ」

 勇気は彼女のノートの最後に小さく書いた文字を指さした。

「吸血鬼にとって、死体の血は猛毒になります。人間の死体の血は痺れや硬直を起こさせ、過剰に摂取させれば死に至るケースもあるんです。これが動物とかだとただの吐き気や気持ち悪さを与え、足止めに友好的にも使えます」

 全クラスがバカなことをと言ってあざ笑うがシスターハーシアだけは「そのとおりです」と答えた。

「先生、こういうことをしっかりと生徒に伝えないと現場では役に立たなくなる危険性があるのではないでしょうか?」

「すみません、ゆうきくん。これから追記でお伝えしようとしていたのデス」

「それは先走りすぎましたね。すみません。でも、先生、この対抗手段の場合は銀よりも死体の血に重きを置いたほうがよろしいかと存じます」

「確かにその通りですね。見直しを検討しましょう」

 クラス中が一気に勇気に対する見る目と名倉佳奈美に対しての見る目に変化が生じた。

 香織だけは奥歯をかみしめて睨みつけていた。


******


 そのあとの行われた授業でも、魔術に関する項目でも勇気は逐次、プロとしての経験で口出しをしながら授業をざわめかせ続けた。

 おかげでクラスでは注目の的になっていた。

 4時限目の講義。

 それは外部で行うという『兵装』を用いた実技演習。

 しかし、勇気はその講義に対してやる気力などわかない。それ以前に心配事があった。彼女、名倉佳奈美の身の安全性だ。この実践における講義は実際に学園のグラウンドで模擬用のゴム製ナイフや『兵装』を使用し対人戦するということ。それに乗じて香織を奇襲する何者かがいるやもしれぬと思うと不安だった。さらに言えば、勇気はただの特別生として表向きは学園に転入している。つまりはあまり大っぴらに実力を出すわけにもいかない。勇気は不安な気持ちを抱きながら講義に向けて教室を出てある場所へ行こうとした。

  そこで、アリスの呼び止められる。

「ゆうき、ちょっと」

 彼女の険しい目つきを見て、何を言われるのか想像ついた。

「あなた、目立ってどうするの?」

「アリスさん、すみません。でも、見過ごせなかったんです」

「だからってやりすぎよ」

「これくらいしていれば、もしも彼女が犯人ならぼろを出す可能性もあるじゃないですか」

「それで、名倉さんに危険が及んだらどうするの?」

「大丈夫です。僕が見張っておきます」

 勇気は教室の戸を閉めると背後でクラスの女子たちが黄色い声を上げて、アリスに勇気について聞いている声が聞こえた。

「たしかに、アリスさんの言う通りやりすぎですよね」

 手に抱えたハーシア先生から手渡された実践競技用の衣服である防刃性の体操着のような衣装の入った手提げ袋を見て自嘲しなきゃと考えながら男子更衣室にむけ、歩き始めた。

 


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