1話"不思議な世界"
その日はたまに会う他校の友人と遊ぶ日だった。18歳になって免許を取ったようで遊びに誘ってくれたんだ。クラスではいてもいなくても大差無いような存在だった俺が唯一心の底から笑える場所。でも思い返せばそうなる事が事前に分かった気がするんだ。やたらとテンションが高い3人、酒とタバコを足したような車内の匂い、借りた車ならそういう事もあるのかな、とか思ったけど止めようとした時には遅かった。凄まじいスピード、揺れる車、目に飛び込んでくる川。死んだと思った。けど
「うわああああ、あ、あれ?」
轟音と共に一瞬意識が飛び、気付いた時には林で倒れていた
「何がどうなってるんだ?」
あれだけのスピードで川に飛び込めば体は濡れるはずだしなんなら死んでるはず、今自分が置かれている状況を理解しようとしていると近くから声が聞こえてきた。
声の主を探して歩く。ひらけた場所、そこには大きな猪?と大柄な男が対峙していた。こちらに気が付いたのか猪が突進してくる、そこで俺の意識はまた途絶えた。
セカイ…フル…何かに揺られながら話し声が聴こえてくる。
「おっ気が付いたみたいだな」
体を起こすとそこにはコスプレ?をしているような男女が4人いた。
「えっと、助けていただきありがとうございます、僕は一体なぜここに?」(ていうか馬車初めて見た)
黒いローブを着た女性が前に出て話す
「サスクに襲われそうになっていたところをコイツが助けたのよ、センガの服装みたいだけどなんであんな所にいたの?」
「サスク?センガ?すいません、なんの事か全く分からないのですが」
「また記憶喪失?これで何人目かしら」
「ここ数ヶ月だと4人目だな、自分の名前、出身は分かるか?」神父の様な服を着た男に質問される。
「山村瑞樹です、出身は…」言葉が詰まる。日本語が通じるのに風変わりな服装、サスクと呼ばれる大きな猪、この時代に馬車。ここで自分の出身を言えば混乱に繋がる、そう判断した俺は
「覚えてません」
「ヤマムラミズキ…センガの出身で間違いないようだな、しかしどうやってこの森にたどり着いた?キミの様なフルビトでは街から出る事自体危険だろう」
「えっとー気付いたらここにいて」(センガもフルビトも何言ってるのか分からないけど何処向かってんだ?これ)
「そうか、何か気になる事はあるか?」男は手に持つノートに何かを書いている様子だった。
「今は何処に向かってるんですか?」
「今はセンガに向かっているが、センガも知らないか?」
「はい、教えていただけると嬉しいんですけど…」
「どうした?」
「名前を知っておいた方が話しやすいかなと思いまして」
「それもそうだな、失礼した。私はメカシ」
「アタシはラーナ」「俺はシガーだ!!」
3人から自己紹介を受けたがもう1人はずっと何かを読んでいる
「そちらの方は?」
「君は、彼女が見えるんだな」
「隠密を得意とする一族なんだ、産まれた時から自身の存在を隠す様に教えられている、バレた以上仕方ないな」メカシさんがそう彼女に伝えると驚いた"彼女"はこちらを向いた
「わ、ワタシはヒ、ヒカゲだ、です」
そう言うとまたすぐそっぽを向いてしまった。
「さて、センガとフルビトの説明をしよう」
メカシさんは俺の前に地図を広げた