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まずは設定からですか?  作者: 天野 陽羽
〜い〜
8/72

ペットでした……?

 肘つくな。

 膝立てるな。

 口に入ったまんま、しゃべるんじゃない。

 そして、なぜまだパンイチが居る!

 膝立ててる人に物申したいのに、それがパンイチって!

 イケメンなのに昭和生まれの爺ちゃんと同じことしないでくれる⁉︎ 危ないでしょうが!


「チビちゃん、どうしたのかな。まだ熱い?」

 クッション重ねて高くしてもらった椅子に座ったまま、食事に手をつけずに悶々としているわたしを、フリッツさんが覗き込む。初日にお兄ちゃん宣言をした、銀髪の少しタレ目のイケメンさんだ。イケメンさんなんだけど、頭のてっぺんにトサカがたってる。残念!

「ん?」

 ふよふよ動くトサカに注目していると、もう一度首を傾げられた。


「あたまがへん」


 ぶほっと、反対側で誰かが吹いた。

 フリッツさんは首を傾げたいい笑顔のまま固まっている。

「へ、変? え?」

「あたまツンツンしてるの」

「ツンツン? うわっ!」

 はっと壁の鏡を見たフリッツさんが、慌てて洗面所に駆けていった。

「ギャハハッ、優男も台無し〜!」

「赤いお兄ちゃんもツノがあるよ?」

 大笑いしかけたまま、赤毛の人が3人走っていく。はねてたの一人だけよ?

「がはははっ、中途半端に髪伸ばしてっからだ! オレみたいに剃っちまえ! なあ!」

 隣にいたボールヘッドのミドルエイジが顔を近づけてくるから、それは両手で防御した。


「お?」

「チクチクイタイの、い〜や!」

 この人、とんでもない剛毛ひげなのよね。一回ジョリジョリされて金ダワシかと思ったわ! マジに拒否!


「や? え? イヤって言われた…………!?」

 なぜかショックを受けてる模様。両手でベシッと頬を叩き、ザリザリと撫でまわし、椅子を蹴り倒す勢いで食堂から出て行く。それに続く、これまた両頬を押さえた騎士5名。うち、パンイチ一名。ついでにズボン履いてきて。



 程なく戻ってきた頭びしゃびしゃの4名、顔に泡くっつけた6名。でも頭はぺったんこだし、口の周りはツルツルピカピカ。伺うような視線投げてきて息詰めてるから、にっこり笑ってちんまい親指立てたら、にへにへ笑って席に着いた。


 手のひらコロコロ、おもしろい。

 …………案外、生活改善簡単ではなかろうか。

 幼女、恐るべし!





「あ〜、チビちゃん、また一人で来てる! ど〜して起こしてくれないの〜」

「身の危険感じてるからでしょう? お利口さんだわ」

「どゆこと!?」

「そのままの意味ですよ。あなたと同じ部屋で寝起きだなんて同情します」

「あたしは可愛がってあげてるだけじゃないよっ」


 ひと際にぎやかなのが、皆様ご存じカチュアさん。

 豪奢なクルクル金髪のアライダさんと、こげ茶ショートのモニカさん。

 騎士団に3人だけの女性騎士さんたちである。

 さすがに身だしなみはピシッと決めている。うん、カチュアさんもあの寝相が嘘のようだ。

 三人そろって階段から降りてきたら、その辺りの男性陣がささっと退いた。力関係が謎だ。


「あら?」

 アライダさんが小首を傾げる。それにつれて、ばさあっと黄金のくるくる髪が流れ落ちる。とても邪魔そう。

「なんだかお部屋がスッキリしていますわね?」

「おう! 俺たちが片づけたからな!」

「今日は大風ですか」

 胸を張った面々をモニカさんがぶった斬った。

「なんでそうなる! 俺たちだってやるときゃやるんだ。なあ?」

「そうだそうだ、バカにすんな」

「そんなのどうでもいいけど、なんでチビちゃんごはん食べてないの?」

「パパまってるの」

「パパ? あ〜、団長かあ」

「団長待ってたら冷めちまうぞ。部屋出てくるの時間かかるし」

 時間がかかるのは身だしなみをきっちり整えてくるからだ。団長さんに限って言えば、髪も撫でつけているし、髭も剃っているし、団服も皺一つない。マジメさんである。

 ただ一つの欠点は…………


 タッタッタッタ…………

 足音が近づいてくる。


「…………速いな」

「大丈夫っす。団長の部屋からの廊下には物置かないようになってるっすからね〜」

「それもそう………… あ〜っ


 ドガッ ガシャン ガラガラガラ!!!!


「ってぇ〜っ!!」


 …………さっきのバケツ」


「あ~……」




++++





 「すまん、一個注文しといてくれ」


 めきょっとへしゃげたバケツをぶら下げて、眉を下げた団長さんが入ってくる。

 へしゃげかたが半端ない。あれ、もう絶対使えない。わたしはドン退いたが、周りは「あ〜はいはい」と相槌を打っている。どんだけ日常茶飯事なんだろう。


「なにか問題でも?」

「いや、第三の進捗報告が来てな」

「あ〜、手間取ってるみたいですね。身元がなかなか判明しないとか」

「命じたゴロツキに完全丸投げだったみたいだからな。目についたのを手当たり次第とか、ふざけてるのか」

 話しながら、団長さんが空いた席に座る。一番ドアに近いとこ。

 …………最後に来たからかもしれないけど、団長が一番下座?

 それに、そこ! 団長さんが来てるのに、まだ片肘ついてくちゃくちゃ食べるんかい!


 騎士ってさ〜

 清廉潔白品行方正じゃなかったっけ?

 少なくとも、ラノベじゃそうよね?


 …………妄想か? 妄想なのか?


「うん? なんだまだ食べてないのか?」

 ついと、団長さんの視線がこっちに来た。

 その視線に、哀れみとか同情とかが見えるのは、さっきの会話の続きだろう。

 なんて言ったって、わたしもその事件の被害者だと思われてるらしいからね。違うけど。

 たぶん、ダルマクさんがうまい具合にしてくれた結果だとは思うんだけど、そうじゃないから多少の罪悪感はある。ごめんなさい。


「団長、待ってたんだって〜」

「俺を?」

「うん! パパ、おはよ〜!」

「あ、ああ…………」

「あ〜! わすれてた! えっと、みなしゃん、おはようごじゃいます!」


 しまったしまった。

 挨拶は全ての基本。


 椅子に座ったままだけれど、ペコリと頭を下げた。呂律は相変わらずの4歳児仕様だ。


「へ? あ、ああ」

「あ、お、おはよ〜」

「ござ、い、ます」


 騎士さんたちが、カトラリーを置いて同じように頭を下げる。

 

 おお。

 いい傾向。


「だ、団長! やっぱり飼いましょう! うちで! こんなに可愛いペット、うちでキープするしかな…………っ」


「ペットって言うな! バカもの!」


 椅子を蹴倒す勢いで叫んだカチュアさんの頭がはたかれてた。



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