説明しました
”みっちゃん、このクラゲのできそこない、どないかして~”
その後、野生ではないことを証明しないと危ないということで、テイマーであるベンツさんが登録しに行ってくれて、タグ代わりの小さなメダルをもらってきてくれた。これを紐か何かで首にかけておけばいいらしい。抜けたりちぎれたりすると困るので、後日町に行って魔道具で作るのが良いとのアドバイス付き。
届けに来てくれた時に、ベンツさんから飛び出してきたスライムが、以来、ヤオの頭から離れない。ちなみに、ヤオとは子ぎつねの名前である。しっぽが八本。わかりやすいでしょ。
ベンツさん曰く、先輩風を吹かせたいらしい。
「ここにいる魔獣は、私の従魔だけですからね」とかなんとか。
”うち、魔物ちゃうねん! 神様のお遣いやねんで! ちょ、離れえ!”
声なき声で、ヤオが愚痴りながら、ジェレというスライムを引っぺがそうと、あの手この手で、脚を振り回し壁に体をこすりつけ、床を転げ回っているけれど、まるで効果なし。
”も、好きにしたらええやん……”
最終的に投げた。
その後、わたしの部屋で、今までの経過をざっと説明した。ちなみにおやすみなさいと言ってから来たので、ベッドでこしょこしょ内緒話である。ついでに言うと、おやすみ言いに行った時にジェレは回収してもらいました。
”なんや、せんでええ苦労してへん? なんやのそのハゲ。うちも会うたらいっぺんしばいとこ“
「うん、それはとめない。ラメくんたちがまだがんばってくれてるみたいだけど」
“それって家鳴りやんな? さっきから思ててんけど、それ以外なんであんな出来立てほやほやみたいな格好してるん”
ヤオが今も埃を蹴り出しているヤナリーズに鼻先を向ける。
「あしがはえてしんかしたほうよ? なに、まだしんかする?」
“そらまあ……。そっかあ、あっちでも山ほどウロウロしてるけど、見える人、ほとんどおらんもんなあ。どんな格好してるかわからへんか。とにかく、もっとしゃんとしてるで。せやないと相手になんもできんやん”
「あいて? なにかしたりするの?」
“なんかしたりされたりした時、嬉しかったら御返しするし、いらんかったら仕返しせなあかんやろ?”
おお!
なるほど。
つまり、相手に反応するために実体化して、レパートリー増やすために進化すると。
認識してくれる相手ありきなのね。
「じゃあね、あのかっこうなのはしかたがないとおもうのよ。あちこちにみんながいるっておもってるの、たぶんわたしだけだから、ここ」
わたししか見えてなくて、見えてるわたしが、ほこり蹴りだしてるだけで「おおすごい!」って喜んでるだけだから、あれ以上変わりようがないんじゃないかな。
“は?”
「おかねはらって、かみさまにおねがいするけんりかって、そのしょうめいもってきょうかいいっておねがいすることになってるから、かみさまとかはきょうかいにしかいないことになってるの」
教会にいる神様が全てで、その他の眷属とか人ならざるものがその辺に居るって考えがないんじゃないかな。
“はあああああっ?”
ヤオが素っ頓狂な声を出した。尻尾が八本、扇みたいにぶわっと広がる。そして二回くらい瞬きした後、がっくりと肩を落とした。しっぽもぺしょんと落ちた。
“そら、おるて思てもろてなかったら、気にもかけてもらわれへんか。道理でどこにもおらんわけや。つまらなすぎてどっかに引っ込んでしもてるってことやな。そんで、なんとかおるんは、あのほやほやだけ。……え? てことは、助けてもらお思てたのに、うち、一人で頑張らなあかんの? わあ、お先真っ暗~……“
そんなヤオの足元に、コロコロコロとキャンディが転がった。それを蹴飛ばしたであろうヤナリーズが、ヤオの正面に位置調整した後、しゅたたとほかの仲間のところに戻っていく。
”……もしかして、なぐさめられたん?”
「かもね~」
うちのヤナリーズたちはいろいろ気を遣うたちらしい。みんなが何かに困っていたら、小さなお手伝いをしていっている。以前、洗面所で顔を拭くタオルをびしょびしょのまま手探りしてたゲレオンさんの頭に、棚の上から蹴り落してた。
…………うん、もしかして。
「あのさ、さっきのことだけど、そんなにひかんすることないかもよ?」
まだひげをへにょんとさせたまま、前脚でキャンディをつついてるヤオの頭をなでる。
「ここでなら、もうすこしふえるんじゃないかなあ」
そう、あの時。ゲレオンさんもゲレオンさんで、それで顔拭いた後周りを見回してちょっと首を傾げていたが、なにか納得したように頷いて、手を振りながらリビングへ行ってた。
ほかのみんなもそんな感じで、なにか不思議現象が起こっても、「ラッキー!」とか「こんなとこにあった」とか、とにかくそのまま喜んでる。
きっとたぶん、深く考えてないだけだと思うけど。
でも、それがもしかしたら居心地がいいのかもしれない。その証拠に、ヤナリーズもテングーも少しずつ増えてきてるし進化もしてる。それに。
「いどばたでおせんたくしてるとね、ながれてくおみずにニョロニョロがいるきがするの。みんな、あしのほうにながれてこないってよろこんでた」
誰かの足の近くになると、不自然に流れが変わるのよね。でもって、そんな時に、水の中にきらりと反射する流体が見えるのである。
これって、もしかするともしかするんではなかろうか。
そんなことをヤオに言ったら、目が暗闇にキランと光った。
”ほんま!? 弥都波さまの眷属かな。いや、こっちにはいたはらへんから、こっちの水やな。そっかあ。となるとぉ……”
なにやらぶつぶつつぶやいていたけど、やがてくるんとこっちを向いた。
”よっしゃ。ほんならとりあえず、あれを探すのはちょっと後回しにしよか。眷属増えるん待ちや。まだみっちゃんもちっこいし、こっちに馴染むんが先やろ”
「うん。それはそうなんだけど、さがすってなにさがすの?」
”え? 侍になりたいんやろ? せやったら、要るやん、日本刀”




