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まずは設定からですか?  作者: 天野 陽羽
〜ろ〜
63/72

許可取りました


 その日の夕食時。


 一日の仕事や鍛錬を終えて食堂にやって来た騎士さんたちが、こっちを見るとみんな一度は足を止める。

 

「なに、あれ」


「やっば………… 可愛さ倍増…………」


「疲れ吹っ飛んだぞ。今から外周ランニングできそうだな、おい」


「愛でたい………… むっちゃ愛でたいんだけどっ?」


 ぼそぼそ話しながら、空いてる席に座っていった。

 うん、ごめんね。気になるよね。けど、ここで退くわけにはいかないのである。

 わたしは椅子に座って、子ぎつねを膝の上に抱っこして、ほっぺを膨らませて対抗していた。


「やなの! わたしがぎゅーってしたからいたくなったの! だからわたしがおせわするの!」

「オイゲンに診てもらったんだろう。だったら治ってるから元いたところに戻してきなさい」

「や!」

「野生の動物は、いつ噛んだり引っかいたりするかわからないんだぞ? 危ないから戻しておいで」

「このこはそんなことしないもん。あぶなくないもん、いいこだもん!」


 団長パパが珍しく怖い顔して退いてくれないのだ。

 言いたいことはわかる。野良の動物は何するかわからないから。


 しかし、しかしである。

 この子は野良ではないのだ。一応、恐れ多くもお遣いなのだ。そんなことするわけがないし、大体どこに返せと。わたしのためにわざわざ日本から派遣されてきたんだぞ?

 本人だって、これでポイント稼いでランクアップをもくろんでるんだから、むしろwin-winなんだから!


 わたしは子ぎつねをことさらぎゅっと抱きしめて、幼女の必殺技『うるうるオメメ』でパパを見上げる。

 さあ、どうだ!



「うっ」

「ぐはっ」

「もう、他の野郎の顔なんて見たくねえ……」



 あ、パパ以外にも被弾した。



”うわー。あんた、うまいことやってるなあ。アラフォーに見えへんで。ついで、ちょっと緩めて”


 ほっといて。生きてくためには必要な技なのよ。


「団長。少し落ち着いてくださいな」

 そこに現れたのは、アライダさんだった。豪奢な金髪縦ロール。凛としたボンキュッボンの正統派ご令嬢のような女性で、なぜ騎士団に居るのか謎である。

「エルシアさん」

「はいっ」

 アライダさんはわたしの正面で腰をかがめ、視線を合わせてくる。名前を呼ばれるだけで、背筋を伸ばしたくなるような迫力がある。まっすぐ見つめられたりなんかしたら、ごまかしなんか絶対できない。ごくんとのどが鳴っちゃった。

「どうして狐さんのしっぽを引っ張ってしまいましたの?」

「シュヴァンツだとおもったの。おっきかったから、たくさんおくすりつくれるでしょ? ザビネさんが、ここののきずぐすりつくるのにいるっていってたから、がんばってあつめなきゃっておもったの」

 薬草を集めてたことと理由は嘘じゃない。ついで、しっぽを引っ張った経緯も、嘘じゃない。だから、大丈夫よね?



「え? 俺たちの薬?」

「俺たちの?」

「俺たちのために、薬草取りに行ってくれてたの?」

「俺たちのために……っ」


 あ、外野がまたざわざわし始めた。



”チョロすぎへん?”

 

 いちいち、腕の中から突っ込みが入る。うん、否定はしない。



「なら、わたくしたちにも責任の一端はございますわね、団長。『わたくしたちの』薬を作るためだったんですもの」

 アライダさんが、片手を頬にあてて首をかしげながら視線をパパに送る。


「俺たちのための薬なんですよ!」

「団長だって使うでしょ!」

「せっかくチビががんばってくれてんのに、狐の一匹や二匹!」

「なんなら十匹飼ってもおつりがくる!」

 周りからも、援護が入る。


「し、しかし……っ」

「『わたくしたちの』ため、ということは『第二』のため。ひいては『パパ』のため、ですわ。ねえ?」

「そう、いう、ことに、なる、の、か?」

 言い返そうとしていたパパが、ちょっと顔を赤くして、もごもごと口ごもってしまった。


 アライダさん、そしてみんな、ありがとう! 


「でもね、エルシアさん。団長がおっしゃっていたことも間違いではありませんのよ。もしこの子がエルシアさんにけがをさせたら、許可を出した団長も責任を感じてしまいますわ。そうならないように、きちんとお世話できますか?」

「できるのっ! あと、このきつねさん、とってもかしこいとおもうの。いったらわかるとおもうの」


 さあ、ここでそれを証明するわよ、子ぎつねさん。やってみせるのが一番なんだから。




「きつねさん、おて!」

「きつねさん、おかわり!」

「きつねさん、ふせ!」

「きつねさん、いっかいてん!」

「きつねさん、とってこ~い!」

「きつねさん、……」




 結果、めでたく許可が下りました。






”ちょ! うち、犬ちゃうねんで! 神使(しんし)になにさせるんや~~~~っ!”






 ごめん。



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