サム活はじめました
訂正前のをUPしてたので、更新しました。すみません。
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ジョブ サムライ
なんて荘厳な響きだろう。
サムライよ、サムライ。侍なんだよ、侍。
ふふ
ふふふふふふふふふっ
……うわあ。
自分の部屋でにやにやしてたら、鏡に映った顔がとんでもなかったので、ちょっと退いた。
ほっぺを両手で挟んで、真顔に戻す。
昨日、喜び勇んで、あっちこっちにこしょこしょっと内緒話で言いふらした。
聞いたみんなの反応は、やっぱり「なにそれ?」みたいなやつだった。
まあしょうがないよね。ここはどう見たって疑似西洋文化圏。東の端っこは対象外だろう。
それでも、ジョブはサムライだ。それは間違いない。なんて言っても神様’sに保証させたからね、なれるはず。どういう形で実現するのかは、今のところ分からないけれど、そのための努力、すなわち『サム活』をさっそく始めよう!
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まず問題は体力と筋力。基本をしっかりしておかないと、技術なんか身につかないからね。
だからと言って、マラソンとか筋トレとか、いきなりは無理だと思うのよ。なので、前にもらったおもり付きの靴を引っ張り出してみた。
これ履いて生活したら自然に鍛えられるだろう、きっと、たぶん。
早速、あちこちに御用聞きに回ったところ、薬師のザビネさんにお使いを頼まれました。
「オイゲンに作っておいてって頼まれてたくすりの材料が足りなくなっちゃってねえ。お願いできるかい?」
オイゲンさんは医法師である。医法師とはすなわち、お医者さんだ。しかもこのお医者さん、魔法使ってスキャンできるのよ。CTとかMRI要らないって凄くない? 細胞レベルの分析もできて、それで年齢とかもわかるんだって。
でも治療法は、魔法と薬草。進んでるんだか遅れてるんだか、わからない世界だ。たぶん、魔法が万能すぎるんだろうな。
これがラノベとかなら、治癒魔法を使うことができる人は希少で、聖女とか賢人とかに担ぎ上げられるんだろう。それゆえに高価で、貴重で、お金持ちとか、貴族とかしか診てもらえない、なんてことも起こりうる。でも、ここは魔力さえあれば勉強次第で習得できるらしい。魔力量によって、町医者レベルから大学病院レベルまでの差はあるけれど、誰でも診てもらえるようになっていて一安心である。
ちなみに、オイゲンさんは王立騎士団に所属しているくらいなので、中の上くらいだと笑いながら言っていた。なくなった手は生やせないけど、切れちゃったのは繋げられるくらいだそうだ。普通にすごいと思う。
そんな人が居るから安心は安心なんだけど、最近あちこちで魔獣の被害が出ているらしい。
魔獣の討伐も騎士団の、特に第二が専門でやる仕事なので、情報が入れば出動する。今日はみんな居るけれど、いつまた出動するかわからない。一昨日、「エルちゃん、お薬塗って~」とニコニコしていたフリッツさんのほっぺには、二筋ほど傷がついていた。塗ってあげたら、「あ、俺も!」「ずるいぞ!オレもだ!」と列ができて、最終的にはパパの雷が落ちた。
要するに、怪我なんかは日常茶飯事なのに、ますます増えるかもしれない。だから傷薬を用意しておいてほしいとお願いされたそうだ。
取ってくるのは、シュヴァンツという穂。直射日光にさらすと枯れてしまうとかで、畑の端の半分木立に埋もれた藪のようなところに生えている。ほぐして煮出した汁がきくそうな。
格好いいみんなのお肌が傷だらけになるのはいただけないので、できたら五本って言われたけど、この際十本くらい獲ってこよう。
赤茶けた、筆を逆さまにしたような穂。大きさ的にわたしの顔くらいの長さ。太さはわたしの腕ぐらい。けっこうボリュームのある穂で、ぎゅっと抱きしめたら案外モフモフで気持ち良かった。
先っちょが白っぽくなっているのが、藪の頭からちらちら見えて、二本三本と順調に回収。根元を両手でつかんで引っ張ると、すんなり抜けるので、非力な五歳児にも簡単だ。
八本抜いて持ってきたかばんもパンパンになった。十本は無理かもしれないけど、あともう一本くらいなら何とか!
きょろきょろ見回していたら、見つけましたよ。とっても立派な奴!
上半身くらいの長さがあって、太さも太い。両腕廻して引っ張ったら、なんとかなるかな。
藪をかき分けつつ突進。飛びつく勢いで抱き着いて、両足踏ん張って力いっぱい引っ張った。
コ~~~~~~~~~~ンッ
あれ?




