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まずは設定からですか?  作者: 天野 陽羽
〜い〜
46/72

報告聞きました

 ブックマークが100越えました!

 ありがとうございます!


****************************************






「よいしょ」

 

 今日も今日とて、ベッドから降りて床に転がっているカチュアさんの足元をぐるりと回って窓にたどり着く。

 そおっと開けて、朝の爽やかな風を部屋に招いた。

 

 結構酒臭いのよ。

 カチュアさん、ホントにお酒が好きなんだわ~ チューハイ一杯で真っ赤になって、ふわふわマンションにたどり着いたらバタンキューだったわたしには理解できない世界だよね。



 さてさて、改めまして。


 柏手2回。お日様、今日も平和な1日でありますように。


 今日も今日とて、お祈りします。


 ……平和ってなんだろうね、と思わなくもないけれど。

 ちょっと前までなら、『なにも起こらずまったり過ぎていく時間』みたいな感じだったんだけど、今となっちゃあ、『無事に1日終わればいい!』って感じになっている。


 だってホントにバタバタだったもん。


 その考えを基に言わせてもらえれば、改めて第二に保護されているここ数日は、実に『平和』だった。


 ……今も非日常で、その『ちょっと前』からしたら、立派な『異常事態』なんだけどねー。


 異世界だし、四歳児だし。


 手をグーパーしながら眺めていると、ふよふよパタパタとテングーたちがやって来て、まだ結んでいない髪を揺らしていく。


「テングーしゃん、おはよー」


 ぴゅおおおおっ!


 ぷはっ。

 うん、あいさつわかった。顔面突風やめてね。


 この言葉の幼児語自動変換も助かっている。長きにわたる学生時代、大根すぎて裏方しかしたことがないので、これを意図的にしなきゃいけなかったら、とうの昔にボロが出ていることだろう。まあ、リミッター突破するとダメみたいだけど。


 パタパタパタパタ、テングーがそよかぜと一緒に周りを飛び回る。


 …………いい天気だわ。


 わたし、ここに居ていいんだろうか。

 そう、考えてしまう。


 もう一週間だ。

 ここもありがたいことに、一週間が7日だった。

 ただし、陽の日、月の日、火の日、水の日、木の日、星の日、土の日、だけど。

 その一週間、カチュアさんの部屋に間借りして、なんだかんだと構われて、特に何かするでもなく無銭飲食してるのよね。一宿一飯どころじゃないわ。社会人だった身としては、かなり肩身が狭いのよ。

 孤児院とかのほうが、いっそのこと気が楽なんだけどなー。

 あの事件のケリがつくまで保護されてる感じなんだろうか。

 というか、第三さん? 保護するにしても、この第二に幼児は不釣り合いでしょうよ、お荷物でしょうよ。最初に保護されたからって、なし崩し的に押し付けてるだろ。厚かましくない? なんで最初から孤児院に入れないのよ。おかしいでしょうが。


 おかしいなりに、せめてお手伝いとかさせて欲しいんだけどな~。

 やろうとしたら、抱っこして拉致られるんだよな~。


 はあ。


 窓枠に両手をかけて、おでこを壁にぐりぐりしていると、活動的なヤナリーズが目に入る。部屋の隅っこの埃を蹴飛ばし、机の端から落ちそうになっている口紅を中へと転がし、風で飛びそうになっているメモの上に移動させる。働き者である。

 なんだかわたしがいない間に覚醒したらしく、あちらこちらで小さな仕事をしていて、第二の面々、その正体不明の不思議を認識しながら「便利~」「助かるな~」とあっさり喜んでいた。いいのかそれで。

 今も目の前の桟をトテトテと歩きながら、入り込んでいる葉っぱを蹴り出している。


 そう。歩いて、蹴飛ばして。


 足が、生えてた。


 粘土をちみっと摘んだみたいな足が、ふよふよの下に確かに2個。その短い足で歩き回っている。

 ちなみに、テングーにはちみっちゃい羽が生えて、パタパタ飛んでいる。


 すごいなー。

 関わり合うだけで、ここまで存在感って出るものなのね。それが今まで影も形もなかったって…… どれだけ無視してきたんだ。

 というか、変な権利があるせいで目が向かなかっただけなんだろうけどさ。


 八百万の神々に塗れてきた日本人の本領発揮だぞ。


「これからも、あっちこっちでかしわでふたちゅー!」

『ウラメシヤ!』

「うひゃっ」


 比喩でもなんでもなく、10センチは飛び上がったと思う。

 床にへたり込んだわたしの膝先3センチに、同じようなちっちゃい足と、同じような両手を備えた、ひと回り大きいヤナリーズが着地した。


「ラメくん?」

『ヤッテキタ!』

 両手両足(?)広げて仁王立ち。

「おひしゃしぶりねー。どしてたの?」

『シカエシ!』

「…………あー」

 そういえば、それが最重要課題だっけ。

「できた?」

『シタ! アマモリサセテビショビショニシタ! ホコリアツメテハナツメタ! スキマカゼイッパイサムクシタ! ネテルトキニアタマノウエデマメアラッテウルサクシタ! ウシロデナマエヨンデカクレタ! ボタンノイトモヒモモミンナキッタ! マクラヒックリカエシタ! フトンノシタニイシイレタ! サイゴニコムギコデマッシロニシテ、ケムシデカユクシタ!』


 お、おお…………


 地味だ! 地味だけど!

 家鳴りとしてできる目一杯で、しかも何気に効くやつ!

 なかなかやるのう、ヤナリーズ!


『アイツハ、ケ、ヌイタ!』


 は?


『ナガイノモミジカイノモ、フトイノモホソイノモ、カタイノモヤワラカイノモ、マッスグナノモウネウネナノモ、アタマモカオモ、ウデモモモモ、テモアシモ、ムネモセナカモ、ハラモシリモ、ゼンブヌイタ! ハゲチョビン!』


 …………確かに。確かに「はげちょびんにして」とお願いはしたけども。

 なんだか斜め上にぶっ飛んだ「はげちょびん」になってない!?

 「はげちょびん」どころか「つるっ禿げ」。

 んでもって、全部引っこ抜かれたって、もの凄く痛そうなんだけど。


 一瞬、気の毒に思ったけども、直後、そいつに怒鳴られたし売り飛ばされたの思い出して、瞬時にすんとそんな感情消え失せた。


 むしろ、ざまあみろ。


『パーペキ!』


 やったぜ褒めろ! 的にずっと仁王立ちのラメくん。

 その語彙、どこから拾ってくるんだろう。思いつつ、頭と思しき場所をぐりぐり撫でた。


「しゅごいの! えらいの! おねがいきいてくれてありがと! ラメくん、かっこういいの!」


 瞬間、ラメくんがビカッと赤く光る。

 その後は、ピカピカチカチカ忙しく光って跳ね回る。もしかしなくても、喜んでるっぽい。うふふ。


「わじゃわじゃ、ほうこくきてくれてありがとうなの。しょれで、ラメくんたちはこれからどうしゅるの?」

『ヒッコス!』

 ヒッコス。ああ、引っ越す、かあ。

 そうよね、家鳴りだもんね。どっかのお家に行くよね。

「いいとこだったらいいね」

『イイトコロ、イッタ! タノシイ!』

 おお、つまりはもう引っ越したんだな。よかったね、楽しいとこで。もうなくならないといいね。

「そうかー、じゃあ、げんきでね。いろいろおてつだいありがとう」

『ウラメシヤ!』

 ひゅん。


 ……最後のセリフもそれか~い。

 他の人には通じないからね~。他の挨拶考えた方がいいよ~。



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