私は手に入れる!(第三捜査一課長)
兄上は、何でもできた。魔術も剣も優れていた。友人も多く、人望もあった。勉強も必ず上位に食い込んでいた。
私は劣った弟だった。
だからと言って、何かを言われた覚えはない。ただ、自分が嫌だった。
だから、できることを地道に重ね、いま、この地位に上った。
第三騎士団捜査一課長。団長、副団長の下。12ある課のもっとも優れた課の長。決して低くはない。
だが、ここで終わるつもりはなかった。
しかし、これ以上上を目指すには、目を引く結果が必要だった。
カモフラージュされた小屋。その下にある隠れ家。構造、配置、証拠の隠し場所。
すべて買った。
だから、突入したのだ。勝ちを確信して。
なのに、あれだ。
裏切られたのかばれたのか。どちらかはわからないが、突入と同時に火が付いた。火薬の臭いもした。私は地下の証拠の確保を指示した。だが、バカどもが子供の避難を優先させた。その直後の魔道具の妨害。
やられたと思った。火薬の臭いがしてから、爆発までにあった間は、子供をわざと逃がして、その回収の手間を増やすためだ。時間稼ぎだ。だが逆にしめたとも思った。
子供の一人が、大口の契約の場に居合わせている。その情報も買っていたからだ。
子供を確保して、証言を得ればいい。その場にいて見聞きした情報ほど確実なものはない。それをもってして、この事件を解決できれば、それがすべて私の手柄になる!
これを足掛かりに、私は団長になるのだ。
兄上より上の地位だ。兄上も、私を見直すに違いない。よくやったと言うだろう。誇りに思うことだろう。
いや、地位というものの使いようによっては、まだ上を目指せるな。
そのためには、邪魔な奴を引きずり下ろしておくべきだ。
手始めに、あいつだ。
兄上の横に立ち、バカにしたように私を見ていたあいつだ。
先の戦争で、兄上の手柄を横取りしたあいつだ。
その功で団長という地位に着いたあいつだ。
その地位の使い道もわからず、ただ魔獣を狩るしか能のないあいつだ。
あいつが子どもを痛ぶるようなやつだとわかれば、兄上もあいつがとるに足らないやつだと気づくはずで、私の方が優秀だとわかってくださるはずなのだ。
幸いなことに、私の手の内に駒がある。
バカな団長のお陰で証言できるガキどもを手放さざるを得なくなったが、証言ができないほど幼いあれは、まだ手元にあるのだ。
あれを使えば、悪いうわさなど簡単に作ることができる。少し優しくしてやれば、子供なぞどうにでも転がせるのだから。
地位が上がれば金も手に入るだろう。
金があれば、信仰権を得ることもできるんじゃないか?
信仰権。
そうだ、信仰権を手に入れよう。
奴も言っていたじゃないか。
信仰権を手に入れて、神に願うことこそが選ばれた証だと。
選ばれた者だけが、望みを全てを叶えることができるのだと。
私も神に願うのだ。
全てを我が手にと!




