表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
まずは設定からですか?  作者: 天野 陽羽
〜い〜
16/72

挨拶しました



「なんだか聞きたいことがいっぱいあるんだけど、あたしもいっぱいでちょっと整理するから、とりあえずここに居てね!」



 と、なんだかテンパったパウリーネさんに、とある部屋に置き去りにされた。

 十畳くらいの部屋で、子供が四人。全員、わたしよりは年上っぽい。

 うん、だから、紹介とかしていこうか。そういう気遣いがないな、ここの人。

 唐突に追加されたわたしに、視線が集まる。金髪って言っても色合いが違うのね。赤っぽい女の子が一人、白っぽい男の子が一人。栗毛でチリチリの子が一人と、黒………… 黒っ!?


 思わずガン見した。

 初めて見た、黒の人。

 近づいてよくよく見たら、男の子の目も黒っぽい。肌もそんなに白くないし、ものすっごい親近感。


「な、なに」

 のけぞっている。

 食いつきすぎた。


「ごめんなしゃい。なつかしかっちゃのでちゅい」

 ぺこりと頭を下げる。

「なちゅか………… 懐かしい? この色が?」

「うん!」

 疑わしい視線に全肯定した。


「あ、はじめまちて。エルシアでしゅ。4しゃいでしゅ。よろしくおねがいしまちゅ」

 深々とお辞儀をする。あいさつ大事。

「あ、うん」

「ずいぶん礼儀正しい子ね〜。あなたもあそこに居たの? あ、わたしはアーデルハイド。12になるわ」

「わたしはクララよ。10歳」

「ぼくはハロルト。11」

「…………シャイロー、9」


 …………感動していいかな。

 アルムの山が呼びそうな二人がいたよ。ペーターが居ないのが惜しい。


 赤っぽい金髪の女の子がアーデルハイドちゃん、栗毛の女の子がクララちゃん、白金の男の子がハロルトくんで、黒髪の子がシャイローくん。


「あーでるはいどちゃん、くりゃりゃちゃん、はろるとくんとしろーくん」

「そうそう。一回で覚えられてえらいわね」

 復唱すると褒められた。

「オレだけなんか違う………」

「ちっちゃいんだから大目に見なさいよ。でもあなた、もしかして大人が言ってた『怖いところに飛ばされちゃったけど、怖すぎて引き取りに行けない可哀想な子』? やっと助けてもらえたのね」


 またあ…………


 第三、口縫っちゃおうかな!


++++



 「え~? 怖くないの? 魔獣切り刻んで血まみれで高笑いしてるって噂だったけど」

「あ、ぼくも聞いた。盗賊笑いながら蹴り飛ばして行くって」


 あれからすぐにお昼御飯が出た。

 パンとスクランブルエッグとスープ。

 5人分、ぽいと置いて行かれたので、クララちゃんが椅子に積み木を積んで高さを調節してくれた。

「一人で食べれる?」

「たべれましゅ!」

 この気遣いよ。第三、見習え。

 そして出たのがこの会話だった。言わずもがな、第二の噂である。後者は団長さんだな。


「こわくないよ。だりゃしないだけのやしゃしいおにいちゃんたちだよ?」

「だりゃ…… だらしないの?」

「うん」

 

 寝ぐせついてるし、ボタン掛け違えるし、水たらしながらシャワーから出てきて水浸しにするし、床で寝てるし、ごはんこぼすし。


「でもやしゃしいよ?」

 

 あそんでくれるし、ほめてくれるし、いろんなことをさせてくれる。時々、胸押さえてうずくまってるのが意味不明だが。


「ここより、楽しそうね」

 アーデルハイドちゃんが口を尖らせた。 ハイジって呼んでいい? 長いから。


「ちゅまらない?」

「つまらないわよ。ずっとここに閉じ込められてるもの」

「おねえちゃんたちだけ?」

「ほかの子たちは、身元わかったり、わからなかったら孤児院に移されたりしたからね。残ってるのはぼくたちだけだよ」

「どして?」

「年が上だから、何か覚えていることないかしつこく聞かれてる。捜査の情報欲しいんだろうけど、ぼくらだってうす暗いとこに押し込められて、いつ売られるのかドキドキしてて、他になんか目が回らないかもってこと、全然考えてないんだよね」

「……なあ、なんかチビ相手に会話成立してない?」

 最後のシロー君の疑問は置いといて、つまりは課長の横暴か。

 なんとか見返してやりたいものである。




「腹が立つから、見つけた証拠、まだ出してやらないのよね」

「ね」

「そうそう。あとどれくらいにする?」

「十日くらいか。おでこの面積もう少し増えてから」

「着実に広がってるもんね~」

「くすくすくす」


「!」


 驚いて顔をあげると、シロー君が


「やっぱり、理解してるだろ、おまえ」

 あきれたように、服の下からバサバサと紙の束を出した。


「呼び出して質問するだけで、身の回りのこと放置だもんね。持ってたって全然ばれないのよ」

「最初っから頭ごなしに怒鳴られたら、出す気もなくなるっての」

 アルプス少女たちが、スカートのフリルの間から封筒を引っ張り出す。


「しーだよ、しー」

 最後にハロルト君が靴の中敷きの下からカギをつまみ上げた。



「ばれないって思ってる大人も、隠してるって思っていない大人も、子供バカにしすぎなんだよ」




 ……お子様、おそるべし!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ