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ブラックシープ~人形姫との下僕契約~  作者: 狭山ひびき
Act.1 人形姫との下僕契約

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ルブラン教会の謎 5

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 ローデル男爵邸から少し離れたところに馬車を止め、アークを先に下ろして、シオンは男爵の邸へと向かった。


 どうも、妙な感じがするから、シオンは玄関から、アークはもしものことを考えて裏から忍び込むことにしようと言ったのはアークだった。


 シオンもそれには賛成だった。


 ローデル男爵邸のメイド頭のジルの言葉をどこまで信じていいのかはわからないが――、彼女が言うには、執事のトムキンスは信用ならない男だという。


 ローデル男爵がいなくなる前日、彼が争っていた声と言うのも気になった。


 極めつけは、男爵邸に行ったまま戻ってこないルドルフである。これは、男爵邸の中で何かがあったと疑った方がよさそうだ。


 シオンが玄関の呼び鈴を鳴らすと、まもなくしてトムキンスがあらわれた。


「これは……、シオン様」


 夕方にシオンが訪れてくるとは思わなかったのだろう。トムキンスが驚いた表情を浮かべた。


「こんな時間にすみません。どうしても――、あなたの耳に入れておかなければならないことがありまして」


 作戦は、こうだ。


 シオンがルブラン教会の一件についてローデル男爵に嫌疑がかかっているとし、トムキンスを居間で引き留める。


 その隙にアークが邸へ忍び込んで、ルドルフを探すというものである。


 シオンの厳しい表情を見たトムキンスは、あっさりシオンを居間へと通した。


 居間のソファに腰を下ろすと、シオンは躊躇うそぶりを見せたのちに、ゆっくりと口を開く。


「実は――、今朝、ルブラン教会の地下で、少女たちの遺体が見つかったのです」


 トムキンスが目を見開いた。


「遺体――、ですか?」


「ええ。年齢は十代半ばから二十代前半とほどでしょうか。遺体の数は多く、現在、警察が捜査しています。その中の、嫌疑をかけられている一人に――」


「まさか、旦那様が含まれているのですか!?」


 トムキンスは血相を変えて立ち上がった。


「待ってください! 旦那様はそのようなことをなさる方ではありません!」


 自分の主人が疑われているとわかった執事の反応は、まあ、こんなものだろう。


 トムキンスの慌てぶりが嘘なのか本当なのかはわからなかったが、シオンは困ったように眉尻を下げた。


「俺も、ローデル男爵ではないと信じています。でも――」


「信じていると言うのなら、警察に伝えてください! シオン様の言葉であれば、頑固で融通の利かない警察も聞いてくれるでしょう?」


「言うだけは簡単です。しかし、それで疑いが晴れるとは思えない。だから、一刻も早く男爵を探し出さなくてはならないんです。男爵の口から無実を証明してもらわなくては」


 するとトムキンスは、意気消沈したようにソファに座りなおした。


「それができるなら、苦労はしません。旦那様はいったいどこへ行かれたというのか――。わたしも方々手を尽くして探しているのです。しかし、手掛かり一つないのです」


「そうですか……」


 トムキンスはうつむいて、大きく息を吐きだした。


「もしも……、このまま旦那様が見つからなければ、どうなるのでしょう」


 シオンは気の毒そうな表情を浮かべた。


「それは……、最悪、事件の犯人として、指名手配されることもあり得るかと」


「そんな……!」


 トムキンスが悲壮な表情を浮かべて顔をあげたときだった。


 二階から、ガタン! と大きな音が聞こえて、シオンがさっと顔色を変えた。


(アーク! 大きな物音は立てるなと……!)


 思わず天井に顔を向けたシオンは、内心で冷や汗をかきながら、「何の音でしょう、ネズミですかね?」と苦し紛れに言う。


 トムキンスが怪訝そうな顔をして立ち上がった。


「見てまいります」


「それでは、俺も行きましょう」


 シオンは心の中で舌打ちして、トムキンスについて二階へ上がることにする。


 しかし、トムキンスが居間の扉を開けた、そのときだった。


 そこに、アークに支えられるようにして、ローデル男爵が立っていた。



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