蛇の意味 7
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一方シュゼットとアークは骨董部屋から抜け出して、二階の部屋を片っ端から開けて回っていた。
キャロルの自室に使われていた部屋が見つかればいいと思っていたのだが、骨董部屋から三つ隣にある部屋を開けると、どうやらローデル男爵の書斎らしい部屋で、シュゼットは興味本位にその部屋に入ることにした。
書斎の壁は一面本棚で覆われており、窓際にアンティーク調の机がある。机の上は紙が散乱していて、あまり片づけが得意ではないことがうかがえた。
壁一面の本はどうやらお飾りのようで、棚の僅かな隙真に積もっている埃を見る限り、もう長い間本棚から本は抜き取られていないと思われた。
「アークは本棚を見てくれる? 何か面白いものがあったら教えてちょうだい」
そう言って、シュゼットはまずローデル男爵の机に向かう。
机の上に散乱している紙は特に面白そうなものはなかった。
(何かないかしらね)
シュゼットは机の引き出しを開けて中を覗き込む。
想像できたことだが、やはり引き出しの中もぐちゃぐちゃだった。
シュゼットは引き出しの中をあさりながら、ふと、一つ気になったものを見つけて手に取った。
それは、一通の手紙だった。だが、シュゼットが気になったのは、その手紙に押されていた封蝋の方だ。
(……蛇?)
蛇がとぐろを巻いて口を大きく開けている封蝋はとても珍しい。少なくとも、シュゼットが知る貴族の間では見たことのない封蝋だった。
明らかに怪しい気がして、シュゼットは構わず封の切られている手紙の中身に目を通す。
(……これは……)
シュゼットが思わず目を見張ったとき、ふと足音がこちらに向かってきていることに気がついて、シュゼットは慌てて手紙をドレスの下に隠した。
そして急いで机の前から離れると、本棚を物色するようにアークの隣に立つ。
「ここで何をしていらっしゃるのですか」
まもなく、書斎の扉が開けられて、険しい表情を浮かべてトムキンスがあらわれた。
どうやら、二人が骨董部屋にいないことに気がついて、探していたらしい。
シュゼットは笑顔を作ると、悪びれずにこう言った。
「骨董部屋は見終わっちゃって。下の降りようと思ったらこの部屋を見つけたの。本がたくさんで面白そうだから見させてもらっていたのだけど、駄目だったかしら?」
するとトムキンスは、はーっと大きく息を吐きだす。
「ここは主人の書斎です。勝手に入られては困りますよ。……あなたも、こちらのお嬢様のおつきの方でしたら、お止めいただかないと困ります」
矛先がアークに向いて、アークはただ黙って頭を下げる。
トムキンスは「まったく」とブツブツ言いながらも、思い出したように言った。
「主人たちのカードが終わったようです。シオン・ハワード様もお帰りになられるそうですよ」
シュゼットはにこっと微笑むと、幼い子供の用に「はーい」と間延びした返事を返した。




