表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブラックシープ~人形姫との下僕契約~  作者: 狭山ひびき
Act.1 人形姫との下僕契約

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/46

蛇の意味 6

お気に入り登録、評価などありがとうございます!

「そういえば、奥さんはどうして亡くなったんだったっけか。急だったよなぁ。病死だったのかい?」


 ウイスキーを舐めながらグレイがローデル男爵に訊ねた。


 グレイはだいぶ酔っているようで、顔が赤くなっている。呂律も少し怪しそうだ。


 シオンはポーカーが中断されたためカードを裏返してテーブルの上におくと、二階から戻って来たトムキンスに紅茶を頼んだ。


 ローデル男爵は亡くなった妻のキャロルの話は早々に切り上げたそうだったが、酔って空気の読めなくなっているグレイには不機嫌オーラも通用しないらしい。


「そんなようなものだ」


 ローデル男爵は投げやりに答えて、手酌でグラスにウイスキーを注いだ。


「まだ若かったのになぁ。あんな美人、どこで手に入れたのかは知れないけど、本当にいい女だった」


「そんなにお綺麗な方だったんですか?」


 シオンは機嫌の悪いローデル男爵を気にしながらも、ここは何も知らないふりをして話の乗っておくことにした。何か情報が得られるかもしれない。


「ああ、エドワードにはじめて奥さんを紹介されてときは危うく惚れるところだった。でも、奥さんがこいつにベタ惚れでなぁ、付け入る隙なんてどこにもなさそうだから、無謀な恋はやめたのさ」


「へえ」


「そして中身もいい女だったよ。日曜日のミサには必ず出かけていたらしいし、チャリティーバザーにも積極的、孤児院にまで顔を出しては、自分で焼いたクッキーなんかも配ったりしてなぁ。ほんと、エドワードはうまくやったよ。残念なのは、いい女すぎたからかねぇ、神様が早くに天へ連れ帰っちまったことだけだろうよ」


 グレイがおどけてそう言えば、ローデル男爵がぐいっとウイスキーをあおった。


「もう妻の話はよさないか。二年も前のことだ」


「まだ二年だろう。……なあ、奥さんとはどこで知り合ったんだ? 貴族の出じゃないってのは聞いたんだが、あんな美人だ、どこかの富豪のお嬢さんとかかい?」


「……そんなんじゃない。妻は身よりがない女だった」


「へえ、だから孤児院の子供に優しかったのかな」


「さあな。よく、かわいそうだとは言っていたが、詳しくは知らない」


 ローデル男爵はトムキンスが用意した紅茶にもウイスキーを落とす。酒の減りが早いことが気になったが、シオンは黙って様子を見た。


(……そんなに、キャロルの話をしたくないのか?)


 愛する妻が忘れられなくて、話をするのがつらい――そういうのではなく、ただ話を避けたがっている。ローデルの男爵の苦々しそうな表情を見ながら、シオンは不思議に思う。


 これは、キャロルとローデル男爵のことをもう少し探った方がよさそうだ。だが、この場でこれ以上の情報を聞き出すのは不可能だろう。すでに話を切り上げたがっている様子だった。


(これは……、解剖の許可を取り付けるなんて到底無理じゃないのか?)


 シュゼットは納得しないだろうか。


 シオンはこっそりとため息をついた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ