蛇の意味 5
お読みいただきありがとうございます!
この話も短いので、今日も19時にもう一話投稿します!
シュゼットはトムキンスに案内された部屋をぐるっと見渡した。
骨董部屋と言うだけあって、所狭しと食器や家具、宝飾品が並んでいる。
(へえ……、一応見る目はある人なのね)
骨董品と言えば偽物をつかまされることが多いが、ここに並ぶ多くのものは本物のようだった。
中には海外から取り寄せたものもあるようで、さすがに海外の骨董品にまで精通していないシュゼットには、それが本物かどうかまではわからないが、少なくとも国内のものであろうと思われる品に偽物は少なそうだ。
(シオンの情報だと人からお金を借りるほど困っていたってことだけど、少なくともここにあるものを手放せば、しばらく遊んで暮らせるんじゃないかしら)
それをしないということは、よほどこのコレクションが気に入っているのか、売り払えない事情があるのか――、シュゼットは考え込みながら部屋を歩くと、くるりとトムキンスを振り返った。
「気に入ったわ。少し見ていていいかしら?」
するとトムキンスは、微かに笑みを浮かべると、小さく頷いた。
「主人がいいと申していますのでかまいませんよ。私は下に戻りますので、お好きなだけ見ていってください」
「ありがとう!」
シュゼットは無邪気な少女を装ってにっこりと微笑む。
トムキンスが出て行くと、無言でシュゼットのそばにいたアークを振り返って、
「何か見つけた?」
「いえ、特にこの部屋に怪しいものはないかと」
「まあ、そうよね。普通に考えて、見られて困るものがおいてある部屋に他人を案内するはずがないわ」
シュゼットはとことこと部屋の扉まで歩いていくと、その扉に耳をつけた。
「トムキンスは下に降りたみたいね」
さて、面白いものを探しに行きましょう――、口元に笑みを貼りつけて言うシュゼットに、アークは一瞬何か言いたそうに口を開きかけたが、諦めたように息をついた。
「あまり、無茶はしないでくださいね」
言って訊く相手ではないと知りつつも、アークは小さく釘を刺した。




