第88話:バイクに乗ってツーリングへ行こう
バルンバルンバルン……。
ドッドッドッドッ……。
キュルキュルキュルキュル……。
バイクのアイドリングの音。
バイクが違えば。
エンジンが違えば。
その音もまた、様々に。
夏。
暑い。
夏休み、と、言っても学生の頃のような長い休みはなく。
土日を挟んだ、わずかばかりの、連休。
そんな連休初日の、早朝。
『アオバト撮りに行くぞっ!』
との、カワサキさんのお達しにより。
ひさしぶりに、みんなでプチ・ツーリング。
「方菜ちゃんが乗ると四百でもナナハンに見えるよねぇ」
「お得やろ?」
方菜ちゃん。本名、『鈴木方菜』ちゃん。乗ってるバイクも、そのまんま、同じ名前。
「永依夢のニーハンもナナハン風ですわよ?」
そう。
わたしも方菜ちゃんも身体が小さいので。
バイクが大きく見えてしまう。
「蘭はいいよね、相応だから……」
蘭先輩の身体だとニーハンで丁度いい感じ。
そんな蘭先輩の本名も『鈴木 蘭』と。
今は無き、古き良き、スクーター、だそうで。
「ウチはもう四百とか、デカくて重いから取り回しできる体力ないしなー」
カワサキさんは蘭先輩よりも身長が低いが。
年齢は、かなり、上。
蘭先輩は、カワサキさんの妹さんの涼子さんの『孫』。
カワサキさん……本名『本多タクト』さんは、蘭先輩の『大叔父』に、あたる。
なんでも本名でからかわれたせいで、ホンダのバイクが嫌いになり、カワサキに傾倒したんだとか。
スズキやヤマハでは、無く?
って聞いたら『カワサキグリーンのあの緑色が好き』なんだとか。
もともと、そんなカワサキさんが例の公園で野鳥撮影をしていたところ。
カワサキさんに懐いていた蘭先輩が、カワサキさんと一緒に野鳥撮影していて。
そこへ、わたしが偶然。
さらに、偶然、関西方面から引っ越してきた方菜ちゃんが合流して。
「永依夢ちゃん、荷物こんでしまい?」
「あ、はい。それで全部です」
蘭先輩のお祖母さん、涼子さんがワゴン車にわたしの荷物を積み込んでくれた。
方菜ちゃんもだけど、涼子さんも、めっちゃ関西弁。
カワサキさんも方菜ちゃんにつられて時々関西弁になるから。
わたしも少し関西弁、覚えてもうたやんっ!
「ほな、ウチが先導するよって、みんな、ちゃんと着いて来ぃや」
そう言ってワゴン車に乗り込む涼子さん。
バタン、とドアを閉めると。
ブォン、ブォン、と、エンジンをふかして。
わたしもヘルメットを装着して。
「あー、あー、テステス、インカム、聞こえますかー?」
わたしの家が一番高速の入り口に近いって事で。
うちの前に集合してたので、わたしが最後。
みんなヘルメット被ったまま待機しててくれたので、ヘルメットを被ってヘッドセットの通話を確認。
『大丈夫だね』
『聞こえとんでー』
『そんな大きな声出さなくても聞こえますわよ?』
『あはは。永依夢ちゃんおもろ』
通話確認、おっけー。
『ほな、行くでー』
涼子さんのワゴンを先頭に。
滑り出す、四台のバイク。
方菜ちゃん、蘭先輩に続いて、わたし。
カワサキさんは、最後尾で。
まだバイクに慣れきっていないわたしたちを後ろからフォローしてくれる。
狭い住宅街の道を時速三十キロで走行。
一時停止は、ぴたっと。
前の車両が行ったからって、そのままスルーして不停止は、違反。
『バイクの場合、ちゃんと両足を付いて止まらないと』
って、カワサキさんに教えてもらった、ちょっとした、コツ。
警察官によっては、片足だけだと、不停止を取られる場合があるんだって。
なので、ちゃんと、両足を付いて、左右確認。
最後に右と左後方を確認して、前進。
交差点内直前で、再度減速、停止して、再度左右確認。
右と左後方確認して、さらに右側を意識しつつ、前進して交差点を抜ける。
面倒くせー。うぜー。
って、思うけど。
全然、車走ってないし、ちょっとくらい、いいじゃん?
って。
その慢心が。
積み重なって、おざなりになって。
大きな事故に。
下手をすると、〇亡事故につながりかねないんだ、と。
教習所よりも、鬼教官のカワサキさんのご指導を賜り。
蘭先輩も、方菜ちゃんも。
続いて。
でも、それだけに美しく、華麗に。
『ほな、高速乗るけど、ETCのセット、大丈夫かー?』
バイクのハンドルに取り付けてある、いくつかのインジケータランプ。
うん。
ETCの黄色のランプもちゃんと点灯してる。
『おっけーや』
『大丈夫ですわ』
『大丈夫でーす』
『ほな行くでー』
さて。
早朝の、高速走行。
開始、です。




