第82話:ハンドガン・ガール~肌色のプリンセス⑤
結局。
迫りくる蘭先輩から必死に逃げつつ応戦。
そこに方菜ちゃんも乱入して来て、みつどもえ!?
と、思っていたら、お父さんとお母さんから撃沈の報告。
方菜ちゃんご一家にやられたらしい。
どうやら、カワサキさんたちとやりあっている最中に乱入されたらしく、カワサキさんたちもやられたっぽく。
つまり、残っているのはわたし、肌色のプリンセスこと、川崎永依夢と、黄土の蘭先輩、それに方菜ちゃん家の鈴木家一同。
瞬間的に。
蘭先輩と目と目で会話。
蘭先輩の合図で、先ずは二人がかりで方菜ちゃんを沈め、ご両親を迎え撃ち、これも沈めたら弾切れになったのでマガジンを交換、スライドストップを押して再装填。
残るは……。
と、思っていたら。
ドゥルルルルルル……。
キツツキさんのドラミングの音?
どこ?
「あっ!」
『YOU LOSE』
『HPガ、ぜろ、ニ、ナリマシタ。ソノバ デ タイキ、シテクダサイ』
おぅ……。
後ろから蘭先輩にやられちゃいました。
『げーむせっと。ショウリちーむ、ちーむあんばー』
あらら、終わっちゃったかぁ……。
ゲームを終えて。
夕食、には少し早いけれど、BBQの準備も、皆で一緒に。
機材セットから火起こしは、お父さんズが。
食材の準備は、お母さんズ。
飲み物やら食器やらの準備を、わたしたち娘ぇズ(?)が。
さっきのゲームプレイの話をしながら。
てきぱき、わいわい、がやがや。
「あンたら卑怯やで、ふたりがかりやなンて」
「有利にコトを運ぶのは戦場ではあたりまえ、でしてよ?」
「てゆーか、蘭はンと永依夢も敵同士やろ? なんであの一瞬で共闘できンねン?」
あー。
「蘭の指示がわかりやすかったからねぇ。『一緒に方菜を叩きましょう』って、すぐわかったし」
「むぅ……そないなもンかいねぇ……」
ぶつくさ、と、言いつつも手を動かす方菜ちゃん。
わたしも、あはは、と愛想笑いしながら手を動かして食器を並べて行って。
準備も整って、いざ、BBQ!
「じゃあ、今日はお疲れさまでした! 乾杯っ!」
カワサキさんの音頭で、始まるBBQ。
「あ、お母さんズはお酒ほどほどで頼みますね?」
「はーい」
「はーい」
戦い終えて。
和やかに、穏やかに、嫋やかに。
「いやぁ、鈴木さんの乱入は予想外でしたな」
「ほんと、あの乱戦の中に飛び込んで来るとは」
「あはは、なんか面白そうだったんで」
お父さんズ。カワサキさんは大叔父さんだけど?
「鈴木さんは狙いがすごく正確でしたね。おみごとでした」
「まぐれですわ、まぐれ。せやけどこれ、意外とストレス発散に良ろしいですわねー」
「いやホンマ、なかなかええセンスしとったでー」
お母さんズ。涼子さんはお祖母さんだけど?
わたしたち、娘ぇズ? も。
「せやけど、結構、良え運動なンなぁ、これ」
「ええ。本気でやってる連中はトレーニングもマッチョでしてよ」
「うわぁ……」
やりたくないな、そこまでは……。
でも、方菜ちゃんのおっしゃる通り。
走る、止まる、ジグザグに動く。えーっと、反復横跳び、だっけ? あれを前やら後ろやらに進みながらやったり。
樹に飛びついて隠れて、首だけ出したり引っ込めたり。
いい運動になる、ってのは間違いなく。
訓練して身に着けようと思うと、かなりの練度が必要になるかと。
お父さん、お母さんはやってたんだろうな……昔。
とか、なんとか、振り返ったりしつつ。
おいしいお肉に舌づつみ。
遠くから、フクロウさんの鳴き声が聞こえたような気もしなくはないけど。
今日のところは。
まったり、のんびりと。
翌日は。
朝食の後に三ゲーム。
三チーム同時だと混乱することが解かったので、二チームで組み合わせを変えて。
エリアを絞って範囲を狭くして、短時間で済ませて。
お昼ご飯の後にお片付けを済ませて、撤収。
来た道を、戻る。
帰路は何キロ?
いや、行きと同じだけど。
「あ、タカさん飛んでる」
車窓から山あいを眺めていると、上空に影。
「お? どこ?」
「あなたは前向いてっ!」
とか、なんとか。
普段とは全く違う、わたしにとっては初めてのサバイバルゲーム。
鳥撮りと通じるものが。
あったか、なかったか?
これも、ハマれば面白いんだろうけど。
んー。んー。んー。
かな?
<ハンドガン・ガール~肌色のプリンセス 了>
バード・ガールはまだ少し、続くよ?




