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バード・ガール~鳥撮り少女  作者: なるるん
第五章:二度目の冬、そして……
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第76話:雪景色&ホバーリング・カワセミさん



 お正月も明けて、一月も終わりの頃。


 この地域にしては珍しい、降雪で積雪。


 あちこちで交通マヒやら転倒者続出やらのニュースもわんさか。


 週末でよかった……これが平日だと通学に支障。


 そんな中。


 メッセージアプリのグループチャットに、カワサキさんから『明日行くよー』とのメッセージが。


『え? 公園(フィールド)行くんですか? この雪の中?』


『こんな雪背景(バック)の野鳥写真とか、この辺りじゃ滅多に撮れないからね。雪は積もってるけど、天気自体は良さそうだし』


 なるほど……。


 しかし。


『この積雪だと自転車無理ですよね? どうやって?』


『てくてく』


『歩くンかいっ!』


 どこにそんな(パワー)が、カワサキさん……元気。ほんと、おいくつなんだろう?

 蘭先輩のお祖母さんのお兄さん……。


 蘭先輩十六歳として、蘭先輩のお母さん四十前後とすると、お祖母さん……涼子さんは六十前後のハズなんで、そのお兄さんとなると。


『大丈夫ですか? カワサキさん……』


 ちょっと心配にもなるよね?


『へーきへーき』


 まぁ、ご本人がそうおっしゃるなら。


 と、言うことで、積もった雪がまだがっつり残る歩道を、蘭先輩とザックザック。


「これ……結構な運動ですわね……」

「はぁ、はぁ……うん、めちゃ歩きにくい……」


 雪の中に完全に足が埋もれて、それを引き抜いてまた一歩踏み出して雪に埋もれて……を、繰り返す。


 それにもうすでに靴の中に雪が侵入して、ぐぢゅぐぢゅ。気持ち悪い。


 車道の方が雪が減ってて歩きやすいので、車が来てない時は車道に出るけど、たまに車も走ってくるので、歩道に退避。


 そんな風に歩いていると。


「暑い……」


 カメラバックを背に、三脚を担いでたりもするので、その運動量で汗がだらだら。


 自転車で十数分程度の距離。


 雪の中、徒歩。


「一時間半かかりましたわね……」

「おぅ……」


 帰りはバスだよ、バスっ!



 公園(フィールド)に到着して汗を拭いた後、カメラセット。


 園内も雪化粧。もちろん園路も積雪。


「もう限界……」


「ウチも……予想以上に疲れたわ……」


 オオタカ(しま)の池のほとりにある東屋で座り込む面々。


 ちなみに、方菜(かたな)ちゃんは『寒いしんどい』と欠席。


 シンさんはじめ、ほかの常連さん達数名も同じように東屋に座り込んでいる。皆さん、ここに来るまでに力尽きている模様。それでも『雪の中の野鳥』が撮りたくて気合で来てるんだろうなぁ……。


 いやはや。


 まぁ、わたしも同類。


「お?」


 チュンチュン。


 東屋の柱の陰。


「スズメさんかー」


 ぱしゃり。


 三脚の足を縮めて、ベンチに座った状態で撮影できるようにセットしてあったので、そのままスズメさんにレンズを向けてシャッターを切ってみる。


 東屋の外にある植え込みの根本にも、ちょこっと動く鳥影。


 ぱしゃり。


「こっちは……」


 プレビューで拡大して確認してみると。


「シロハラさん? かなぁ」


「うん、シロハラだね」


 カワサキさんのフォロー。ありがとー。


 そんな感じで、しばらく東屋で休憩した後。


「よぉっし、用水路の方に行ってみるかー」


 と、カワサキさんの音頭で、移動。

 ここから用水路までは比較的近い。

 それに園路も一部はすでに職員さんが除雪作業をしてくれていて、歩きやすくなってる。

 

 用水路に到着してみると、すでに数名の鳥撮り(カメラマン)さんたち。


 狙っているのは、カワセミさん。


 水路の上に張り出した低い樹の枝に、ちょこん。


 わたし達も他の鳥撮りさんの後ろに着いて、撮る。


 カワセミさんは時々、川に飛び込んだり、場所を少し移動したり、しばらく用水路にいらっしゃったので、撮りまくり。


 でも、やがて飛び去ってしまい、島の方に戻る事に。


「タカさんはいらっしゃいませんね……」


 雪背景(バック)のオオタカさんも期待すれど。


「うーん……こればっかりは仕方ないよねぇ……」

「ですわね……」


 いつものベンチは雪で濡れてて座れず。


 歩きだったので余分な荷物を持てず、折り畳みの椅子も持っていなかったため。


 またしても濡れていない東屋に戻り、まったりとする面々。


「はぁ……」

「ふぅ……」

「むぅ……」


 ハーフムーン? 半月?


 いや、それはともかく。


「疲れた……」

「……ですわね」

「帰りますか……」


 来てはみたものの、早々に、撤収することに。


 帰りはさすがに歩きはキつく。運航されてた路線バスで最寄駅まで。

 バス停までの歩きと、バス停からの歩きも結構大変。


 行きは早朝で雪が積もった状態だったのでざっくざっく歩けたけど。


 日が昇って雪が解け始めたところを、ヒトがいっぱい歩いて踏み固められて、一部はアイスバーン状態になってて転びそうで怖い怖い。


 そんな、雪景色でのひとコマがあった翌週は。


 すっかり雪も消えて、普通に自転車で。



 この日は、カワセミさんの飛び込みフィーバー。


 どうやら、水位が下がって池の底に沈んでいたバイクのカゴが絶好の狩場になっているらしく。


 バイクのハンドルにとまったカワセミさんがダイブを繰り返しているんだけど……。


 ハンドルからのダイブだと近すぎてお魚さんを獲り辛いらしく、少し上空へ浮上して、ホバーリングしてからダイブするようになった。


 ホバーリング……羽ばたいて飛んでいるんだけど、中空に停止した状態。


 それを狙って撮ろうとするんだけど……。


「ピントが合わない……」


 カワセミさんが小さすぎてオートフォーカスだと背景の方にピントが合ってしまう。肝心のカワセミさんにピントが合ってくれない。


永依夢(エイム)ちゃん、フォーカスモードを中央一点にして、ファインダーで捕捉(エイム)しながらだといけるよ」


 はいぃ?


「背面のカーソルボタンの中央を押し続けると、一時的に中央一点になるから」


 えっと、これか。


「普段はワイドフォーカスエリアにしてると思うけど、モノによったら中央一点で狙いを定めるといいよ」


 一旦、照準器でカワセミさんを捕捉(エイム)してからファインダーを見る。


 ファインダーに入っているカワセミさんを中央にして、ボタンを押すと……


「おぉ……」


 ファインダーの中のピントをあわせる緑色の四角形のブロックが、さっきまでは画面の中をあちこち動き回っていたけど、ボタンを押した後は。


「真ん中一箇所……中央一点、ってコトか……」


 なるほど。これなら、狙ったところにピントが合わせられる、と。


 うにょーん、うにょーん。


「やっぱり合わないですよー」


 ピントが右往左往している。


「あぁ……被写体(カワセミ)が小さすぎてピントが合わせられないんだろうな……マニュアルしかないね」


 無茶を言う!


 このレンズでピントをマニュアルで、って、難しいのよね……。

 あんまり使いたくないけど。


 カメラのフォーカスモードを、オートからマニュアルに変更。


 レンズ胴体の中央にあるカバーをスライドさせて、ピントリングを露出させてから、そのリングを回して……。


 うーん。


 目視でもピント合ってるのか合ってないのか、よくわかんないなぁ。


 でも、オートフォーカスでピントが右往左往するよりはマシか。

 ってことで、適当なところでシャッターを切ってみるけど。

 この状態だと、ホバーリングしているところは撮れても、水面ダイブにピント合わせるのは絶対的に不可能よね?

 何枚か撮れたら、オートフォーカスに戻そう……。


 このあたり、カメラの性能によりけりで、カワサキさんや蘭先輩のカメラだと、オートフォーカスでもホバーリングにもピントを合わせられるみたい。

 わたしのは少し古い機種なので、そのあたりの機能が微妙ってことらしい。

 うぅ……、なるほど、カワサキさんもそうやって『もっといい機種を!』と、買い替えて来たって事なんだろうねぇ……。



 この日は、このカワセミさんのホバーリング&ダイブで時間を使い、オオタカさんが現れなかった事もあって、早々に撤収。


 その帰り道。


 蘭先輩と自転車で坂道を登っていたらば。


 チッチッチッチッチッ。


 何やら鳴き声が聞こえたので自転車を停めて辺りを探してみると。


「ジョウビタキ?」


 民家の庭の植え込みに、ジョウビタキさん発見。


 こんなこともあろうかと。


 カメラはバックに仕舞わず肩にかけてたので、すぐにカメラを構えて。


 ぱしゃり。


 ジョビ男くん、一枚。


 ジョウビタキさんは、民家の軒先とかにも結構来るらしく、通学の途中でも鳴き声を聞く事はしばしば。


「ジョウビはメスの方が可愛いですわよね……」


 うん、オスの方は頭が黒くて、なんかイカつい感じがする……瞳が写れば結構カワイイんだけど、瞳が写らないと、なんだか黒頭巾被った悪役風?


 そんなこんな。


 冬の、鳥撮りのひとコマ。



 ……ふたコマ?




挿絵(By みてみん)


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