表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バード・ガール~鳥撮り少女  作者: なるるん
第四章:二学期/秋
71/113

第67話:タカさんたち、おはよぉっ!




 秋も深まり。早朝日の出前ともなると、もはや吐く息も白く。


 しゃこしゃこと、自転車を走らせていると。


「うぅ、(さぶ)(さぶ)


 思わず声にも出る。



 最近。


 わたしは、直接公園に向かわずに『西池』を経由して行くようにしている。


 ここのところ、オオタカさんやハイタカさんがよく西池(こっち)に来てるって事で。



 大きな幹線道路を超え、コンビニで朝ごはんのおにぎりを買って。


 そう、いつもはお母さんがおにぎりを作ってくれてたけど、最近、お仕事が忙しくなってお疲れ気味だとか。自分で作れって? お茶は自分で水筒に入れてきたよ?



 コンビニから少し走ると『西池』の上に浮かぶ森が見えてくる。南側から接近すると、明らかに何やら居らっしゃいますね。暗い森の中程にぽつり、と、白い影。


 自転車を停め、肩にかけたコンデジを手に池の縁に近付く。池の周りには低い柵が立てられていて、中に入れないようになっているけど。この柵がちょうど良い三脚替わりに。


 柵の上にコンデジを乗せて、白っぽい影を捕捉(エイム)


 みょーん、みょーん、みょーーーーん、と、コンデジのオートフォーカスが右往左往して、ようやく。


「ん。オオタカさん、おはようございます!」


 オオタカさんの成鳥。遠目で見ると真っ白いお腹も、コンデジで拡大して見ると横縞がうっすら。


 ハイタカさんの場合、横縞がもう少しはっきりと太く見える。


 ふと、何気なくオオタカさんから少し離れた森の端の方を見ると、同じような白い影。


 さっきまで見えなかった気がするけど……後ろを向いてたのが、こっちに向き直ったのかな?


 なんにせよ。そっちを捕捉(エイム)し直して、拡大。


「噂をすれば、ハイタカさん!? おはよーっ!!」


 少し離れてはいるけど、オオタカさんとハイタカさんが並んでとまっているのは珍しい、かも?


 そこへ。


「なんか来たっ!?」


 西の空から飛来する、大きな鳥さん。あわてて捕捉(エイム)。その鳥さんは、オオタカさんの居る森の上の方へすたっと降り立つ。


 夜明け直前の暗さで、オートフォーカスが間に合わず。結局、樹にとまった後にシャッターが切れた。せっかくなので、撮れた写真を拡大して見てみると。


「幼鳥さん!?」


 喉元からお腹までの縦縞が特徴の、オオタカの幼鳥さん。


「三羽……」


 二羽はたまに観られるけど。三羽は、ちょっとレア?


「蘭先輩たちにメッセージ入れとこ」


 スマホを取り出して、メッセージアプリでグループチャットに『西池・タカ三』っとメッセージを送って、カメラをセットアップ。


 タカさん達の動きを……動かない事を……見ながら、三脚を取り出して脚を伸ばす。


 脚を伸ばした三脚を置いて、その上にカメラバックから取り出したカメラを雲台に乗せ、その上に照準器を取り付ける。


 真ん中のオオタカ成鳥さんを標的(ターゲット)に、照準器の微調整。


 レンズの先端の遮光胴(フード)のネジを緩めてオオタカさんが照準器の真ん中に来るように少しだけ回して、ネジを締める。


 折角なので、一枚。


 カワサキさんから借りたこのカメラ。基本的にお父さんに借りているカメラとほぼ同じ仕組みなので実は違和感は少ない。


 ファインダーで見たままの状態がほぼそのまま撮影されるので、ファインダーを見ながらだと露出の失敗は少ない。


 ファインダーの画面が暗い時は、明るくなるように、シャッタースピードか絞り、もしくはISO感度を調整。明るすぎる時も、同じ。


 今はまだ日の出の時間なのでかなり暗いため、シャッタースピードがかなり遅くなるので、ISO感度を高く設定。絞りも明るくしたいところだけど、明るくしすぎると、写真がぼやけてしまう。




 もっと、光を!!




 かつて、誰かが、言ったとか、言わなかったとか?



 ついで、と言ってはナンですケド。


 お父さんから借りたコンデジもまだ使っている。軽くてお手軽なので、サブカメラとして、肩にぶら下げていて。


「こういう時は、便利なのよねぇ」


 そう。高倍率ズームで広い範囲も写せるため、風景写真を撮るにはうってつけなのです。


 森全体を画面に入れて、タカさん三羽が勢ぞろいしている風景を撮る事だってできる。


 カワサキさんから借りたサンニッパだと、鳥さんは大きく写せるけど、ソレしか撮れない。全体的な風景写真を撮るのには向かない。


「適材適所、的な?」



 とか、やってると。


 キーーッ、キッキッキッキッキーーーッ


 カワセミさん!? と、思ったら。


「おはよー、永依夢(エイム)ちゃん」


 三脚を担いだカワサキさん、だった。後ろには蘭先輩も。


「おはよう、永依夢」


「おはよー、蘭、カワサキさん」


「おー、あれかぁ。ほんとに三つ居るねぇ」


 二人は自転車を降り、担いでいた三脚を降ろしてわたしの隣に並べる。


 すでに公園でカメラをセットしていて、そのまま担いで来た模様。


「最初二羽だったんですけど、右上の幼鳥が後から飛んで来たんです」


「ほぅほぅ」


 と、三人並んでタカさんを狙っていると。


「おはようさンやでー。おー、ホンマに三つ並ンどるやン」


 方菜(かたな)ちゃんも到来。


 ぱたぱたと三脚とカメラを組み上げると、蘭先輩が方菜ちゃんに露出の組み合わせを伝える。


 わたしのカメラはファインダーの液晶を見ながら自分で露出調整できるけど、方菜ちゃんが蘭先輩から借りたカメラはそれが出来ないんだとか。


 デジタルになる前の『光学式』のファインダー、らしい。


 ちょっと見せてもらったけど、ファインダーの中の画像がすごくキレイだった。ただ、露出が反映されないので、どんな風に写るのか解らない。


 ファインダー画像の周囲にある露出計、って数値の表示を頼りに調整しないといけないんだけど、もちろん、カメラ初心者の方菜ちゃんが自分でできる筈も無く。


 蘭先輩が都度、露出設定を伝えて調整している。



 そして、日の出。


 太陽が顔を出すと、一気に周りが明るくなって来る。


 特にこの池の西側は畑が広がっていて高い建物がなく、直接太陽の光が当たり始める。


 直射日光。


 なのだけれど、早朝の、日の出直後の太陽の光は。


 地球の大気を横から通過する中で和らげられ、少し赤みのかかった光になる。



 本来なら『ホワイトバランス』を調整して『白を正しく白として写す』方法も、ある、らしい。


 逆に。


 赤みのかかった朝日そのものを表現するのであれば、ホワイトバランスは標準のまま、赤みがかったままにしておく。



 この辺りも、コンデジだとほぼ自動でやってくれてるらしいけど。


 一眼レフの場合は『撮影者の意図を忠実に再現する』事が求められるんだそうで。



 話がそれまくってるわね。



 さておき、タカさん三羽。


 並んでいるとは言え、距離があり、三羽を同時に撮る事はできない。


 コンデジの広角でなら撮れるけど、タカさん自体が『点』にしか映らず。


 とりあえず、オオタカさん、ハイタカさん、幼鳥さん、と、ぐるぐる、と順番に確認しながら、時々シャッターを切ってみる。


「三つとも羽繕いしよンなぁ……ちょっと()、動かへンかもな」


 方菜ちゃんはカメラと共に双眼鏡も健在で、その双眼鏡でタカさんたちを確認している。


 そこへ。


「おはよう」


 と、シンさんを始め、常連さん達もぞろぞろとやって来る。


 池の周りの柵に、所狭しとカメラマンさん達が並び。その後方には、自転車がずらりと並ぶ。



 壮観。



 わたし達のカメラ・レンズよりも、もっと大きなレンズの方も多い。


 ロクヨン、ゴーヨン、ヨンヨン。


 それぞれ、六百ミリ、五百ミリ、四百ミリで、F値は全て、四。


 ハチゴロー、なんてのも、あるらしい。


 もちろん、わたし達のようなサンニッパも多いし、方菜ちゃんのようなズームレンズを使っている人や、コンデジの人も居る。



 さて、陽も少し高くなってかなり明るくなって来て。


 タカさん達の表情もはっきりとわかるようになって。


 タカさん達の、動きを、待つんだけど……



 現れたのは!?










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ