第64話:外堀を埋められて、なし崩される
「ふんふん、これがこーで、こっちがあーで……って、ちょ、マテや、コラ」
蘭先輩からカメラの使い方をレクチャーされる方菜ちゃん。
何かおかしいって事に気付いた模様。
いや、わたしもだけどさ……カワサキさんに使い方教えてもらってはいるけど。
「あ、忘れてましたわ。サブポケットのパーツ、装着けないと」
「ん? どれや? あ、これか」
方菜ちゃんがカメラバックから取り出したのは、割りばしと輪ゴムっ!?
「そうそう、それですわ。それをレンズのズーム環の上に取り付けて」
「どないせーっちゅーねん?」
「貸してご覧なさい」
蘭先輩がその割りばしと輪ゴムを受け取って。
レンズの上に割りばしをちょこんと乗せて、押さえるように輪ゴムを巻く。
「こうやってズーム環を押さえておかないと、上を向けた時に勝手にズームが小さくなってしまいますの」
割りばし&輪ゴム、最強説!?
とかなんとか。
一通りの使い方を習った状態で、実践。
「と、言っても、タカさん、いらっしゃいませんね……」
ある意味、のんびり出来てたのは、タカさんが居ないのもあり。
撮るものが、無い……訳では、無い。
ヒヨドリさんたちや、ハトさんやシジュウカラさんたちも飛び回ってるし。
お池には、カモさんやカイツブリさんもぷかぷか。
島のほとりには、サギさんたちもいらっしゃいます。
「永依夢ちゃんは自分のカメラで照準器使ってるから、だいたいわかるよね?」
「はい、形は違うけど、なんとなく」
カワサキさん作の照準器の方が、洗練されてるって感じは、ある。
わたしのは、四角がドン、とあるだけなので、その四角の中で上下左右にブレる事が多い。
カワサキさんのは『日』の真ん中の横棒の中央が欠けたような形。
そのかけた部分がどんぴしゃ中央に当たるんだけど、その周囲も見る事ができるので視界も良好。
「じゃあ、試しに何か撮ってみて」
「はーい」
何撮ろうなか? と、正面を見たら、丁度、ハトさんがオオタカ島の端にある木の枝に向かって飛んで来たので、それを照準器で捕捉して。
ぱしゃぱしゃぱしゃ
カワサキさんに教えられた通り、ゲームでボタンを連打する風に、シャッターボタンを連打。
押しっぱなしにして、カメラが自動的に連射すると、フォーカスが固定されてしまって、一枚しかピントが合わないんだとか。
なので、シャッターボタンを押し直す事で、フォーカスをもっかい合わせ直す。
わたしのカメラと違って、フォーカスがめっちゃ速いのでこれがスムーズに出来る。
「どんな風に撮れたかなぁ」
と、プレビューを表示する……のは、このボタン、だっけ?
幸い、自分のカメラとだいたい同じ場所にあったので、親指の感覚でボタンをポチり。
「ん?」
ファインダーの中に表示されたプレビュー画像。
ハトさんが、木の枝に止まろうとして、翼を広げたところを正面から。
ハトさん自体は、画面の右上の方に寄っていて、ど真ん中って訳ではないんだけど、一応、全身が写っては居る。
写っては居るんだけど。
ハトさんの部分を拡大表示して見ると、何か違和感。
「カワサキさん、これ、ハトですよね?」
「ん? どれどれ」
カワサキさんにファインダーから液晶画面の方に移したプレビューを見せる。
「え!? アオバトやんっ!」
え?
「何ですって!?」
あ、蘭先輩も食いついて来た。
「ここ、胸のトコ、黄色と言うか、緑と言うか、色、着いてるっしょ?」
「ええ、変な色のハトだなと思って」
「アオバトだよ、これ。どれ?」
これ、は、カメラのプレビュー。
どれ? は、実物が、どこに居るかって事だよね。
「あの、島の端っこの木の、真ん中ぐらいの右の枝の上の……」
「あれかーっ!」
「あれですわねっ!」
カワサキさんと蘭先輩が自分のカメラに戻って即座に捕捉してシャッター、バシバシ。
「ふむ……あれやな? ウチも撮ってみたろ」
方菜ちゃんも、一旦、胸に提げた双眼鏡で対象を確認した後、何気に無理やり押し付けられたカメラでアオバトさん? を捕捉してる。
「えーと、この手前の穴を覗いて、と……ほんで、先端の穴と合わせてぇ……鳥サン真ん中に持って来て……両目開いたまま見るん、難しいなぁ……」
うむ。
最初、慣れないよね、両目開けたまま照準するの。
ワカル。
「二羽いますわね」
「うん、居るね」
木に止まったハトさんをファインダーで狙っている蘭先輩と、カワサキさん。
あ。
「また別のハトさんが二羽、来たよ」
たまたま、ファインダーを見てなかったわたしは、飛んできた別のハトさんに気付いた。
速攻、捕捉して、シャッター。ばしばしっ。
「ぉぉ、四羽、並んどるヤん」
方菜ちゃんも、ばしばしっ。
「ほんまやー」
わたしも関西弁に、方菜ちゃんや涼子さんに染められつつある!?
「あ、カワセミ」
そんな方菜ちゃんが突然。
「撮ったろ」
ばしばしっ。
わたしも言われて狙ってみたけど、間に合わず。
「お!? 撮れとるっ!?」
え?
「見せて見せて」
と、方菜ちゃんのカメラのプレビューを見せてもらうと。
「アオサギやーん」
アオサギさんが撮れていた。
「ちゃうちゃう、そのアオサギの前、よぅ見てみい」
ん?
「おおっ!?」
「な、二個写っとぅやろ? ご夫妻や」
確かに。
アオサギさんの手前をカワセミさんが二羽、飛んでるのが写ってる。
よく見ると、オスとメス。ご夫妻かどうかはわからないけど。
アオサギさんにはピントが合ってなくて、カワセミさんの方にピントがあってる!
いきなり、すごいよ、方菜ちゃんっ!!
てか、百合母と、話数で並んでしまった罠。まあ、百合母は毎日更新で文字数も少な目だしねぇ。文字数ではバドガの方がまだかなり多い。写真もあるしねー。
ってことで、週一ぐらいになりつつある、バドガの方ですが。細々とでも、しばらくは続く、予定。
昨日、久しぶりに、実際にアオバトが撮れたので、この話を思い出した次第。
写真を発掘するのに手間取ったりしたけど、なんとか見つけたら、すぐ近くにアオサギカワセミさんがあったので、こちらも。
昨日撮ったアオバトさんはあんまりキレイに撮れなかったですが、撮影シーンの『音声』は、Stand.fm の【なるるんの『んが、しかし』】で公開中~。
https://stand.fm/episodes/6529da0c2631434d18cb270f
照準器の話と、露出設定の話等も、つらつら。




