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バード・ガール~鳥撮り少女  作者: なるるん
第四章:二学期/秋
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第62話:クロツグミを狙え! スナイパー再び? 



 秋も深まり。


 早朝、陽の出前ともなると、結構肌寒く。


 そろそろ、手袋も欲しくなる季節。



 寒いぃ、と言いながら、薄明りの中を自転車で走り出すと、ふと、視界の隅に動くものが映った。


「ん? なんだろ?」


 道路脇にある建物……倉庫か、事務所かよくわからないけど、民家ではなく、どこかの会社の建物だろうか。


 その建物の窓に、鳥さん発見。


 見ていると。


 その鳥さんは、窓に向かって突進? を繰り返しているように見える。


 何度か、窓にアタックした後、窓枠にとまって、窓に映った自分の姿とお見合いしている?


 しばらく見入った後、また、窓にアタック。


「あ」


 そう言えば、図鑑で読んだ事がある。


 鳥さんは、鏡に映った自分の姿を自分だと認識できなくて、別の鳥と認識して、攻撃をしかける事があるんだとか。


 なるほど。あの鳥さんも、窓に映った自分の姿を敵と勘違いして、攻撃してるのか。


 暗くて、あんまりキレイには写らないだろうけど、一応、カメラを取り出してシャッターを切っておく。


 プレビューしてみると。


「うわはははは」


 まともに、窓に向かって『蹴り』を入れてらっしゃいますね。


 色は、黒と黄色と、白で、尾羽が結構長くて、スマートな感じ。


 色はともかく、この体形はよく見る体形…………


「キセキレイ?」


 図鑑も取り出して確認してみると、やっぱり、キセキレイさんでした。


 ふむ。


『窓アタック・キセキレイ』さん。


 ゲット!



 と、ここにずっと居ても……面白いかもしれないけど。


 とりあえず、公園へ向かおう。



 そして、公園着。


 途中には他に珍しい鳥さんも居らず。


「おはよー、蘭、方菜(かたな)ちゃん」

「おぅっす」

永依夢(エイム)おはよう、って、遅かったですわね?」

「あー、それはね……」


 と、窓アタック・キセキレイさんの話をして、撮った写真も見せる。


「なるほど。面白い()が撮れてるじゃないですか」

「暗ろぅて、ちょっとブレとるンが残念なトコ、か」

「せやねー」


 あかん! 方菜ちゃんの関西弁が地味に移って来てる!?


「で、何か、居る?」

「ええ、居ますわよ、オオタカさん」

「ぉぉ、どこ? ……って、いつものトコかー」


 オオタカさんがお気に入り? の木があって、だいたい、そこに留まる事が多い。


 ささっと三脚を立てて、カメラを乗せて、照準器をセットアップ。


 まだ暗いので、写真はあまり撮らず。


 『飛び出し』に備える。


「そう言えば、カワサキさんは?」

「寝坊、らしいですわ」

「あら?」


 珍しい。


 カワサキさんも来ないけど、オオタカさんも。


「動かないねぇ」

「さっき他の人に聞いたら、昨日、ここでお食事してたらしいですから、今日は動きが鈍いんじゃないか、って」


 ふむふむ。


 わたし達は休日にしか来れないけど、常連さんの一部は定年退職してほぼ毎日来られてるって方もちらほら居らっしゃるらしい。


 そういう方々が平日の話題を提供して下さったりする。


 やがて。


 陽が昇り、辺りが明るくなって来たところでシャッターをぱしゃり。


「ぉー……いつ見てもカッコイイなぁ……」


 ん。凛々しいお姿!


 と、撮った写真のプレビューを拡大して、オオタカさんの雄姿に見とれていると、方菜ちゃんが叫ぶ。


「右! マヒワの群れ!」


 方菜ちゃんの声に、わたしも蘭先輩も右上空を見る。


 おぉ!?


 小さな点々が、(かたまり)になって移動しているのが見えた。


 時々、ハトさんやムクドリさんが似たような形で飛び回ってるのを見る事があるけど。それよりちっちゃい、鳥さんの群れ。


 群れの真ん中を捕捉(エイム)して、撮る、撮る、撮る。


「あぁ、行ってもた……」


 群れは、そのまま池の上空を通過して、飛び去ってしまう。


 でも、まあ、撮れた撮れた。


 多分。


 一応、プレビューを確認してみる。


「ん?」


 何枚か撮った写真を流して見ていると、ふと。


 群れから少し後ろに、点、点、点、点……。


 その部分を拡大して見ると。


「おおっ?」


 マヒワさんが四羽、キレイにまっすぐに並んで撮れてる。


 しかも、その四羽の前二羽と後ろ二羽が同じ形で並んでて。


「なんかオモシロ」


 こういうのって、狙って撮れるものじゃないから、偶然撮れるのも面白いよね。



 で、オオタカさんは? と、見ると、まだじっとしてらっしゃいました。


 そこへ。


「おはよー、クロツグミが入ってるんだって。そっち行こう」


 カワサキさんが登場と共に、何やら情報。


 そのままカワサキさんと一緒に移動する事に。


 自転車で園内を走って、別のエリアへ。



 林の中を進むと、すでに大勢のカメラマンさん達が三脚を並べている。


「どこだ……」


 この場合。


 だいたい、カメラを構えている方々の、そのカメラの向いている先を探せば……


「あれかぁ」


 ちょこ、ちょこ、っと動く影。


 ってか、影じゃなくて、本体?


 真っ黒い鳥さん。


 いや、お腹の方は少し白っぽいんだけど。


 背中を見ると、真っ黒。


「黒・ツグミさん、ね……」


 まんまやーん、と、また方菜ちゃん風の関西弁で突っ込みたくなる。


 図鑑を見ると……


「載ってない!?」

「その手の図鑑は掲載されてる鳥も偏りがありますからね……」


 うぐぅ……蘭先輩がごっつい図鑑を使っているのは、その辺りもあるのか……


 まあ、しょうがない。とりあえず、撮る!


 ……んだけど。


 撮りずらい……


 ツグミさんの(たぐい)だから、地面を這うように、餌になる虫やらミミズ? なんかを探して歩き回る。


 上から撮ると、背中の黒しか撮れ、なーい。


「かくなる上は……」


 カメラを三脚から外して、手持ちにして。


 (うつぶ)せに寝っ転がって、カメラを構える。


 お母さん直伝! スナイパー・モード!


永依夢(エイム)……何、やっとン?」

「踏みますわよ?」

「踏むなー!?」



 とか、何とか。


 でも、おかげで、良い感じに撮れたわぁ。


 と、悦に入ってると。


「ヨシ、座ったろ(てやろう)


 ぎゃーっ


 方菜ちゃんが背中に乗って来たあああ。




 わいわい。



 そんなこんな、秋は深まり行く、行く。





※おまけ写真

挿絵(By みてみん)

左上:窓アタック・キセキレイさん

右上:凛々しいオオタカさん

中央:マヒワ連隊

下段:クロツグミさん


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