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バード・ガール~鳥撮り少女  作者: なるるん
第四章:二学期/秋
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第54話:広がるマップ~新しい撮影ポイント



 四人で公園を周回。


 カワサキさんを先頭に、蘭先輩、わたしこと河崎永依夢(エイム)。それに、新顔の鈴木方菜(かたな)ちゃん。


 いや、まあ、わたしもまだ半年ちょっとなので、わたしも新顔って言えば新顔なんだけど。


 公園の中の森でコサメちゃん……コサメビタキさんと出会い、写真も取れたけど、その後は鳴かない飛ばない。


 なので、方菜ちゃんが。


「なぁ、カワサキはん、公園(ココ)はだいたい分かったよって、周りのスポットも教えてもらえへンやろか?」


 とのことで、公園外を所望。


「そうだな、ちょっと離れるけどポイントあるから、そっち行ってみるかな」


 と、外部のスポットへ連れて行ってもらう事に。


 そう言えば、わたしも家から公園までの間とか、おじいちゃんの家の近くの池とかしか行った事無かったな。遠征で行った関西の場所は、特別として。


 公園以外の地元スポットも覚えておいて損は、無いよね。


 さすがに、公道に出るので三脚は仕舞って、カメラだけ肩にかけて自転車で移動。


 移動中にも、いくつかポイントがあるみたい。


 公園から出て住宅地を抜けると、水田の広がるエリア。


「ここら辺の田んぼも色々撮れるかな。キジとかもたまに見かけるし」


 とのこと。カワサキさんが展示会に出してたキジの写真もここら辺で撮ったらしい。


 その水田地帯の一角、休耕田の上、ツバメさんがいっぱい飛び交っている。


 それを見た方菜ちゃんが。


「ん? アレ、なンや?」


「どれ?」


「あそこ、一羽だけ、なンやちょっと(ちゃ)う色のが()るで」


「あ、あれか?」


 すかさず、カワサキさんが自転車から降りて、カメラを向ける。


 方菜ちゃんも自転車を降りて双眼鏡を向けた。


 蘭先輩とわたしもそれに倣う。


 ツバメさんが大量に飛び交っているため、方菜ちゃんの言う、ちょっと違う一羽がどれか、ぜんぜんわかんない。


 カワサキさんがカメラを向けている方を確認しようとするけど……


「早すぎてわかんなーい」

「同じく、ですわ」

 蘭先輩とわたしは、半分ギブアップ。


 そうこうしていると、


「よし、撮れた。ああ、ショウドウツバメっぽいな」


 カワサキさんが撮影した画像を液晶モニタに拡大表示して見せてくれる。


 普通のツバメさんと違って、全体的に茶色っぽい感じで、ずんぐりとした体形。


「え? ショウドウツバメって、北海道の鳥じゃありませんでしたっけ?」


 と、蘭先輩の疑問に方菜ちゃんが。


「渡りの途中で本土通過しよるさかい、ここら辺に()ってもおかしゅうないで」


 なるほど。


 わたしも撮りたいんだけど……うん、無理。


 何枚かそれっぽい子を狙って撮ってみるけど、早すぎてピントが全く合わないわ。


 うーん。



 カワサキさんがひとしきりショウドウツバメさんを撮影した後、また移動……しようとしたら、今度は。


「あれ、何でしょう?」


 わたしが、ツバメさんの飛び交う休耕田の下の方に鳥さんの影を発見。


 こっちは鳥さんがじっとしていたので、捕捉(エイム)して、撮影してみる。


 これも、まだ見た事の無い鳥さん。


 図鑑を見るより、聞いた方が早い。


「この子、何ちゃんでしょう?」


 液晶モニターに拡大表示したその鳥さんを表示して、みんなに見せてみる。


「「「ひばり」やな」ですわ」


 カワサキさん、方菜ちゃん、蘭先輩。ほぼ同時に答えてくれた。


「頭の上、トサカみたいになっとうやろ? ヒバリの特徴やな」


「うんうん、まさにヒバリ」


「意外と、トサカが上がってるところって撮れなかったりするんですわよね」


 だ、そうです。


 ヒバリさん、げっと~。



 などと一幕の後、今度はちゃんと移動。



 少し行くと工場があって、そこを超えるとまた水田のエリア。そこからさらに少し行くと……池があった。



「ここが『西池』ね」



 池の真ん中に、小さな島もある。雰囲気としては、公園のオオタカ島を小さくしたような感じ?


「あれは島じゃなくて半島だね。池自体がコの字の形になってる感じ」


 とのことで、自転車を停めて、徒歩で、池の周囲をぐるっと一周。



「ここも公園の池と(おンな)しで冬場に猛禽、来よるな」


「うん、その通り。公園に居ない時はこっちに探しに来る人も居るね」


 と、方菜ちゃんの見立てにカワサキさんが同意。やっぱり鋭い方菜ちゃん。



 島の方を見ながら半周くらい歩いたところで、その島に何やら鳥さん発見。


「あれは……オオタカの幼鳥?」


 カメラでズームして見ると、茶色っぽくて、オオタカくらいの大きさの鳥さん。


「ホシゴイ、やな」


 双眼鏡の方菜ちゃんは見つけるのも判断するのも、早い。


「ホシゴイ?」


「せや。ゴイサギの幼鳥」


「ふむふむ」


「背中に白い斑点みたいなのがありますでしょ? それを星に見立てて、星のゴイサギで、ホシゴイ」


 蘭先輩も、物知り!


「ウチが野鳥撮影にハマるきっかけになった子でもある……」


 って、カワサキさん。


 曰く。


「もともと鳥ってあんまり興味なかったんだけどね。通勤途中に田んぼで見慣れない鳥を見かけて、何だあれ? って思って調べたのがきっかけ。その時の鳥が、ホシゴイだったんだわ。当時は今みたいな検索もできないから、検索エンジンで鳥の特徴を色々入力して探しまくったっけな……いや、懐かしいなぁ」


 そっか。昔は今みたいにスマホで画像検索とか出来なかったのね。



 そんなカワサキさんの昔話を聞きながら、池の周りをもう少し進むと。


「え?」

「あ?」

「うぉっ!」

「おおっ!?」


 何か、いらっしゃいますよ!


 全員、ほぼ同時に気付いて思わず声を上げる。


 そして全員、無言でカメラ、双眼鏡を構える。


 全員、ファインダーを覗きながら声だけで会話。


「え? ホシゴイ? あれ? 今度こそ、オオタカの幼鳥ですか!?」


「ちゃうちゃう。サシバや、サシバ」


「刺し歯!?」


「なんか変な漢字充ててませんか? 違いますわよ。サシバって、猛禽の一種ですわ」


「あの模様からして、幼鳥っぽいけど、換羽の途中かなぁ」


 とかなんとか言いながら、ぱしぱし、シャッター。


 あ、こっち向いた。


 ぱしぱし。



 そんなこんなで。



 『西池』



 永依夢(エイム)の鳥撮りマップに新しいエリアが追加されました!




 てってれー。








 でも、公園の東側にあるのに、なんで『西池』なんだろう?







おまけの野鳥写真

挿絵(By みてみん)


左上:ショウドウツバメ     右上:ヒバリ

左下:ホシゴイ(ゴイサギ幼鳥) 右下:サシバ


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