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バード・ガール~鳥撮り少女  作者: なるるん
第一章:冬休み
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第4話:カメラともっと公園を



「ぼー」


 オオタカが飛び立った後、おじさんは『また来るかもしれないから』と、その場で待機するとのこと。わたしも習っておじさんの隣で待つことにした。


「ぼー」


 うん、ヒマ。


 一時間ほど待ってみたけど、オオタカさん、来ない。


 おじさんいわく、昨日も今朝も居た『あの子』はわりと規則的に来てくれるらしいけど、『ほかの子』は気まぐれに来たり来なかったり、らしい。

 『あの子』も一度離れた後は来るか来ないかわからないんだって。

 『あの子』とか、『ほかの子』って、わたしが言ってるんじゃなくて、おじさんがそう言ってた。そういう言い方するんだね。なんか、おじさん、かわいいかも。


 オオタカさん以外の小さな鳥さんは飛び回ってるけど、飛んでたり、ちょこまか動き回ったりでなかなか撮れない。

 池にはカモさんが居るので、練習を兼ねて何枚か撮ってみたけど、オオタカさんほどのかっこよさは無くて、ちょっとテンション上がらない感。


「そういえば、この公園は初めてなの?」

 暇そうにぼーっとしているとおじさんが話しかけてくれた。


「いえ、小さい頃、時々家族で遊びに来てましたけど」

「あー。鳥を撮影するなら、家族で遊ぶようなところとは違うからね」

「なるほど、人が少ないところの方が鳥さんが多いってことですね」

「まあ、そういう事。タカも来なさそうだし、ぐるっと周ってみようか」

「いいんですか?」

「ああ。自転車、だよね?」

「はい」

「んじゃ、行こか」

 カメラをバックパックに仕舞って、自転車に乗ろうとした、ら!?

 おじさんは大きなカメラを三脚ごと肩に担ぎ上げると、そのまま自転車に乗った。


「え? え? え? そのままですか?」

「ん? あー、コレ、本当は危ないからダメなんだけどね。いちいち片付けるの面倒だし、すぐに撮れるように、ね」

「はぁ……」


 すご。


 わたしも改めてカメラをバックパックから取り出して肩に下げる。コケたらアウトだな、と思いつつも、コケなきゃ大丈夫! と、思い直して、そのまま。


 走り出して気付いたけど、他の人もおじさんと同じように三脚を担いだまま自転車で走ってる。ほとんどが年配の方だけど、皆さんパワフル。すごいなぁ。

 

 少し走るとおじさんが停止した。わたしも後ろに停まる。

「ここらへんの林、今は何もいないけど春秋は渡りの小鳥がいっぱい来るよ」

 自転車からは降りずにそう教えてくれる。

 オオタカさんのポイントじゃないのね。

「次、行こっか」

 再度出発。さらに少し走行。停車しておじさんの解説。それを何度か繰り返す。


 最初の池よりもっと大きな池もあったけど、オオタカさんのポイントではないようだ。他のポイントもオオタカさんがメインではなく、小鳥さんばかりで、その名前もピンと来ないものが多い。

 でも、中には珍しい鳥も居るらしく、おじさんが説明してくれた『サンコウチョウ』には興味を持った。春に来る鳥で、尾がとっても長くて、目に水色のリングがある黒い鳥、だそうで。春かぁ。春になったら二年生だなあ。


 おじさんは何も撮らなかったけど、ポイントポイントでわたしは見たことが無い鳥を何枚か撮った。おじさんがあれはソレ、ソレはこれ、みたいに教えてくれるけど……ごめんなさい。あんまり覚えてません。暗記苦手です。メモ帳が要るな、これ。撮った鳥さんは後で図鑑とかで調べるか、またおじさんに聞こうかな。


 いくつかのポイントを周った後、今度は小さな浅い池にたどり着いた。池にはすでに数名のカメラマンさん達が居て、池のほとりに三脚を並べていた。

 おじさんも自転車から降りたので、わたしも自転車から降りて池に近寄ろうとする。

 と、

「ちょい待ち」

 ん?

「カワセミ、居るみたいだから、そーっとね、そーっと」

「カワセミ?」

 なんか聞いたことあるような無いような。


「こっち」

 おじさんも三脚を肩から降ろしながらゆっくりと池に近付いていく。わたしもその後をそろりそろり。

 まわりの人がカメラを向けている先、小さな池の対岸の枯れた草の隙間に青い点。


「わかる?」

 青い点にカメラを向けて、ズーム、ズーム。


「!」

 すごくキレイな鳥。くちばしが異様に長いけど、背中が青? 水色? に光っている。テレビか何かで見たような記憶もあるけど、自分の眼で見るのはこれが初めて。


「すごくキレイな鳥ですね……これが、カワセミ?」

「うん。カワセミ」

 もう、無意識に何度かシャッターを押していた。


 ぴょこん。

 カワセミさんがちょっとだけ動いて、向きを変えた。こちらを向いたおなかは鮮やかなオレンジ。くちばしも下の方がオレンジでめっちゃカラフル!


 カメラのファインダーでカワセミを見ていると、突然、居なくなった。

 同時に周りからシャッター音が聞こえる。


 あれ?


 ファインダーから目を離して見ると、カワセミの居た近くの水面が波立っていた。と、思った矢先、波紋の中心から青い光が飛び出して、最初の場所にすぱっと戻る。

 戻ったカワセミがくちばしに何か咥えている!?

 あわててカメラを構えなおしてファインダーを覗くも、ズームしたままだった。カワセミがみつけらんない。ズームを戻して発見、再度ズーム。ぱしゃり。

「い、い、今のは一体?」

「水中に飛び込んで小魚……エサ獲ったんよ」

「へええ」

「よし、撮れた撮れた」

 おじさんが満面の笑みでカメラの液晶パネルをこちらに向けてくれた。そこには、カワセミが水しぶきを上げながら水面から飛び上がる瞬間が捉えられていた。くちばしにしっかりと小魚を咥えているところまではっきりと。


「!!」

「あ」

 周りでシャッター音が鳴り響く。

 ふと見ると、またカワセミがエサを獲ったらしい。水面が波打っている。


「やられた。連続、行ったかぁ」

 おじさんは笑顔から反転、くやしそうな顔をしながらカメラを構えなおした。わたしも同じようにカワセミをファインダーに入れなおす。

 カワセミはちょうどエサの小魚を飲み込むところだった。シャッターぱしゃぱしゃ。

 そのままカワセミをファインダーで見続ける。

 カワセミはひょこひょこと首を動かしてるけど、飛ぶ気配はない。

 う、う、腕が、腕が。

 カメラを構えたままファインダーを覗き続けるのって、結構しんどい手がだるい。 

 一息付こうと、カメラを降ろすと。


 しゅぱっ。


「あ」


 響き渡るシャッター音。


「うえーん」

「どうした?」

「いえ、目を離したスキに……」

「あはは。あるある。って言うか、ほとんどそんな感じだよ」

「それに、カメラをずっと構えてると手が……」

 あ、だから皆さん。


「三脚あるとだいぶ楽だね。移動が面倒で大変だったりするけど」

 なるほど。

 お父さん、三脚持ってるかな?


「あ」


「どうした?」

「……電池切れました……」

「予備は?」

「無いです……」

「あらあら」

 うう、ちょっと笑われた。

 昨日、充電するの忘れてたわ。


 うん。帰ったらお父さんに三脚と予備の電池が無いか聞こう!






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