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バード・ガール~鳥撮り少女  作者: なるるん
第二章:新学期、三学期
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第23話:オオカミ少年?オオタカ少女?





 公園の池に浮かぶ(しま)。木で覆われているけど今の時期一部は葉が落ちて枯れ木になる。


 そんな枯れ木にオオタカさんが一羽。


 わたしは池のほとりで三脚に乗せたデジタルカメラのファインダーでそのオオタカさんを捉えている。


 わたしの後ろでは、お母さんとカワサキさん、それにスズキ蘭の三人がFPSって鉄砲で撃ち合うゲームの話題で盛り上がっている。


「じゃあ、やっぱり、永依夢エイムちゃんの名前は、捕 捉(エイミング)から?」


「ええ。いつかバレるとは思ってましたけど。まさか野鳥繋がりでバレるなんて斜め上でしたね」


「えっと、銃の弾丸が通過するパイプ状の大事なパーツですわね。中にライフリングと呼ばれるらせん状の溝が掘られてあって、弾丸が通過するときに回転を加えて弾丸の飛翔を直線的にする……」


「それは『銃身(バレル)』や~」


 うん、よくわかんないけどなんか盛り上がってるな。


 ファインダーの中のオオタカさんは『片足を上げて』くつろぎモード。

 しばらくじっとしていたかと思うと、身体のあちこちをクチバシでつついたり、足の爪で頭を掻いたりしている。


「あ!?」

 オオタカさんが動いたのでシャッターを切りながら大声をあげてしまった。


「どうかした?」

 カワサキさんが振り返って訊いてくる。


「オオタカさんが、片方だけ翼を大きく広げてるんです」



挿絵(By みてみん)




「ああ、それ、『伸び』だな」

「『伸び』?」

「人間でも、身体をほぐしたくて手足を伸ばす事あるでしょ」

 あー。犬とか猫もやるね。四津辺(よつべ)動画で見たことある。鳥さんも同じかー。


「なるほど、です」

 とゆーことは、やっぱりまだくつろぎ中ってことか~。

 てか、お母さん、わたしの声に反応して即座に双眼鏡構えてるよ。素早い。

 ちなみに、三脚は返してもらってカメラを乗せている。双眼鏡はお母さんの手持ち。


 わたしはオオタカさん、三人はFPSの話題に戻って、またしばらく。

 二時間、三時間待ち、かぁ。

 オオタカさんのしぐさを見てるだけでも面白いから、まあいいんだけど。


 時々、オオタカさんの手前の空を別の鳥さんが横切ったりするので、それも狙って撮影の練習。

 停まっている鳥さんを写すのはマシなんだけど、やっぱり飛んでるのは難しい。


 背景が空だけだとわりとピントが合うこともあるけど、低い位置で背景に木とかあると、そっちにピントが合って肝心の鳥さんにピントが合いにくいのね。


 カメラの性能もあるけど、撮影テクニック? てのを磨く必要もあるので、練習あるのみ。とっさに反応するのも反射神経? の訓練になるかな?


 照準器でターゲットを正確に捕捉(エイム)してシャッター半押しでピント合わせ開始。カメラの動作音でピントが合ったことを判断してシャッター全押し。


 ピントが右往左往している時はシャッターから指を離して半押しから再実行。

 当然、飛んでいる鳥さんはその場で待ってはくれないから、照準器で捕捉(エイム)したままこの動作を平行して。


 ん。大変。


 だけど、がんばる!


 みたいなのを間に挟みつつ、枯れ木に停まるオオタカさんを監視していると。


「あ!?」

 またオオタカさんが動いたのでシャッターを切りながら大声をあげてしまった。


「今度は何ですの?」

「オオタカさんが上げてた足、降ろして両足で立った!」

「ク〇ラですのっ!?」

 蘭がそう言いながらカメラに飛びつく。


 ク〇ラって何??


 それを見たカワサキさんも自分のカメラまで走る。

 お母さんも双眼鏡でオオタカさんを捕捉(エイム)


「あ! 反対側の足を上げた!」


「……」


 しばらく観察してみるも、オオタカさんの『くつろぎモード』は解除されず。

 三人はまたおしゃべりに戻って行った。


 ん。オオタカさんの動きもだいたいパターンが分かってきたので、若干退屈ぎみになって来た感。


 三人のおしゃべりは尽きる事が無い。

 蘭がいちばんしゃべってて、カワサキさんがそれを補足。

 お母さんは聞く側っぽい感じだけど、たまに何か主張してるみたい。

 そっち方面の話はわたしには何がなんだかなので難ナンですが。


 そうこうしていると。


「あ!?」

 またまたオオタカさんが動いたのでシャッターを切りながら大声をあげてしまった。


永依夢(エイム)、『オオカミ少年』ってお話、ご存知ですか?」

「この場合『オオタカ少女』ってか?」

「あはは」

「違っ…!」


 オオタカさんが足を降ろして両足で立った直後。

 ゆっくりと前傾姿勢になって。

 お尻を大きく上げて何やら白い液状のものを飛ばした後。

 前傾姿勢のまま、大きく翼を広げて……


 飛ぶ、飛ぶ。オオタカさんが、飛ぶ。


 わたしは、夢中でシャッターを切りまくる。


「飛ぶよ、飛ぶ!」


「「え?」」


 飛んだ!


「おお~!!」

「あ!?」

「あ!?」


 オオタカさんが飛び立つところ、お母さんだけは双眼鏡で見てたらしい。

 蘭とカワサキさんはカメラから離れていたため、裸眼で。


 わたしとお母さんも飛び立ったオオタカさんをカメラと双眼鏡で追いかける。


 よりによってオオタカさんは、わたし達の居る方へ向かって飛んで来る。

 そして、わたしたちの頭上を越え、公園の外へと飛び去って行った。


 一瞬の出来事。


「「「「……」」」」


「『オオタカ少女』とか言ってる場合じゃ無かった罠……」

「デスワネ……」


 呆然自失の蘭とカワサキさん。


「一時間四十分、か……」

 カワサキさんがカメラの前に戻って、雲台に取り付けてある時計を見ながらつぶやく。


「意外と早かったですわね……」

 蘭はまだもう少し後になると踏んでたんかな。


「とってもカッコよかった……」

 お母さんはオオタカさんがドアップで見られたらしく、飛び去った方角を眺めながら感動の模様。

 だよね、だよねー。


 そこへ。


 キキっー。

 っと、カワセミが……じゃなくて、お父さんが帰ってきた。


「飽きた~帰ろ~ぜ~」


 ……わが親ながら、空気読め!って突っ込みそうになったよ、お父様……







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