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バード・ガール~鳥撮り少女  作者: なるるん
第一章:冬休み
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第17話:冬休み最終日の夜




 短い冬休みが終わる。


 短いとは言え、なかなかに『濃い』冬休み、だった。


 濃い……


 こい……


 恋……


 そういえば、そういう想いも、あったよね~、的な。

 なんか、もう、遠い過去のように思える。

 あの『熱』は、なんだったんだろう、って思えるぐらい。

 でも、『その程度』だった、って事でもあるのかな。

 ただ、それが、偶然、『今』に繋がっている不思議。


「ふふ」


 わたしは、のんびりと湯舟に浸かりながらそんな事を考えていた。

 そして、思考がふと、その『今』に戻ってくる。


「カワサキさんの新照準器、よかったな」

 とか。


「スズキさんってどこの学校、通ってるんだろ」

 とか


「なんで鳴き声の聞こえる方角が違ってたんだろ?」

 とか。


 スズキさんとはまた公園で会えそうだし、色々聞いてみたりできるかな。


 照準器はこの後改造しよう。アイディアはすでに頭の中にある。

 アレをこうして、ココをああして。材料も家の中にあるものでいけそう。


 そして、『声が聞こえる方角』の事。

 心当たりを思い出した。


 わたしは、お風呂から上がると、自室でその心当たりを探した。


「あったあった」


 高校に入ってすぐの身体測定と健康診断。

 その時の結果表。

 その中の項目を探す。


 聴力。


 左:正常。

 右:()()()


 高校に入ってからの検査だけじゃなく、小学中学でも同じだった。


 小学生の頃に一度、耳鼻科で検査してもらったけど、異常なしだったので、特に通院とか治療とかしてなかった。原因もわからなかったので薬とかも飲んでない。


 痛みとかの症状がある訳でもなく、普段の生活に支障はなかったので気にしてなかったんだけど。


 あー。そういえば、でも。


 右寄りの席の時はそうでもなかったけど、左寄りの席の時、先生の声が聞き取り辛かったっけか。


 鳥さんの鳴き声が聞こえてくる方角が違ってるのは、おそらくこのせい。

 右側の耳の聞こえが悪くて、左側寄りに聞こえるんだ。


 スマホで『片方の耳だけ聴こえにくい』と検索してみた。

 ずらずらと検索結果が出て来る。


 痛みや出血とか無いし、突然聴こえなくなった訳でもないので、そういった条件を除外して該当する内容を絞り込んでみる。

 絞り込んでも素人が原因を特定するのは困難だと言うことが分かった。


 お父さんお母さんに相談してみよう。


「前に診てもらってからずいぶん経ってるし、もう一回ちゃんと診てもらった方がいいかもな」

「前の時は小さな病院だったし、今度は大きなところで診てもらいましょうか」


 お母さんが市内にある総合病院の予約をしてくれる事になった。

 そっちは時間もかかるだろうから、今日のところはこのくらいにして。


 さて、部屋に戻って、照準器の改造。


 お父さんと一緒に作った『割りばし照準器』と、それをベースにカワサキさんが改良した照準器の違いを思い出してみよう。


 わたしのは手前の『(わりばし)』のくぼみから先端の『 I (つまようじ)』とを重ねて『山』に見える様にすると照準が合う仕組み。

 左右は結構合うんだけど、高さが不安定で、上下のズレが大きい場合がある。


 カワサキさんの改良型は先端が少し大きな窓になっていて、手前はごく小さい穴が開いてるだけ。

 文字で書くと、先端が『ロ』で、後端が『・』みたいな?

 『・』は上下も左右も固定されているので、全方向にズレが小さい。

 手前の『・』から先端の『ロ』を見て『回』みたいな感じにするので、まっすぐに見ないと対象が見えない。

 上下のブレも最小限に抑える事ができる。


 ってことで、わたしの照準器も『ロ』『・』にすべく、材料、素材を集める。

 

 まずはクリップ。

 紙とか綴じるやつ。挟む時と挟んだ後でつまみの位置をぱたんと変えれるやつ。『ダブルクリップ』と呼ぶそうな。針金を曲げただけの『ゼムクリップ』とは違う。

 同じ教科のノートが複数になった時、バラバラにならないようにこのクリップでまとめてたりするので、いくつか予備があった。


 それから、厚紙。

 これはゴミ箱から拾ってきた。

 お父さんかお母さんが捨てたストアカード。

 コンビニとかで売ってる、ゲームとか電子書籍とかに課金するやつ。

 そこそこ厚くて強度もあるけど、紙なので加工しやすい。


 って、お父さんお母さん。

 ゲームに課金するなら、わたしに課金して欲しい。

 まあ、ある程度課金してもらってはいるけど。


 それはさておき。

 あとは、ハサミ、カッターナイフ、両面テープ、マジックなど、加工用の道具。

 穴開けに必要な電動ドライバーのセットもお父さんから借りて来た。


 厚紙を適当な大きさに切り取って、カッターナイフで折り目を付けて、クリップに両面テープで貼り付ける。


 手前にする分は、電動ドライバーのドリルで小さな穴をあける。


 ちゅぃーん。


 最初は細いのでやって、のぞき具合を確かめて少しづつ大きくして行く。


 ちゅいーん。


 手ごろなところで、ストップ。


 先端側の『ロ』は、直接作るのが難しいので、『コ』の字型のものを二つ作る。

 片方は九十度回転させて、『U』みたいな感じにしてこれもクリップに両面テープで貼り付け。

 『コ』と『U』を重ねると『ロ』っぽくできるし、『コ』と『U』をそれぞれ上下左右に移動すると真ん中の窓の位置や大きさを程度調節できるようになる、かな? 


 このクリップ三個をそれぞれ割りばしに取り付ける。

 付け方は、クリップ本来の機能の通り。広げて挟むだけ。

 そこそこ丈夫なので、よほど強い衝撃を与えない限りしっかりとくっついてくれる。

 そして、クリップで挟んであるだけなので、簡単にズラす事ができる。


 仕上げにマジックで紙の部分を黒く塗りつぶす。

 ついでに、割りばしもマジックで塗りつぶすと……


 おお。

 ちょっとかっこいい?


 割りばし!って感じだったのが、なんか、それっぽいパーツみたいな感じに仕上がった。


 まあ、輪ゴムで止めてる部分が地味に微妙ではあるけど。




挿絵(By みてみん)





 早速、試しに!と、思っても夜だし、それに明日から学校が始まる。


 次の休日まで、一時お預け。


 そっか・・・明日から、学校だぁ。




(第一章:冬休み 了)




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