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バード・ガール~鳥撮り少女  作者: なるるん
第一章:冬休み
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第16話:水浴びでお友達?




 カワセミさんが飛び去ってしまい、池にはカルガモさんぐらいしか居なくなってしまった。

 他の鳥撮りさんたちも三脚を担いで撤収。

 どこか別の場所の別の鳥を探しに行くのだろう。


「おじさま、どうされます?」

「カワセミが戻って来るの待つか、嶋池でオオタカが来るのを待つか」

「わたくし、用水路に行きたいですわ」

「あそこ木が多くて暗いからイマイチ」

「いえ、水浴びスポットの方が何やら盛況らしいですのよ」

「あー、水浴びかぁ。久しぶりに行ってみるか」


 二人がそう言って移動の準備を始めたので、わたしも倣う。


「ご一緒してもよろしいですか?」

「ぜんぜん、OK。そういえば用水路にはまだ案内してなかったっけか」

「はい、よろしくお願いします」わ、

 って言いかけた。スズキさんが伝染? お嬢様っぽいかな?

「んじゃ、行こっか」


 三人で自転車を走らせる。


 少し進んだところでメインの園路を外れ、池に向かう小道に入る。


 小道からさらに狭い道に入ると、カワサキさんは自転車から降りてさらにあぜ道へ。


「ここ、狭くて足場よくないから、気を付けてね」

「は、はい」


 あぜ道を進むと、小さな川を越える木の橋。

 その橋を越えてまだ進むらしい。


 と、言うか、この川が、『用水路』なのかしらん?


 川を左手に、木々に囲まれた狭い道を進むと、少し開けた場所に出た。

 木でできたベンチが点在してる。

 そのベンチに座っている鳥撮りさんらしきヒトが数名。

 カワサキさんがその中の一人に声をかける。

「よーっす。何か入ってる?」

「お、カワさん、こんちゃ、って、何、美人さん二人も!?」

「あはは、こっちはいつもの親戚の子だよ。そっちはその友達」


 え?


 スズキさんがカワサキさんの親戚って言うのはその通りだけど、わたしは?

 きょとんフェイスのわたしにスズキさんが耳打ち。

(って事にしといた方が話が早いって事ですわ)

(なるほど…ありがと)

(どいたま)

 どいたま、って・・・時々、脱お嬢様よね、スズキさん。


「年末から始めたんで、いろいろ教えてもらってるんですぅ」

 ちょこっとブリっ娘入れた感じで軽く返しておく。


「で、何が入ってる?」

 さらっとスルーして話をそらしてくれるカワサキさん。


「アトリとマヒワ、来てるよ」

「ほぅ」

 話しながらカメラをセット。わたしもスズキさんも先に居た人の邪魔にならないように、カワサキさんの邪魔にもならないように、少し離れて並ぶ。


 カメラの向きは?


 川辺に低い木が点在していて、その木々の間にでっかい石? 岩? が一個、どん! って感じで存在感。


 カワサキさんのカメラはその岩を文字通りロック・オン(違う)


 あの石の上に『アトリ』さんや『マヒワ』さんがいらっしゃると?

 わたしも同じように石を狙いつつ、ささっとスマホで検索。


 ふむふむ。アトリさんもマヒワさんも小鳥さん。

 アトリさんが赤白黒で、マヒワさんが黄白黒、か。


 しばらく、ぼーっと見てると、一羽の小鳥さん。


 赤白黒、ってコトは、アトリさん?

 いや、スマホで見たアトリさんみたいに複雑な模様じゃなくて、のっぺりしてる。アトリさんじゃないな。


「ヤマガラですわ」


 シャッターを切りながら、隣に居るスズキさんが教えてくれる。


「ヤマガラさん……シジュウカラさんのお友達?」

「友達かどうかは、知らんけど……」


 そのヤマガラさんは、岩の端っこに降り立ったあと、ちょんちょん、と歩いて、岩の真ん中へ移動。

 岩の真ん中がへこんだ形になっているみたいで、その中へ入ると……


 ぶるるるるるるるるる


 !?


 何ごと!?


 岩の真ん中でヤマガラさんがバタバタとダンスをするように羽ばたく。

 激しく水しぶきが飛び散った。


「これが、水浴び、ですわ」


 ここからは隠れてて見えないけど、岩の真ん中のくぼみに雨水が溜まっていて、その水たまりで鳥さんが水浴びをするスポット、ってことか。


 ぴたっ。


 しばらく水浴びをしていたヤマガラさんが、動きを止めて、くぼみから顔だけ出してきょろきょろ、と、思ったら、そのまま飛び去った、かと、思ったら。


 ええい、忙しい!


 大量の小鳥さんがわらわらと岩に降りてきた。

 赤白黒。

 アトリさんの集団。

 ヤマガラさんはこのアトリ軍団にびびって飛び退いた、って感じかしらん。


 岩に群がったアトリさんたちは、水たまりでばしゃばしゃ。


 大騒ぎ。


 あはははは。


 シャッター切りまくり。何が何やら?


 鳥の数と水たまりの大きさが合っていない。

 岩の周囲で順番待ちのアトリさんが『早く早く』とせかしてる?

 しばらくの間、入れ替わり立ち代わり。

 そこへ。

 さらに別の軍団が、わらわらと。


 黄白黒は、マヒワさん軍団来たる!


 岩の上は、さらなる騒ぎ。

 降りようとするマヒワさんを威嚇して追い払おうとするアトリさんも。


 わはははは。


 ちらりと周りを見ると、他の鳥撮りさん達も笑みが絶えない。


 やばい、撮り過ぎてメモリの書き込みが追い付いてない。

 時々、シャッターが切れなくなる。

 あわてて連射をオフにして、単射に切り替え。

 メモリの残量もヤバイ事になってる感じ。

 後で写真削除するの大変そう……


 ま、いっか。


 ファインダーを見ながら、ここぞ! ってシーンを待ってシャッター。


 どれくらい、そうしていたか。


 やがて、アトリさん軍団もマヒワさん軍団も飛び去り、静寂。


 ふぅ。


 鳥さん達が去ると、鳥撮りさん達は撮った写真を確認する作業に没頭する。

 写真を見ていたスズキさんが、


「ふふっ」


 可愛い声。


 こんな感じだと、お嬢様じゃなくて、普通の女の子っぽいな。


 わたしも写真をプレビューしてたけど、ついつい、スズキさんを見てしまう。


 自分で撮った写真を見ながら、素敵な笑顔。

 きっと、いい写真が撮れたのね。


 さっき、会話してた時のような澄ました雰囲気が消えて、とっても可愛らしい感じがする。

 元が良いので、なおさら感。


「何?なんか用?」


 じっと見てたら気付かれた。


「なんでもなーい」


 さっき、フリで『友達』ってことにしてもらったけど、本当にお友達になれる、と、良い。


 かな?









挿絵(By みてみん)

※写真:上段がアトリ、下段がヤマガラ

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